第262話 負けられぬ戦い。③

「――と言う訳で、キッチリと売られた喧嘩を買って数倍返しにしてやろうと思っていますの。是非とも応援して頂きたいんですけれど、皆さん応援して頂けますわよね?」



帰宅後、ドレス姿のまま何時もの面々とわたくしの弟子たちが集まっている中、事情を話し作るアイテムに関しても伝えると、ロキシーお姉ちゃんはニヤニヤと嬉しそうにしていて、マリシアは呆れた様子で、ファビーはアワアワしていて、男性組はポカーンとした表情で私を見ていましたわ。



「え? あ……え?」

「作るアイテムが、禿の治療薬に破損部位修復ポーションにエリクサーにラストエリクサー……」

「……失礼、作る為に必要なアイテムは集まっているでしょうか?」

「ええフォル、絶対に必要となるアイテムは揃ってますわ、幸いなことに」

「そうなんですね。ボクに出来ることがありましたら教えてください。今後作る機会がもしあれば作ってみたいですし、作るところを見せて頂いても宜しいでしょうか?」

「ええ、構いませんわ。といっても、破損部位修復ポーションに関しては、薬師スキルですけれどね」

「破損部位修復ポーションは薬師スキルでしたか。ボクでは難しそうです」

「他のアイテムはロストテクノロジーで作れますわ! スキル上げ頑張ってね!」

「はい!!」



意気揚々と語っていると、ノイルさんが首を横に振りつつ頭を抱えましたわ。

一体どうしたのかしら?



「カイル、俺の耳が異次元になってるのか、言っている言葉が理解出来なんだ」

「ノイル、考えるんじゃなくて、こういうのは感じるんだよ」

「どや顔で言うなよ……」

「いや、カイルは正しい。考えても耳が異次元になるのは仕方ない事だ。こういう時は狩りをするときのように感じる方向へ流れた方が体に優しい」

「レイン……お前もか」

「ナインさんもそうでしょう?」

「うむ、実にその通りだ」

「それでリディア姉さん、それらは売ると幾らになりますか?」

「「「「ライト! 国宝だからな!? 国宝級があるからな!?」」」」



ライトさん、スッカリ染まってますわね。

若い子ほど染まりやすいって言うけれど本当ね! 英才教育の賜物ですわ!!



「禿の薬は少しお高めに設定しようと思ってますの。ダンノージュ侯爵家が窓口になれば儲けはガッポリ入りますわよね? 金の雨が降るくらいにはお金が入るんじゃないかしら?」

「素晴らしいですね!!!」

「破損部位修復ポーションも付加価値は付けますわよ? ただ、魔物討伐隊や王国騎士団には幾つか献上しようと思ってますわ。国とのより良い関係を築くには献上品って素晴らしい威力がありますわよね」

「そうですね、献上品は幾つか必要だと思います」

「エリクサーは高値で売れるとしても、ラストエリクサーに関しては国宝扱いになると思うから売りに出すことは難しいわ」

「ラストエリクサーに使うレアなアイテムって何ですか?」

「ダンジョンコアですわ」

「「「「「………は?」」」」」



あら嫌だ、皆さん固まっていますわ。

カイルが初めて箱庭に来て採掘場の整理をしていた時に見つけたというダンジョンコアはたったの一つ。

それを今こそ使う時ですわ!!



「ダンジョンコア、ですわ。クリスタルゴーレムシリーズはバンバンでますけれど、ダンジョンコアはまだ一個しかありませんもの。大事に使いますわ」

「あ……え?」

「確かにダンジョンコアが必要なアイテムであるのなら、国宝級になるのも頷ける」

「ですわよね。シッカリ綺麗に作らないといけませんわ。一つしかありませんから失敗も出来ませんし」

「ウッカリ、ダンジョン生れませんか!?」

「それはありませんわ。生まれるならもう生まれていますわよ」

「ですよね……」

「機能停止しているのは確認済みですわ。きっとこの時の為にありましたのね!」

「この時の為って」

「数倍返しする為のアイテムですわ!!」

「あ――うん。リディアは本当にノジュ姫殿下が嫌いなんだな」

「ええ! 笑顔で修道院に行く姿をお見送りする為にも作らねばなりませんわね!」

「はははははは! リディアちゃんがそこまで毛嫌いするって、よっぽどだよ?」

「そうですね、リディア様がそこまで毛嫌いするなんて」

「余程の愚か者だったという事でしょう? だったら手加減なんて必要ありませんわ」

「その通りですわ! 女性陣の方が分かってらっしゃいますわね!」



そう言って女性陣とハイタッチしていくと、最早男性陣はお茶を飲みながら無言になりましたわ、ただ一人――ライトさんを除いては。



「兄さん、ダンジョンコアとはとてもレアと言う事しか知らないんですが、凄く取ってくるのが大変なんですか?」

「ライト、ダンジョンコアとは、ダンジョンが存在する以上地下の最下層にあるダンジョンの心臓のような物だ。そのコアが無くなれば、ダンジョンは消滅する」

「つまり、ダンジョンが出来る前のコアがあるか、どこかのダンジョンのコアが紛れ込んできているのか定かではないという事だ」

「そうなんですね。つまり、とってもレアだってことですね?」

「俺でもまだ見たことが無い」

「ナインさんでもですか?」

「俺達もないな」

「同じく」

「そんなコアを使って国宝級のアイテムを作るって言うんだから、もう止めようがない」

「後は――神のみぞ知る世界って奴だよ」

「リディア姉さんなら、神の祝福で作れそうです!」

「「「「「確かに」」」」」



箱庭の神様パワーをお借りして、是非とも作らねばなりませんわ!!

嗚呼、明日から楽しみ!

待っていて下さいませ、ノジュ姫殿下。

貴女を必ずや、修道院へ送って差し上げましてよ!!!




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「負けられぬ戦い」スタートしました。

胸糞な話も途中出てきますので、その時は注意を書かせてもらいます。

少しだけ長くなるかもしれませんがお付き合い願えたら幸いです。


いつも☆や♡など有難うございます!

とても励みになっております!

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