第163話 布製造所に足ふみミシン導入と、新たな雇用。
――カイルside――
追加分の【ほっかりシリーズ】が、ダンノージュ侯爵領で500セット。王太子領で500セット出来たと言う報告を朝受けていた為、それらを受け取りに行くと皆死相が出そうなほど忙しかったのが良く解る。
サーシャとノマージュはやりきった感が凄かったが、ノマージュの方をほっかり系、サーシャの方は今後増えた孤児院や孤児たち、そして託児所の為のガーゼシリーズを暫く担当するそうだ。
更に、ガーゼで子供服も大量に作る事、そしてほっかり布を貰い、子供服を大量に作る事にもなっているそうで、スキルが高くなった一部の女性達が必死に作っている。
一つ一つを手縫いで縫うのはそろそろ限界に近い。
この辺りをリディアに相談するべく箱庭に戻った。
その足で次はダンノージュ侯爵領のゴーンの元へ向かい、託児所ができる事を伝えると、まずは王太子領からなのだが、ゴーンの娘は道具店サルビアが開くと同時に連れていく事を約束した事と、店に出す料理については近いうちに人を連れてやってくる事を伝えた。
「と言う事で、手縫いに変わる物ってないのか?」
「ありますけれど、導入するとしたら工場を一旦作り直さねばなりませんわね」
「そうなのか? 一日で出来るならお願いしたいが」
「一日もあれば終わりますわ。使い方はノマージュさんとサーシャさんに聞かねば分かりませんが、既に裁縫師小屋には導入してますの」
仕事が早いぞリディア。
「なので、お二人がそれでOKを出せば、一日休みを追加で入れて、工場を作り直しますわ。足ふみミシンと言うものなんですけれど、慣れるまでは大変かもしれませんので、随時増やしていく方向でしたら今すぐにでも」
「じゃあ、夜一緒に行こう」
「ええ」
「リディア姉さん、ポスターとしおりを作ってきました」
「有難うございますわ。ではカイル、まずは王太子領の貧困層や庶民が住むエリアにポスターを貼りに行きましょう」
「リディアちゃん、働き過ぎだよ。リディアちゃんは足ふみミシンを作ってからアイテムボックスに入れ込んで置くのと、子供達と一緒に今日どんな風に過ごしたかとか聞きながら待ってておくれ。そしてカイルは悪いけど今から商業ギルドにひとっ走りして、貧困層が住むエリアと平民層が住むエリアの小さな家で良いから購入。使うのはドアだけだからね」
「分かった。今すぐ行ってくる。ついでに買い終わったらポスターも貼ってくるから、託児所オープン日は何時からだ?」
「明後日ですわ」
「分かった。直ぐに手配してくる。入り口は多い方が良いだろう?」
「ええ、貧困層に2か所、平民層に3か所お願いしますわ」
「了解だ」
そう言うと俺はまた走って王太子領の商業ギルドに向かい、貧困層が住むエリアの家を2軒、平民層が住むエリアの家を3か所小さい物で購入した。
何故こんな場所にと思ったのだろう。
俺はそんなギルド職員に聞かれる前に、ポスターを一枚としおりを一枚手渡した。
「今度、リディアの発案で託児所を作るんだ。その為の準備は整っている」
「託児所ですか?」
「ああ、仕事で大人が居ない間子供だけでは危険だろう? お年寄りが見るにしても限度がある。そこで、箱庭を使った子供達を預かる託児所を用意したんだ」
「慈善活動ですね。素晴らしい事です」
「私たちも聞きましたよ、孤児院への食糧支給や必要物資の支給」
「スラムに住む子供達も箱庭で面倒を見てくださるとか」
「ああ、子は宝だからな。その宝がスクスク育てるようにするのも、貴族としての務めだと祖父に言われた」
「そうでしたか」
「ですが、子供とは何かと病気になりやすいものですが、大丈夫ですか?」
「ああ、箱庭には薬師がいるからな。後は王太子から子供の面倒を見てくれる元乳母やその手伝いをしていた者たちを派遣して貰っている。こっちにも話が来ただろう?」
「ええ、急な事でしたが王太子のお望みとあって直ぐに人が集まりました。追加で20人分も」
「直ぐ雇えそうか?」
「既に20人募集を掛け、王太子からの許可がおりておりますので明日城に集まるそうです」
「そうか、では明日王太子に会いに行く事を商業ギルドから伝えて欲しい。ブレスレットも必要だしな」
「畏まりました」
「それと、薬師を追加で雇いたいと思っている。雇われ薬師になりたいような若者だ。年寄りは要らない。頼んだぞ」
そう言うと、貧困層に買った二軒に箱庭に通じる道を作り、後でミレーヌに上書きして貰おうと思う。
そして沢山の場所に託児所のポスターとしおりを置き、次に平民層が多く暮らすエリアの家二軒に道を作ってから、あちらこちらにポスターとしおりを置いた。
後は、明日の朝ポスターやしおりを見て、明後日オープンの託児所にどれくらい人があつまるかだが……少なくても良い。少しの人数でも来てくれればと思っていた。
翌日。
ライトに納品用のアイテムボックス二つを渡し、商業ギルドでの受け渡しがある事を告げると、早速ロキシーと共に行ってくれた。
昨夜は帰ってくると、サーシャとノマージュに足ふみミシンの使い方を伝授していて、「これは絶対革命です!!」「全てに導入を!!」と言う強い意志から、今日は工場仕事を休んで工場に足ふみミシンを大量に置く作業に俺と共に昼から入る。
だが、朝はミレーヌが来るため、俺達もそれまではゆっくりと過ごし、保護した元スラム孤児たちも元気に遊んでいるようだ。
「スラム孤児たちには、もう箱庭案内が終わったのか?」
「ええ、ザザンダさんが率先してやってくれましたわ」
「流石だな」
「まるで教官の様だったってロックが言ってたわ」
「鬼教官だな」
「そうね。子供達の中には、畑仕事がしたいと言う子供達もいたから、収穫を手伝って貰う事にしたんですって」
「そいつはいいな」
「ええ、でも仕事をして貰うからには給料は必須だわ。スキルを見てからになるけれど、働きたい年上の子たちには給料を上げようと思うの」
「それがいい。年の若い子供達にはお小遣いであげればいいさ」
「そうね」
「お待たせしましたリディア様にカイル様!」
「いらっしゃいミレーヌさん」
こうして、新たな箱庭の仲間であるミレーヌも加わり、俺達は賑やかな朝食を摂った。
朝食ついでにミレーヌに既に王太子が追加の20人を雇ったことを告げ、朝から城に集まる事を告げると「ご飯を食べたら伺います!」と言ってくれた為安心した。
また、両方の箱庭の案内もミレーヌがしてくれるらしく、そこは任せることにした。
食事を終えるとミレーヌと共に城へと向かい、王太子のもとに集まった20人の元乳母やその手伝いをしていた男性陣に挨拶をし、俺が託児所の説明をすると皆さんは快く受け入れてくれた。どうやら昨日働くことが決まった元乳母の方々から話をある程度聞いていたらしい。
そして、後はミレーヌに従って欲しい事を告げると、王太子から呼び止められた。
「なんだカイル、何か別に仕事でもあんのか?」
「あるから忙しいんですよ。休憩する時間なんて俺もリディアもほとんどありません」
「そ、そうか」
「では失礼します」
そう言うと俺は箱庭に戻り、リディアの作った足ふみミシンをアイテムボックスに入れて、臨時休業の工場の模様替えに勤しんだ。
確かに足ふみミシンは画期的アイテムだろう。
今まで手縫いだった品があっという間に手縫い並みに、そして倍以上の速さで出来る。
しかし取り扱いには注意が必要らしく、慣れるまでは時間が掛るだろうが、今急ぎ必要なのは子供服なので慣れるには丁度いいだろう。
「もっと早めに作っておくべきでしたわね」
「だが、お陰で裁縫スキルが上がった者たちの方が多い。怪我の功名だろう」
「だと良いんですけれど」
「石鹸工場はうまく稼働してくれている。石鹸が売切れるってことがなくなったからな」
「それは良かったですわ」
「それと、薬師を再度募集したんだ。託児所に一人でも常に薬師が居てくれると安心するだろうからな」
「お願いしますわね。でも最近働き過ぎで疲れてはいなくって?」
「疲れはあるが、今は休んでいる暇は無いだろう。俺は深く反省したんだからな」
「それはよう御座いました」
「ライトには見下されるし、リディアにも見下されるし……俺はもっと頑張らないと、二人の顔が見れないよ」
そう言いつつ苦笑いしていると、リディアはキョトンとした顔をした後、笑顔を見せてくれた。
嗚呼……その笑顔の為に頑張っていると思うと、疲れが吹き飛ぶよ。
その後、二つの工場に足ふみミシンを設置してから、箱庭の中の事を色々考える事にした。
明日は王太子領にある酒場のジューダスの所で牛丼試食会だ。
うちの主婦軍団も数人連れて行くが、子供達も増えたことで食事を作る人数が足りていないかも知れない。
いっそ、主婦でいいから箱庭で雇っても良いかもしれない。
子供は託児所で見て貰って、料理に専念してもらう主婦……この案はリディアと話し合おうと決めた。
そしてその夜――。
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その内導入しようと思っていた足ふみミシン。
私も実物を見たことがある程度で使ったことは無いんですけどね。
祖父母の家にもあった気がします。
そして新たな雇用問題。
人数が増えたからね。
やっぱり必要だよね。
と思いました。
子供が増えれば、年齢に合わせて色々作ったりしないといけませんしね。
食材を細かく切るとか、そう言う手間はやっぱり必要な訳で。
お年寄りもそうですよね。
飲み込む力が弱くなると言うか、そう言うのがあると思うので
箱庭の料理は細かく切ってくれてそう。
我が家も息子にあわせて食材は小さく切ったりして出したりと
やっぱり手間は掛かります。
女の子だと特にでしょうね。
姪っ子を育てていた頃もあるのでかなり気を使ったものですw
何時も♡や★など有難うございます。
コメント欄は諸事情で閉じさせて頂いております。
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