第186話 お泊り保育用アイテム作りと、温泉レベルアップと新しい商売の匂い。
小型テントを20個ほど作り、寝袋も同じく20個、それにランタンを20個に、一人用の取っ手の付いた火起こし器を作り小型の炭を使うキャンプストーブと火消しのツボまで作ると、隣で見ていたフォルは一つ一つの道具を確認しながら、「これは凄い……」と口にしてますわ。
ファビーも「この道具は何に使われるんでしょう」と首を傾げていましたけれど、次に大型テント……と言っても、災害用の大型テントしか我が家には無かったので、それを参考に大型テントを作り、空気ベッドを作って、空気を入れる小型の風魔石を入れて使う器具も作り、大型の机に長椅子と作っていくと、今度は元スラムの子供達も集まって見始めましたわ。
「リディア姉、コレなに?」
「初めて見るー」
「ふふふ、こちらの小さい物と大きいのはテントですわ」
「テント? テントってこんな風になってるの?」
「いいえ? これはロストテクノロジーで作ったテントですから、一般的なテントではありませんわね。でも家の代わりと言う感じかしら? 空気を入れたベッドに乗ってみたい人いらっしゃる?」
「乗りたい!」
「あたしも!」
「わ……私も乗りたいです……」
「無論ボクも乗りたいです、ロストテクノロジーで作られたのなら是非に」
「ではベッドに空気を入れますから少々待ってちょうだいね」
そう言うと、空気ベッドの空気穴とボンベをカチッと音がするまで入れ込み、後は空気を入れる道具をワンタッチ。音は凄いですけれどベッドは膨らんでいき、子供達は声を上げて驚いてますわ。
程よくパンパンになった所でスイッチを消し、空気入れを外すとベッドから空気が抜けない様にシッカリと穴を閉め完成ですわ!
「さ、子供なら5人くらい乗っても大丈夫よ」
「「「「わーい!!」」」」
その言葉に子供達が空気ベッドに乗り、一人は跳ね落ちたりしつつも再度挑戦してましたわ。
「凄い、ベッドだ!」
「スラムにもこんなのがあったら住みやすかったのにね!」
「これ、カイル兄が言ってた託児所の子供達が使うんだろ? 俺達も使いたい!」
「俺達もキャンプしたい!」
「わたしもー!」
「そうね、子供達も偶には夜空の下で眠ってみたいわよね。ロックからの許可が出た子なら大丈夫よ。でも20個しかないからね?」
「ロック兄ちゃんに聞いて来ようぜ!」
「うんうん!」
「あ、ロックは今居残り授業中だから後でよ!」
「「「「はーい!」」」」
そう、ロックをはじめとする勉強熱心な子たちは、居残り授業をしながら勉強に励んでいるわ。
毎回参加するのはロックと薬師のスキルを持った姉妹。それに裁縫師の子等に絵師のマルモちゃん。
それぞれが、自分たちの為に勉強する姿は見ていて気持ちが良いもので、先生たちも気合が入っている様子ですわ。
前に「とても教え甲斐のある子供達ですよ」と、笑顔で言っていましたから、事実なんでしょう。
また、ロックと薬師の姉妹は先生に言葉使いも習ってるらしく、礼儀作法も少しずつ覚えて来ているのだとか。
ちなみに、裁縫師たちの子は「お姉様から教わりたい事が多いので!」と言っていたので、言動がきっと美女三人のようになるのだろうなと思っていますわ。
「さてと、次に、」
「大変じゃあああああああ!!!」
「!?」
次の作業に移ろうとしたその時、温泉の方からそんな雄叫びが聞こえ、わたくし達が顔を見合わせて走っていくと、温泉の前でタオルで腰巻状態のお爺様たちがフルフル震えていましたわ。
まさか誰かお亡くなりに!?
そう思いドアを開けて中を見ると――。
「まぁ!! 温泉が!」
「そうなんじゃ! 可笑しいんじゃ! 下からボコボコ泡がでてきておるんじゃ!」
「泡ぶろですわ!!」
「あわぶろ?」
「ええ、血行促進効果の高い、素敵な御風呂ですわよ! 泡ぶろは此処だけかしら?」
「それがな、温泉が増えた上に一つずつ違うんじゃよ」
「増えた……また増えましたの?」
「みて下され」
その一言に外に出ると、確かに3つの滝が増えて小屋も増えてますわ。
取り敢えず、一つずつ確認しましょう。
既存の温泉はと言うと――、2つはいつも通りの温泉。
泡風呂も2つに増え、もう一つは香りの良い温泉……湯を触ってみると、汗をスッと引かせるような感覚がしましたわ。
新たに出来た温泉に向かうと、湯船がそこまで深くない、子供用の大きな温泉のようですわ。
更に増えたもう一つを開けると、寝ながら入れるような深さの少し温めの温泉。
最後の温泉は、中がサウナでしたわ。滝は水になっていて、水風呂の代わりかしら?
「どうじゃ? 何か分かったか?」
「ええ、泡風呂が二つ、何時もの温泉が二つ、一つは入ると汗がスッと引くような温泉になっていますわ。更に追加になっているのはサウナと呼ばれる汗を流す為の場所で、熱くなったら扉を出て滝が程よい水ですのでそこで身体を冷やしてと言う感じかしら。後は、子供用の温泉と、寝ながら入れる広い温泉が追加になっていましたわ」
「ほおおおお」
「寝ながら入れる温泉か……」
「わしゃ~寝ながら入る温泉にいくかのう」
「いや、ワシは考えたんじゃ」
「何をじゃ」
「まず、サウナで汗を流してじゃな? 滝で汗を流してから寝ながら入る温泉に入るんじゃ。絶対気持ちがええ!」
「確かに気持ちがよさそうじゃのう」
「じゃが、そうなると温泉に近くに休憩所が欲しくなるのう……飲み物も持ってきて入りたいからのう」
「そじゃ、水分補給は大事じゃ」
そんな事を話し合うお爺様の後ろにキラキラ輝く箱庭の神様が飛んでくると、まるで光の粉をかける様にして出来上がったのは、素敵な休憩所でしたわ!
お爺様たち会話に夢中で気付いていませんけれど、箱庭の神様は嬉しそうに何度かヒラヒラと私たちに挨拶をすると池鏡に消えていきましたの。
「箱庭の神様きてたね」
「お爺ちゃんたち、後ろ、後ろ」
「箱庭の神様がなんじゃって?」
「「ほああああああああああ!!!」」
と、まぁ驚かれていましたけれど、なるほど、あのようにして箱庭の神様があちらこちらに温泉を作ったりキッチンを作ったりしてましたのね。
キラキラと輝く姿ですから太陽の光で見えなかっただけなのかしら?
それとも、姿が見える程に幸福度が上がったのかしら?
「うん! 休憩所には水分補給が出来るものが必要ですわよね!」
「リディア姉、考えるのを放棄しないで!」
「箱庭の神様、私たちの事を見守ってくれてるのね! 嬉しい!」
「そうですわね。取り敢えずウォーターサーバーを作りますから、お爺様たち使い方を覚えて行ってくださいませ」
そう言うと、前世で良くかけたウォーターサーバーを作ると、水の魔石をセットして、何時でも常温の水か、冷たい水かを飲めるように二つほど設置し、紙コップとゴミ箱をセットすると、お爺様たちはボタンを押したら水が出てくるという有難さに驚いてましたわ。
「温泉に長く入るのは良いですけれど、水分補給は大事ですわ! 必ずサウナは時間は10分入るだけにして下さいませ。その後水分補給を忘れずに! 徹底させてくださいませね!」
「「「おう!」」」
「サウナに時計も設置して起きますから」
「おう!」
「そしたらサウナからじゃな」
「タオルはこのままでええじゃろ」
と、呑気に話していらっしゃいましたが、サウナに耐熱付与した時計を設置すると、皆さん続々と入って行かれましたわ。
ああ、また温泉が賑やかになりますわね……。
サウナは男女で時間を分けることにしましょう。
女性が使っている時は、男性は温泉に近寄らない様にと言う事で、今日の夜にでも説明しましょう。
「でもサウナ……ダイエットに持って来いですわね」
「だいえっと?」
「これ、商売になりますわね」
「私の箱庭でも、広い温泉が出来たら最高ですね」
「ふふふ、ファビーは温泉大好きですものね」
――温泉ダイエット。
リラックスも出来てダイエットも出来て美肌になって疲れも取れる。
でも、箱庭の神様を外に連れ出すわけにも行きませんし……難しいですわね。
「本当に……いっそ、外の方々が来れる温泉施設でも箱庭に出来ればいいんですけれど」
――この一言が次の日、別方向で実現することになるとは、まだこの時の私は知る由もありませんでしたわ。
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本日二回目の更新です。
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