大戦士との出会い

第十三話 緊急クエスト マウリの里を救え!

 ロングロング洞窟を攻略してから数日後、僕はシンシアといっしょに冒険者ギルドでクエストボードを眺めていた。


「今日はどんなクエストにしよっか。ここ数日はマッタリ採取クエストばかりだけど」


「別に採取クエストでもいいですよ? わたしはラルクさんといっしょならどこでもついていきますから」


「おーい!」


 その時、ギルド長の声がした。


「え? あっ、ギルド長」


「ラルクさん、どうも。先日のロングロング洞窟のドロップ品の買取金です」


 そう言ってギルド長は、札束を渡してきた。


「えっ、いち、に、さん、し、ご、500万ゴールド!」


「ええ、けっこうな金額になって、ラルクさんのことは商人たちの間でも評判になったよ。ギルドとしても少し寄付を頂いたので、本当にありがたいですぜ」


「いやあ、こんなになるなんてなあ。どうしよ、シンシア。大金持ちだ!」


「すごいです! ラルクさんがあの洞窟のクエストを選んだからですね。さすがラルクさんです!」


「放置されてたダンジョンはやっぱりすごいね。まさに、残り物には福がある。だね」


「ところでラルクさん、実は緊急クエストが出ててな。ちょっと見てくれねえか」


「緊急クエスト?」


 ギルド長は渋い顔でクエストボードを指さした。


『緊急クエスト: マウリの里を救え! 禁忌の洞窟の封印。強者求む 報酬:50000ゴールド』


「この洞窟、聞いたことがあるなあ。数百年前に勇者が魔物を封印した洞窟ですよね」


「ああ、そうだ。その洞窟の封印が今解かれようとしているらしいんだ」


「確か、マウリの里の戦士たちが代々そこを守っているんでは?」


「ああ、そうだ。マウリの里というのは女戦士のみで構成される戦闘民族の村だ」


「女戦士のみ? そうなんですね。女性しかいない村かー」


「ああ、まさにハーレムだぜ。だが普段は男子禁制だ。ただし、今だけは人手不足でな。クエストの受注者なら男でも村に立ち入ることを許しているらしい」


「へえ、今なら男性も歓迎かー、ん?」


 なんだかシンシアがこちらをじっと見ている気がする。


「ねえ、ギルド長。これ難易度で言えば上級クエストな気がするんですが、それにしては報酬が少ないですよね」


「マウリの里も資金がないそうでな。これは元々国の方に直接きた依頼らしい」


「そうなんですねえ。是非助けてあげたいところなんですが、果たして僕ら二人だけのパーティで通用するかどうか」


「いやいや、ダークロードを倒したラルクさんだからこそ頼めるんだ! Sランクパーティですら逃げ帰る始末なんだから、並みの冒険者には手に負えねえ」


「え、Sランクパーティでも無理だったんですか?」


「ああ、あんたも入ってたろ。『†栄光の騎士団†』っていうパーティさ。先日依頼したんだが、翌日には帰ってきたよ。何の収穫も無しでな」


 懐かしい名前を聞いた気がした。あのエリックたちも失敗したクエストのようだ。僕たちにできる事はあるのだろうか。


「ラルクさん、行ってみましょう。ラルクさんならきっと力になれるはずです!」


 シンシアが強く、僕を後押ししてきた。


「そうだね。どっちみち禁忌の洞窟の封印が解かれたら、マウリの里だけじゃなく近隣の村にも被害は影響は及ぶだろう。僕たちに出来ることがもしもあるのなら、試してみるのも悪くない」


「さすが! ラルクさん。頼りになるね! これが村までの地図だ。ギルドからも必要な物資を出すので、どうか今日中に村に向かってほしい」


 こうして、ギルドに準備をしてもらった僕たちは、マウリの里に向けてその日のうちに出発した。




 そして夕方、道中は大変長い道のりだったが、どうにか日が暮れる前には村に着くことができた。


「ここがマウリの里か」


 村に足を踏み入れようと門をくぐった瞬間、目の前に女の子が飛び出してきた。


「止まりなさい! この里に勝手に立ち入ることはアタシが許しません!」


 そう言って、女の子は剣を向けてくる。僕は両手を上げて答えた。


「ストップストップ! 僕たちはギルドからの依頼を受けて来たんです」


 その女の子は、きちんと説明をした僕を尚も睨んでくる。その剣の構えは決して素人ではない。彼女は恐らく村の戦士だろう。


「ほわわわわ~! あなたは、オ、オトコですねっ! ここは男子禁制の花園です! オトコが立ち入ることはアタシが許しませ~ん!」


 たどたどしくそう言った彼女の背は僕よりも小さい。まだ村の子供だろうか。薄いビキニ型の鎧を身に着けていて、肌の露出度がハンパなかった。なんだか目のやり場に困ってしまう。


「あの! あなたは一体誰なんですか! わたしたちはちゃんと依頼を受けて、王都からやってきた冒険者です」


 シンシアが急に僕の前に出てきて、その少女の前に立ちはだかった。なんだか僕の視線を遮る形になっている。


(どうしたんだろう、シンシア。ムキになって、なんだかいつもの彼女らしくないな)


「アタシはこの村の守り人ですう! 男は決して村に近づけるなと村長に言われているのですう!」


「そうですか。でもわたしは女です。その武器を下ろしてください。わたしたちと冷静に話し合いをしましょう」


 シンシアは一歩も引くことなく、その少女を見つめている。


「ううぅ、わ、わかりました。では名前を名乗ってください!」


「わたしはシンシアです。あなたは?」


「ア、アタシは、マウリの里の守り人、カミーラですう!」


 カミーラと名乗った少女は、こちらに向けていた剣をようやく下ろしてくれた。






──────────────────────


あとがき


読んでいただきありがとうございました。

あなたのご意見、ご感想をお待ちしております。


女性だらけの村に行ってみたい!


カミーラは何者!


などなど、続きが気になると思って頂けたら

フォローや★評価をぜひぜひお願いします。


次回、マウリの里に泊まったラルクは、なんと初体験……

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