第145話 保護をしていた老人達と、串カツと屋台作り。

皆さんが各自仕事へ向かった後、建築師さん達がやってきて3LDKのアパート建設が終わった事を教えて頂きましたわ。

今現在3LDKのアパートは人数が一杯で、今後増えることがあっては大問題でしたからホッとしましたの。



「丁度良かったですわ、建築師の御三方にお願いがございましたの」

「何でしょう」

「昨夜の話し合いの結果、屋台運営が決まりましたの。そこで、少し大きめの屋台を作って頂くことは可能かしら? 数はそうね……大きいのを4つ、動かしやすいのを4つあれば嬉しいですわ」

「動かしやすいと言うと、大きさは注文のあった大きいサイズの半分くらいでも良いので?」

「ええ、どれくらいの大きさになるかしら」

「まず、何をお売りになるのかに寄ります」

「昨夜あなた方が晩御飯に食べた、おでん用の屋台は大きめ、肉まん用の屋台は小さめと言えば分かるかしら?」

「ああ、了解しました」

「後、試しに作りたい屋台がありますの。そちらも一台ずつ欲しいので計二台で、大きさは中くらいですわね」

「大中小で作れば宜しいんですね」

「ええ、直ぐに出来るかしら?」

「一日あればできますよ」

「では、本日は屋台作りをお願いしますわ。もう一つ出したいお店に関しては、今日の夕飯にお出ししますから」

「「「楽しみです!」」」



もう一つ出したい屋台――それは、串カツ屋!

屋台と言う形でまずはやってみようと思いましたの。

ビールも日光も進む美味しい屋台になると思いますわ!

おでんのお持ち帰りは出来なくても、串カツのお持ち帰りや肉まんでしたらお持ち帰りは出来そうな気がしますものね。

そしたらお子さんの待つご家庭では、ちょっとしたお土産になって喜ばれて家族もハッピーでしてよ!!



さて、この案は今日の夜に話すとして、問題は本日よりスキルチェックを行う保護したお年寄りたちや、今暇をしているお年寄りたちにお仕事としてどう話をするか……。


箱庭にいる人たち全員が働いているわけではなく、各自好きに生活をしていらっしゃるのは問題ないのですが、出来れば屋台で働いてくれるお年寄りがいらっしゃると良いんですけど……難しいでしょうね。

女性のお年寄りはカフェで働くのが人気で、今では王都にあるカフェ・サルビアでは、日替わりで多くのお婆様達が働いていますもの。


流石に屋台となると……華やかではないですものね。


そんな事を思いつつ、前回保護したお年寄りが集まっている休憩所に向かうと、皆さん元気一杯でしたわ!



「あ、リディア様」

「一週間ゆっくり休まれたかしら。心身ともに苦痛はありませんこと?」

「ええ、皆元気いっぱいです!」

「温泉でゆっくり癒されたのも大きいでしょうなぁ」

「足腰の痛みが和らぎましたわ」

「それは良かったですわ! では、皆さんのスキルを調べてもよろしくて?」

「それなんじゃが……」



スキルを調べさせてもらって良いかと聞いたところ、男性のお年寄り6人が手を上げながらわたくしに近づいてきましたの。

どうかしたしたのかしら?



「ワシ等6人は、元々厨房で働いておったもんでな。調理スキルはあるんじゃが……」

「ワシ等でも出来る料理の店はあるじゃろうか……」

「と言うと、どの様なお店で働いておられましたの?」

「年齢が行き過ぎていると言う理由で辞めさせられたが、ワシら6人は酒場で料理担当をしておった」

「じゃが、この箱庭では保護された若い女性達が台所預かっておるだろう? ワシ等は料理しか出来ることが無いんじゃよ」

「やれることはまたやりたい。料理人は死ぬまで料理人よ」

「そうじゃそうじゃ」

「まぁ!! なんてベストタイミングかしら!! 丁度男性の料理人が欲しいと思っていたところですわ! 皆さん、屋台をしてみませんこと?」

「「「「屋台?」」」」」



驚いた6人のお爺様たちに、昨夜食べた晩御飯の【おでん】と【肉まん】を出す夜と朝の屋台の話をすると興味津々で、更に【串カツ】と言う揚げ物料理を屋台でやろうかと思っていることも告げると、手を叩いて喜んでいましたわ。



「そりゃええな! 夜に若い娘や婆様達を外に出すわけにゃ~いけねぇ」

「俺達が夜の街で【おでん】と【串カツ】っちゅーのをやるよ!」

「なーにいってんだい爺様たちは」

「一人で客をさばける年かい?」

「最低でも男女二人で一つの屋台、じゃないとさせられやしないよ!」

「婆様たちを危険に晒すことはできねぇ!」

「危険な事は男の仕事だ」

「二人いりゃ、もっと心強いがね」

「アタシたち婆様だって、守られてばかりじゃこの先やってけないよ!」

「リディアさん、アタシたち婆様組も、爺様達と一緒に働いてええかね?」

「朝の肉まん売りなら、アタシたち残った婆様組でも出来るんじゃろ?」

「夜は多少気の強い婆様達に任せて、朝の肉まんの屋台は、少し大人しめの婆様組にさせてくれんかね?」

「何を言う! ワシ等爺様たちは料理はできん。料理は出来んが、屋台を引くことくらいはできるぞ!」

「そうじゃそうじゃ! 力仕事は爺にまかせんか!」

「み、皆様落ち着いてくださいませ!」



どうやらスキルチェックどころではありませんわ!

皆さん屋台をやりたくて燃えてらっしゃる!!

そうですわね、人数的に料理が出来る男性が6人と言う事は、おでん、串カツはなんとかなりそうですわ。それに、残ったお年寄りでも肉まんは、蒸し器で作りますからなとかなりますわね。



「では、料理が出来るお爺様たちには、おでん屋、串カツ屋の屋台を、それにお婆様が一人ついてくださいませ」

「しかしのう……」

「料理が出来るお爺様たちが、料理を中心に頑張って貰って、お婆様達には、お客様に料理を提供したり、お皿を回収したりとして貰えれば嬉しいですわ。後は朝の屋台の【肉まん】ですけれど、肉まんは蒸し器で料理しつつ、出来上がったものを保温のあるケースに入れて売りますから、屋台は結構重くなると思いますの。それで、力あるお爺様たちに屋台を引いて貰って、お婆様達が売ってくださると嬉しいですわ」

「それなら」

「ワシら全員で出来るな!」

「では、今回集まってくださったお爺様、お婆様たちには屋台をお願いしますわね。それで宜しいかしら?」



そう問いかけると、皆さん了承して頂けましたわ。

また、売り場所はダンノージュ侯爵領と王太子領二つである事も伝えると、王太子領は人気がやはりなかったですが、仕事としてやるからにはと奮起なさいましたの。



「仕事があることはええことだ」

「それが好きな仕事なら尚ええことじゃ」

「老いてからでは邪魔者扱いばかりで辛かったが、ここではワシらのような年寄りでも仕事をくださる」

「ありがたいことじゃ」

「ワシ等にも厨房が欲しいのう」

「仕込みは大事じゃからのう」

「仕込みならアタシたち婆様達でもできる」

「爺様たち、ずっと気を張ってたら倒れちまうよ」

「無茶のできん体になったんじゃ、助け合って働くのが一番ええ」

「その通りですわね。新しい厨房は必要ですわね」



こんなに遣り甲斐を持っていらっしゃるんですもの。

辛い王太子領であっても、仕事だと、遣り甲斐があるとおっしゃられては、お爺様お婆様たちの厨房を作らねばなりませんわね。

それがきっと、幸福に繋がるんでしょうから。


――そうわたくしが思った途端、ドンッ と地面が揺れたと同時に、お爺様やお婆様達が悲鳴を上げると、少しだけ揺れた後に出てきたのは……真新しい厨房が出来ていましたわ。

しかも、前の厨房も少しレベルアップしたのか、広くなってますわ!!



「厨房が二つに増えましたわね……」

「なんじゃなんじゃ!? この箱庭は神様でもおるのか!?」

「こりゃ使い勝手のええ厨房じゃぞ!」

「包丁もまな板もシッカリとしたものができておる!」

「え――っと……」



つまり?

やはりこの箱庭は、住んでいる人間の幸福度で色々変わると言う事かしら?

特に保護した方々の幸福度が跳ね上がると、箱庭が進化するのかしら……。

最初のうちに進化しなかったのは、人数の違いかしら?



「きっと、箱庭の神様が皆様の幸せを感じて、厨房をプレゼントしたのかもしれませんわね」

「「「「箱庭の神様」」」」

「わたくしはそう思ってますわ」

「ってことは、見えない神様がこの箱庭にはいらしゃる……と言うことか」

「ええ神様じゃ」

「ありがてぇ、ありがてぇ!」

「神様が応援してくれておるんじゃ、皆の衆、頑張るぞ!!」

「昨日のおでんを作ってくれた娘たちに作り方聞きにいくべ」

「串カツの作り方を教えてくだされ~!」



――こうして、夜までに大量の串カツやおでん、そして肉まんを作る事になりましたけれど、串カツの漬けタレは壺入りにしましたわ。

こっちの方がそれっぽくみえますものね! 雰囲気大事ですわ!


そして、日が暮れようかと言う頃に建築師さん達がやってきて、屋台が出来たことを教えてくれましたの。

是非見に行こうと皆さんとで向かう頃、子供達や他の方々も集まり、全員で屋台を見に行きましたわ。


大きな屋台が4つ、これは【おでん用】の屋台ですわね。

中くらいの屋台が2つ、こちらは【串カツ用】の屋台。

そして最後に小さめの屋台が4つ。これは【肉まん用】の屋台。



「ふんふん、イイ感じですわ!」

「ええ、屋台となると椅子や机もいるかと思いまして、机や椅子はまだ作っていないのですが……」

「それは、わたくしの方からロストテクノロジーで軽くて丈夫で組み立てタイプの机と椅子を用意しますわ。お婆様やお爺様たちのアイテムボックスに入れさせてもらえれば楽ですもの」

「なるほど、その手がありましたね」

「ワシ等の屋台じゃ――!」

「何時から働きに出れるかのう」

「今晩、カイルと話し合ってみますわね。それに、屋台はあっても、肝心の料理を作る場所をまだ用意してませんから」

「それもそうじゃったのう」

「リディア様、早く出来んか? 無理そうか?」

「明日までお待ちくださいませ、明日になったら全ての屋台に組み込みますわ。取り敢えず屋台は汚れないように布を被せておいてくださいませ」




そう言って大きめの革で出来た丈夫な布を手渡すと、二人一組で被せて満足げにしておられましたわ。

屋台骨は出来ましたわ。

後は明日、中身を作れば完璧ですわね!

耐火の付与もシッカリとしておかねば!



「後はカイルたちに話をして、ですわね。その為にも美味しいおでんや肉まんや串カツ作りましょう!」

「「「「おう!!」」」」

「串カツは多めに作った方がええじゃろうねぇ」

「子供や男の人は良く食べるからねぇ」



そう言って、カイルたちが帰ってくるまでに味を調えたおでんや串カツのタレを作り、先にお年寄りや保護している子供たちの晩御飯となりましたわ。

では、その間に出来る仕事はパパッと終わらせておきましょう!








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保護していたお年寄りたちは無事に屋台部隊へ。

作者の住む場所は屋台が有名ですが、美味しい屋台に当たるのは運。

そして串カツ!

焼き鳥ならぬ、蒸し鶏屋なんてのも考えたけど

ガッツリ食べるなら串焼きじゃね?つまり串カツ。と言う安易な考え。


冒険者は若いイメージが強いです。

某ネトゲでは老人タイプのキャラもいますが、滅茶苦茶見た目はタイプです。

ガル〇が一番の好みですが。


いっぱい食べる君が好きと言うフレーズが良く似合うタイプは素敵です。


何時も☆や♡等有難うございます!

小説更新はハイペースですが、小説内はユックリ進んでます。

冬に向けて大忙しではありますが、楽しんで頂けたら幸いです!

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