流れ星に君を想う

夢乃間

過去の記憶

出会いは最悪

幼少期の事なんてもうほとんど憶えてはいない。だけど、冬美との記憶だけは20代になった今でも明確に憶えている。

初めて出会った時、あの時はお世辞にも良い出会いとは言えない出会い方だった。


「ううぅぅーーー!」


「何してるの?」


「うぎゃー!?」


冬美はセミを取ろうと目一杯手と足を延ばしながら、小さな体で奮闘していた。そんな所へ私が声を掛けたばかりに、冬美は驚いて顔を木にぶつけてしまい、その衝撃で飛び立ったセミが私の顔にくっついてきた。

その後はお互い泣きじゃくって、近くにいたおばさんが私達を泣き止ませようとアイスを買ってくれたね。

けど、泣き止んだのはいいけど、今度は私だけ当たり棒が当たって、冬美は羨ましくてまた泣いちゃったな。

それから小学校でまた再会して、私は仲良くしようと声を掛けたけど、冬美は未だにアイスの件を根に持っていて、しばらく私の事を幸せ泥棒って言ってたのを憶えている。

だけど、何度も話しかけていく内に冬美も話してくれるようになり、気付けばずっと二人で遊ぶ日々を送っていた。

ある時、冬美が私を家に招いてくれて、冬美の家に行くと、若い大人の女性が出迎えてくれた。


「あなたが夏輝ちゃんね!どうぞ、どうぞ!」


「来て!夏輝ちゃん!」


冬美が私の手を引き、階段を上って冬美の部屋に連れていく。冬美の部屋はいかにも女の子らしい物で埋め尽くされており、机の上には冬美と冬美の両親が写っている写真立てが置いてある。


「これお父さん?」


「うん。」


「お父さん、今日はお仕事?」


そう言うと、冬美は俯きながら震える声で呟いた。


「パパは・・・死んじゃったの。」


「死んじゃった?死んじゃったって?」


死。この概念について、この頃の私はあまりよく理解できていなかった。


「もう二度と会えない事なんだよ。」


「お父さんと会えなくなるなんて・・・嫌だね。」


「うん・・・でも、今は夏輝ちゃんがいるから平気だよ!」


そう言う冬美の精一杯の作り笑いは、今でも強く記憶に残っている。

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