第217話 お泊り保育④
――カイルside――
今回、ノイルとナインに頼んだ話は――冒険者になったばかりの頃の冒険譚。
ノイルは見事子供達をあっと言わせて笑いの渦に巻き込んでいく。
釣った魚が実は魔物で食べようとしたら襲われた話だったが、ノイルらしい失敗談でもあって俺も笑ったし、俺も経験した事だ。
「と言う事もあったのさ! 冒険者初心者あるあるだ、もしこの中に将来冒険者になりたい奴が居たら、俺の話を思い出せよ!」
「忘れられないよー!」
「ドジなノイルだなー!」
「言ったなガキ共―! だが、どんな失敗も前に進める失敗ならそれでよし! 何事も後ろ向きになるなよ!」
そう言って締めくくったノイルに俺も拍手を送った。
次の冒険譚は子供達に憧れを抱かせているナインの冒険譚だが、ナインの冒険譚はやはり流石というか……ハラハラドキドキさせるものだった。
チームプレイで何とか命からがら助かった話には、男の子もお年寄り達も大興奮だ。
「大事なのは良きチームに恵まれる事だ。君たちの中に冒険者になりたい物が居るとしたら、良きチームに入り励みたまえ」
「「「「「はい!!」」」」
「コラ――! 俺の時と態度が違うぞー!!」
「「「だってノイルだもーん!!」」」
「ノイルお兄ちゃんは癒し枠だから仕方ないわよ!」
「でも私ノイルお兄ちゃん大好きよ!」
「そっか? そっか??」
「お世話したくなるよね」
「したくなっちゃうよね~!」
どうやらノイル、女の子には好印象……と言うかモテていた。
流石女上手と言うか、色々な女性と浮名を流したと言うべきか……結局は純粋野郎なんだが、うん、子供にモテて良かったなノイル!
「さぁ、冒険譚はこれでおしまい! 子供達はそろそろ寝る時間よ~!」
「テントに入って寝る時間だぞ。冒険者になったつもりで静かに寝るように!」
そうリディアと俺が告げると、子供達は走って自分のテントに戻り、あっちこっちから寝袋に入る音が聞こえてくる。
「夜中トイレに行きたくなったら、ノイルさんが連れてってくれるからね~」
「おう、怖くてトイレいけなくても俺が連れてってやるよ。シッカリと寝ろよチビ共!」
「一人でトイレ位いけるやい!」
「じゃあ男子は一人で行ってこい! これも冒険だ、漏らすなよ! 女子は連れてってやるよ」
「ノイルが付いて来てくれるなら安心だね!」
「俺は中央の大きなテントにいるから、何かあったらくるようになー!」
そう言ってノイルとナインは中央の大型テントの中にある空気ベッドの上で仮眠するようだ。
子供達のトイレの世話も前もって二人がしてくれると言ってくれた為助かっている。
焚火はそのままにしておくらしく、暗い中で寝れない子供には焚火の明かりは寝やすいだろう。
かくいう俺も、真っ暗じゃないと寝れないタイプだったが、リディアは反対に真っ暗だと寝られないタイプらしく、今ではすっかり、小さな明りを付けて眠っている。
最初の頃は熟睡できなかったが、今では身体も慣れて熟睡できるようになった。
こうして、冒険譚を聞いたお年寄りも子供達も部屋へと戻っていくのを見てから俺とリディアも部屋に戻り就寝。
朝は早いため早々に眠りにつき、翌朝6時――既に遊んでいる子供達の声が響いていた。
リディアは眠っていた為、俺は一足先に起きて向かうと、ナインとノイルが子供達と一緒に身体を使った組み手を教えていたらしい。
女の子達は揃って鏡を使って髪を結っている。
「早朝から凄いな」
「まあな、でも朝6時前には厨房で料理を作り始めてたから、腹空かせたガキ共が起きたんだよ」
「なるほど、子供達もおはよう!」
「「「「「おはようございまーす!」」」」」
「冒険者体験は楽しかったか?」
「「「「たのしかったー!!」」」」
「終わったらまた普通の託児所での一日になるが、家に帰ったらパパやママに色々お話してあげるといいぞ!」
「「「「はーい!!」」」」
「夜中に途中で『パパー』『ママー』って泣きべそかいた奴は、シッカリ甘えて来いよ!」
「ノイルは一言多いんだよおおおお!!」
「おおお……俺だって別にパパとママが居ないと寝れないってことはなんだからな!」
どうやら、夜中にパパとママが居ない事で泣いた一定数の子供がいるらしい。
それでも笑顔で「そうかそうか!」と対応するノイルと、笑顔で微笑むナインは凄い。
そんな話をしていると、ロニエルが俺の許へ駆けつけてきた。
「僕は今日から箱庭の子供になると聞いています。リディア師匠の弟子です! どう過ごせばいいですか?」
「そうか、ロニエルはうちの子になったんだったな」
「はい!」
「託児所に行っても良いし、リディアの傍で色々話を聞いても良いだろうし、そうだな、今日は自由時間にしたらどうだ?」
「じゃあ僕、リディア師匠に色々聞きたいです!」
「そうだな……王都にいったら箱庭師の弟子が増えるらしいんだ。その時に説明を一緒に受けたらどうだ?」
「増えるんですか! 楽しみです!」
「それまでは色々箱庭の説明を聞いて、ロック達にお世話になりますって挨拶したりしてこい。そしたら色々教えてくれるだろうからな」
「はい!!」
こうしてロニエルはロック達のもとで生活することが決まっていた為、後はロック達が色々と説明してくれるだろう。
なんだかんだと面倒見のいい子供達だからな。
その後朝食を食べてからお泊り保育は終了したが、子供達にとっては初めて親元から離れての一泊だったが、かなり堪能できたようで、職員が子供達を迎えに来ると名残惜しそうに託児所へと帰っていった。
その後ロックとロニエルは対面出来たし、どうやら後でロニエルを連れて家に向かうらしい。此処での生活の事も説明してくれるそうなので安心だ。
子供達が去ってから後始末やテントの片づけを終わらせると、元の箱庭に戻ったが――。
「ぼくたちもテントで寝てね、楽しかったよ!」
「凄い新鮮だった!」
「強くなった気がする!」
と、一緒に参加していた箱庭の子供達にも概ね好評だったようで安心だ。
そして後に、このお泊り保育は三カ月に一回のイベントとして定着し、子供達の独立心を高めるイベントに変わっていくのは――もう少し先の事。
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お泊り保育と言うと、子供の自立心を促すイベントだったような。
息子の通う園でも最後の学年になるとありますが
うちの息子は一人で泊まれるか不安です。
(ヌイグルミや大好きなお供がいないと寝れない子)
皆さんもお泊り保育の記憶はあるでしょうか。
何時も♡や★など有難うございます!
とても励みになっております。
暫く執筆が出来ない日々が続いたので予備が少ないですが
頑張ります(`・ω・´)ゞ
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