Sランクパーティを追放された荷物持ちは、大聖女とイチャラブしながら成り上がる。ヘイト管理の重要性にようやく気付きましたか?~今さら戻ってこいと言われても、もう手遅れです~
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅷ エリック視点
『†栄光の騎士団†』の栄光への道 Ⅷ エリック視点
「くそったれ! 何が封印された伝説の聖剣だ! あんなボロボロの剣なんて無価値だ! ゴミ同然だ!」
マウリの里のクエストから帰ってから数日後、俺はノエルとアリサと三人で、酒場で喋っていた。
「だいたい報酬金が少なすぎる。あんなクエストまともに受けるやつなんていねえぜ。よっぽどのお人好しか、何も考えてないバカかのどっちかだ!」
「まあ、あの聖剣は笑ったよね。だって見るからにボロボロなんだもん」
「あの村の布団、寝心地悪くて最悪だったわよ。アタシは最高級のハーピーの羽毛布団じゃないと寝られないのに」
「いやいや! 俺なんか馬小屋で寝たんだぞ! 馬糞の匂いにまみれてな。あんな屈辱は生まれて初めてだぜ! 思い出してもイライラする!」
俺たちが気分よく喋っていると、アーサー殿下が合流した。なんと今日は英雄アレスもいっしょだった。
「やあ、エリック。今日は話があってね。アレスを連れてきたんだ。彼の話を聞いてもらっていいかな」
アーサー殿下はそう言って、アレスと共に席についた。
「はあ、一体どうしたんですか?」
俺は先日アーサー殿下を危険に晒したことで、英雄アレスの怒りを買い、胸ぐらをつかまれて怒鳴られたあげくに説教までされたので、コイツと喋るのはいい気分ではなかった。
「実は、先日行ったマウリの里のことなんだけど、アレスも少し情報を持ってたんだ」
「私は10年ほど前に、マウリの里の出身者と王都で出会ったことがある。彼女は赤髪の女戦士で右も左もわからないと言った感じで王都をウロウロしていた」
「へえ、そうなんですか。あの村のやつが王都に来ることもあるんだなあ」
「彼女は英雄を探していると言っていた。先代の村長の日記によれば封印されし伝説の聖剣は、英雄の訪れによって引き抜かれると言われていたそうだ」
「ふむふむ、それで英雄のアレスさん、あんたが誘われたわけか」
「いや、10年前のことだ。当時の私はただの騎士団の副長であり、英雄などとは呼ばれていなかった。まだ魔王軍との一次大戦も行われてない時期だったからな」
「そうだったんですね。じゃあ英雄って誰のことなんですか」
「うむ、彼女はその英雄が誰だかわからないが、村のために探して旅をしていると言っていたんだ。結局彼女とはその時に数日間いっしょにいただけで別れてしまって、それからは会っていない。マウリの里の女は大人になる頃に、数年間村を出ると言われているから、今頃は村に戻って暮らしていると思うが」
「ふーん、それで、その話がなんなんですか」
「うむ、つまり彼女が言っていたことがずっと気になっていてな。聖剣を引き抜くのは英雄の訪れによってと言っていたのでな。エリック、実際に剣に触った感じはどうだった」
「いやあ、全然ダメでしたね。まあ俺も一部の冒険者からは勇者だの呼ばれることもありますが、あの聖剣の不思議な力には全く反応できませんでした。ねえ。アーサー殿下?」
「ああ、僕たちの力ではビクともしなかったんだ。アレス」
「あれ、そうか! 今なら英雄に心当たりがあるぞ! アレスさん! あなたですよ!」
「私か? うーむ、人々が私のことを英雄と呼んでくれているのは知っているが……」
「絶対あなたのことですよ! 英雄アレスなんですから。あなたならあの聖剣を抜けるかもしれませんよ!」
俺は、とりあえずアレスとの気まずい関係を修復するために、彼を持ち上げるだけ持ち上げることにした。
その時、他のテーブルの冒険者たちの声が聞こえてきた。
「ラルクさんたちがマウリの里に向かったらしい」
「本当か? あの誰もやりたがらない緊急クエストを受けたのか。さすがだ」
「彼ならやってくれそうよね」
突然聞こえてきた、何やら聞き捨てならないセリフに、俺は振り向いて反応した。
「おい! お前ら! ラルクの野郎がどうしたって? 詳しく聞かせろよ!」
「あ、ああ、エリックさんか。ラルクさんがマウリの里の緊急クエストを受けて、午前中のうちに出発したらしいんだ。なんでもギルド長が直々に頼んだらしいんだが」
「なんだとお! ギルド長が直々に? ふざけやがって! ラルクのことを買いかぶりすぎなんだよ! クソが!」
「なんでも依頼してたSランクパーティが失敗して逃げ帰って来たって話なんだが」
「あああぁぁ? ふざけんな! 逃げたんじゃねえ! 割に合ってないからこっちからキャンセルしたんだよ。なんか文句あるのかてめえ!」
「あわわわ! エリックさんたちのことだったのかい! そんなつもりで言ったんじゃねえんだ。すまねえ」
俺が凄むのを見て、その冒険者は、気まずそうに去って行った。
「クソおおお! ラルクの野郎、調子に乗りやがって!」
俺は、興奮しながら自分のテーブルの席に戻った。そしてみんなに次の目標を告げることにした。
「おい、みんな。もう一度マウリの里に行くぞ! そして、アレスさん! あなたに頼みがあります! 俺たちといっしょに里へ行き、封印された伝説の聖剣を抜いてほしいんです!」
「ふむ、着いていくのはかまわんが。私にその剣が抜けるだろうか」
「大丈夫です! さっきの話を聞いて確信しました! 聖剣を抜く英雄とは、きっとあなたのことですよ! アレスさん!」
「エリックの意見には僕も賛成だ。どうだアレス、いっしょにマウリの里に行ってみないか」
アーサー殿下も俺の意見に賛同してくれた。アレスをその気にさせるには殿下の口から言ってもらうのは心強い。
「わかりました。私の力がお役に立てるのなら、いっしょに行きましょう」
「よし! 決まった。じゃあ明日の朝、早くに出発しましょう。なるべく早いほうがいい」
(くくく、早く行ってラルクたちが、何かする前に俺たちがやってやる! ラルクの野郎に美味しいところを持っていかれてたまるか)
こうして俺たち『†栄光の騎士団†』は、再びマウリの里に向けて出発することにした。
ラルクたちに追いつくために次の日の朝早くに、出発したのだった。
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あとがき
読んでいただきありがとうございました。
あなたのご意見、ご感想をお待ちしております。
英雄アレスが昔出会ったマウリの里の女性とは……
エリックはラルクの邪魔をするためにまたもやマウリの里を目指すようです
続きが気になると思って頂けたら
フォローや★評価をぜひぜひお願いします。
次回、聖剣を抜こうとするラルクが思いついたアイデアとは……
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