第234話 『キッズハウス・サルビア』オープンとマリシアの望む形の温泉体験。
クウカの事は残念な出来事だったと言う事で数日が過ぎ、ついに王都に『キッズハウス・サルビア』がオープンを迎えましたわ。
お店の中には無論、フラフープやトランポリンの展示もしていて、注目はされているようだと池鏡から様子を伺いましたの。
元女騎士さん達とマリシアの運動に関する修行ももう少しで完成段階に入りましたし、あと一週間もすれば完成に至るでしょう。
更に、あれからと言うもの、雇った20人の主婦の方々はフェイシャルエステを一定以上マスターすることが出来た為、今もまだ完成形に近づくために必死に腕を磨いていらっしゃいますわ。
それは兎も角、店の出だしは上々の様で、宝石箱や化粧箱、ドレスも飛ぶように売れていて、高めの値段設定だったにも関わらずその勢いは止まるところを知りませんわ。
特に皆さんの注目は――壁に貼られたポスター。
【近日オープン! ダイエット・サルビア! あなたの身体を若返らせ、サポートします!】
と書かれたポスターの前には、フラフープにトランポリンと言う展示もしていて、奥様方は集まって見ていらっしゃいますわ。
更に、フラフープやトランポリンの前に置かれた二枚折りの宣伝用の広告には、体験型の全身フィットネスの教室案内に、それらの後の温泉でのデトックス。更に温泉が終わった後のフェイシャルエステにラストのネイルコースと言う宣伝を書いた広告は奪い合うように取られて行き、途中途中で店員さんが広告の補充をしていらっしゃいますわ。
今回、ダイエット・サルビアでは、教室に入って運動をシッカリして頂く契約をして貰い、運動を行ったうえで、温泉までのコースはお安く。トータルケアを求めている方にはお高くお値段設定をしていて、貴族女性なら間違いなくトータルケアを求めるでしょうし、それが年頃の娘であるのなら、温泉までのコースを選ぶかもしれない。
二つの値段設定でおいてあるのには、貴族の矜持がどちらに向くかによっても変わるのですから、用意はしておいて損はありせんわ。
『いつオープン為さるのかしら』
『近日オープンと書いてありますわ。これらの器具を使った運動を取り入れたダイエットのようですわね……』
『本当に痩せるのかしら? いえ、わたくしは常に努力を怠りませんが、やはりプロに見て貰うというのも一つの手だと思っていますわよ?』
なんて声がチラホラ聞こえますわ。
虚勢を張らないと生活が出来ないのが貴族なのかしら?
『まぁ! 元女騎士と元Sランク冒険者が監修のようですわ。徹底したダイエットになりそうね』
『ついていけますかしら?』
『でも、頑張った後の温泉と言うものとフェイシャルエステにネイルは魅力的ですわ』
『しかも温泉に入ってデトックスって書いてありましてよ?』
『美しくなると言う事よね……』
『身体も美しく、そして全身も美しくと言うのであれば、このお値段はお安いのではなくて?』
『お手頃価格ですわ。月謝がたったの金貨5枚だなんて良心的だわ』
『それは温泉だけのコースでしてよ? トータルのものですと金貨10枚と書いてありますわ』
『金貨10枚で美しくなるのでしたらお安いのでは?』
『効き目のないあやしげなツボを買うよりはお安いですし、あのダンノージュ侯爵家が行うのでしょう? 素晴らしい効果がでるのではなくて?』
『既に一人トータルで美しくなった方もいらっしゃるようですわ。その方とは会う事が可能なんですって』
『まぁ! どれ程お美しいのかあってみたいものですわね!』
是非是非会ってみて下さいませ!
マリシアは、わたくしのゴッドハンドによってお肌はピカピカツヤツヤの美しさを保ってましてよ!
スタイルも無駄な肉は落とし、あるべき場所へ肉は付き、それはもう、ボンキュンボンですわ!!
このわたくしの教えた運動のお陰で、ロキシーお姉ちゃんは更に色気がアップしてライトさんは気が気ではありませんし、フェイシャルエステ組から徹底的に磨かれたわたくしとロキシーお姉ちゃんの美しさは箱庭のお爺様たちからも好評でしてよ!
今では実験台というか、練習台になりたい女性はとても多いんですの!
ふふふっ! きっとお会いしたら皆さん驚かれますわね!
そして、何と言っても目玉はコレでしてよ!
『産後太りを元通りに……出来るのかしら』
『もし元に戻るのが早いというのであれば……もう一人くらい産みたいですわ』
『産後太りを元に戻せるほどの運動とありますけれど、運動自体はゆっくりしたものみたいですわね』
『わたくしも三人産んでからは少し体型が……』
『わたくしもですわ』
『でも、産後太りを改善して綺麗になるのでしたら、試してみる価値はありますわよね?』
『キッズハウス・サルビア』はお子様の物をお求めになる方が多い店。
無論、産後太りを気にしている方だって多い筈ですもんね。
しっかりそこはケアしましてよ!
『随時追加情報を発表とありますから、何度か通う必要がありますわね』
『情報共有しないと、見逃してしまいますわ』
『早くオープンして欲しい所ですわね』
そんな嬉しい声が飛び交う中、商品も飛ぶように売れましたし、わたくしとしては大満足の結果に終わった訳ですけれど、隣で様子を見ていたマリシアは、何やら考え事をしているようですわ。
「どうかしましたの? マリシア」
「いえ……これだけの貴族の前に出ると思うと胃が……」
「まぁ、薬師の所で胃薬を煎じて貰う?」
「そうします……。あと、私も焦りはしたくはないですが、温泉について考えていることもあって」
「どのような事をですの?」
「実は、運動した後って汗が中々引かないじゃないですか。なので、一つは汗の引くような温泉にしたいんですが……その様な温泉ってありますかしら?」
「ありますわよ?」
「本当ですか? 一度そう言う温泉を体験してみたいと思いますけど出来るでしょうか?そしたら分かりやすいので」
「でしたら、一度使ってみます? 用意ならすぐできますし、効果でしたら今頃クタクタの女騎士さんたちにもきけるのではなくて?」
「そうですね、聞いてきます」
「では、わたくしは女湯を一つその様な効果の物に変えてきますわ。想像でなんとかなりますでしょうし」
「お願いします」
こうして、現在誰も使っていない女湯のお湯を、湯上りサッパリ系のお湯に祈りを込めて変え終わる頃、女騎士さんたちとマリシア、ロキシーお姉ちゃんがやってきましたわ。
そこで、今回の温泉は思わず長湯したくなりますけれど、気を付けてくださいませと告げて様子を伺ったんですけれど――。
「もう直ぐ温泉に入って30分……そろそろ声を掛けますかしら」
そう思っていると、それから更に30分後――湯上りサッパリした女騎士さん達とロキシーお姉ちゃん、更にマリシアが温泉から上がってきましたわ。
そして――。
「リディア様! 温泉のお湯、もしかして少しだけ温めにして下さいました?」
「いいえ? 何時もの温度ですわ。さぁさぁ、水を飲んでくださいませ! 何時もより長湯してらっしゃいましたわよ!」
「ついつい気持ちよくてね……湯上りもサッパリしていて気持ちが良いし、何だいあのお湯」
「効能としては、同じ疲労回復効果の高い温泉ですわ。ただ少しだけ、ハッカやミントの香りで肺での呼吸がしやすくして、お湯から身体が出るとスッとしたでしょう? それもハッカやミントの効果を出してますの」
「素晴らしいお湯です!」
「最高です!」
「また入りたいです!!!!」
「わたくしも気に入りましたわ!! わたくしの温泉ではこれを主軸にしたいと思いますの! 女性は長湯ですから、呼吸がしやすいのは大事ですもの!」
「では、お湯の成分については決まりましたわね」
「はい!! 後は内装ですわね……。個室を多くしてフェイシャルエステ専用の道具を置けるようにして、更にその個室で最後はネイルエステが出来るようにしないといけませんから」
「そうね、後は香りについてはわたくしの方から用意しますけれど、一つ一つが広めのお部屋が欲しいですわね」
「部屋数的には50部屋位でしょうか」
「そうね、最低でも50あればいいと思うわ。後は御付きの方々が付きそう為の続きの部屋が一つ、一人に付き二部屋ずつと考えていいですわね」
「化粧台も置きたいですし、入ると空間的に個室が広くなるようなお部屋って作れるのかしら。あまり大きくは作れそうになくて」
「では、箱庭の入り口のように個室の入り口を入ると別空間のように広がった部屋と言うのはどうかしら?」
「それは素敵です!! アリだとおもいます!!」
「そうなると外観はファビーの温泉とは違って、洋風が良いわね。こちらの本を参考にしてみて下さる?」
「はい!」
そう言うと、洋館特集の一冊を手渡し、わたくしは少しだけ満足しましたわ。
クウカの事があって少しだけ気持ちが沈んでいましたけれど、マリシアの元気な姿を見ると安心するというか、ホッとすると言うか。
「三つくらいに候補を絞れたら、後は好みだと思いますわ。頑張ってね」
「はい!」
「それと、養女の件はこちらで進めても宜しいかしら?」
「お願いします!」
こうしてマリシアが洋館を選んでいる間に、わたくしとカイルとでマリシアのご実家にお手紙を出し、養女にしたいとの申し出をしたのですけれど――。
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本日二回目の更新です。
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