第149話 屋台申請と、騒動。
――カイルside――
昼食後、俺はまず王太子領での屋台で商売が出来るようにと、商業ギルドにやってきた。
途端、先日体調不良で休んでいた職員たちが駆けつけ謝罪されたが、特に問題はないため身体を案じつつ「最近激務でしたからね」と苦笑いしたが、確かにここ最近は激務だった。
それも、もう少しで終わりを告げる。
「先に、明日から屋台を始めますのでその証明書を頂きたく思います。朝に屋台、夜に屋台をするんですが」
「それでしたら、屋台の個数さえ書いていただければ直ぐに許可書をお出ししますよ」
「助かります。まず王太子領では5つの屋台を稼働させますので、5枚の許可証をお願いします。また焼肉店と言う新たな飲食店も2軒作りましたのでそちらの許可証も。あと、酒場の主人と提携して今度お店をやる場合は、どうしたらいいでしょうか」
「そちらは酒場ではなくなると言うことでしょうか」
「そうですね」
「でしたら、そちらも飲食店でしたら、許可証が新たに必要となります」
「では、そちらの発行もお願いします」
「サルビアは飛ぶ鳥を落とす勢いですね。他の貴族が頑張っても、こうは行きませんよ」
「婚約者が生粋の商売人ですからね」
「ご謙遜を。カイル様の行動もあっての事ではありませんか」
「そう言って頂けると助かります」
「しかし屋台ですか、是非行ってみたいので場所は何処になるのでしょうか?」
「場所は道具店サルビアの前となりますね」
「では、職員や冒険者ギルドにも伝えておきましょう」
「助かります。では、俺はまだやる事がありますので此れで」
「商売が上手くいく事をお祈りしております」
サクッと商業ギルドでの登録を済ませると、まずは近くにあるノイルさんのいるサルビア第一号店へと向かった。
向かう道中、久しぶりに俺を見つけた冒険者や街の人は「久しぶり!」と声を掛けてくれたので、ついでに新たにオープンする店の宣伝も兼ねると、「絶対行くからな!!」と言ってくれる人がとても多かった事に安堵した。
「ノイル、いるか?」
「ほいよって、カイルじゃないか。王太子領で仕事か?」
「ああ、やる事が多くてな。ついでに屋台が明日から出ることになった」
「マジか!!」
「ああ、朝の6時から8時までの時間は、朝屋台が道具店サルビアの前に出来るぞ」
「あら、カイルさんじゃないの」
「久しぶりねぇ」
「お久しぶりです皆さん。実は明日の朝と夜に、店の前で屋台を始めることになりまして」
「「「「まぁ!」」」」
「保護したお年寄りたちも仕事をしたいと言う事でしたし、助かりました」
「聞いたわよカイルさん。貴方、色んな苦労をしているお年寄りや女性達を保護したり、保護した子供達に勉強を教えたり色々してるんですってね」
「ええ。それも保護したお年寄りが先生になってやってくれていますが」
「いいわねぇ……」
「文字の読み書きが出来ない子はスラムで生活するものねぇ」
「これ、王太子様にお伝えできる内容かしら?」
「そうですね、学業の向上の為にも王太子様にご連絡しておきます」
確かにスラムはこの王太子領では兎に角多い問題でもある。
そこをどう改革していくかは、王太子の手腕にもよるだろうが、報告すべきことだ。
前の王国がどれ程腐敗していたのかが、良く解ることではあるのだが……人生とは儘ならないものだなと溜息が零れそうになった。
「ノイルさん、屋台の話をレインさんにもしてきてください。あと焼肉屋のオープンも来週からです」
「おおおおお!? ついにか!?」
「ええ、ついに」
「道具店にくる客にこれで安心して宣伝できるぞ! ハーレス! ジュノ! 俺ちょっとレインのとこに行ってくるわ!」
「行ってらっしゃいませ」
「カイルさん、屋台は明日の朝何時からですか?」
「ええ、朝6時から8時までの部と夜の……時間はまだ決まってはいませんが、夕食時にありますよ」
「食べに行きます」
「わたしも行きます」
「宣伝頑張ります」
「焼肉屋も行きたいので」
「お願いしますね。では俺は次にダンノージュ侯爵領の商業ギルドへ行ってきますが、後は宜しくお願いします」
そう伝えると、俺は次にダンノージュ侯爵領にある商業ギルドへと向かった。
俺が入ると数人の職員が駆けつけ、直ぐに今回の話をすると許可証をくれたが――。
「朝6時からでしたら、我々職員も食べに行けますね」
「朝出の者たちは早いですから」
「夜の部も楽しみですね。交代時間が楽しみになります」
「王太子領では来週頭から焼肉店がオープンしますが、ダンノージュ侯爵領はまだ解体作業中ですからね。解体作業が終わり、店が出来れば昼の部と夜の部で、焼肉店は出来るんですが」
「箱庭師に連絡して、焼肉店に行けるか見てみたいものですね」
「予約は可能でしょうか」
「予約は可能だと思いますよ」
「では、後日連絡して予約を取らせて頂きます」
「ええ、是非お待ちしております。また近々人を雇いたいのでご連絡しても宜しいでしょうか」
「是非お願いします」
と、こちらも問題なく進み、俺は久しぶりにダンノージュ侯爵領の商店街へと向かった。
まだまだやるべき仕事は残っているが、ダンノージュ侯爵領の商店街をライトに任せきりだった事もあり、そろそろ一度顔を出しておこうと思ったからだ。
だが、それは俺が道具店に近づいたときにおこった。
「ぎゃあ!」
「ひいい!!!」
「何をする!!」
「お帰り下さいませお客様、当店ではあなた方を客とは認めることは出来ません」
「俺達は交渉に来たんだ!!」
「ライト様でもカイル様でもいいから取次ぎを、」
「まずは商業ギルドへ向かい、仕事を探してから出直してきな!!」
店に放り投げだされた三人の男の前に、ロキシーがヒールをカツン!と音を鳴らして立ちはだかっていた。
話を聞くに、どうやら三人は俺とライトに用があった様だが、ロキシーに放り出されたらしい。
きっと奥にはライトがいるんだろうが、姿は見えない。
このまま様子を伺おうとしていると、放り出された男性の内二人は見覚えがあった。
「あれは――」
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