第134話 新たに米の入手と、焼肉研修に向けて。
――カイルside――
リディアが新しい商売の品を考え付いたころ、俺はやっと箱庭に戻ってきた。
少々疲れたが、ライトからあんな目で見られるくらいならマシだ。
リディアから下衆を見る目で見られるとゾクゾクするが、弟からそう言う目で見られると、兄としてのプライドがズタズタになる……。
「ただいま~…って、リディアどうしたんだ?」
「お帰りなさいませ、カイル。新しい商品ですわ! 冒険者の為の商品を色々と作りますわ!」
「そ……そうか、出来れば二つずつくらいでお願いしたいんだが」
「そうですわね、せめて三つで押さえますわ」
リディアの作る商品は必ず爆発的に売れるのは目に見えている。
ふとロキシーとライトに目を向けると、少しだけ青い顔をしながら遠い目をしていた。
うん、分るぞ。リディアの商品で店がパンクしそうになる姿がな……。
「それより、王太子領で焼肉屋が出来るように調理師を50人。ウエイターやウエイトレスは合計で60人雇えたぞ」
「まぁまぁまぁ!!」
「彼らには研修は明日からだと伝えてあるが、どうする? 七輪とかはもう置いてあるんだろう?」
「ええ、でも炭がまだ置けてませんわ。炭師の方々から炭を貰ってこないといけませんわね」
「アタシとライトで言いに行ってくるよ。丁度ご飯も食べて貰いたいから交代しながら来てもらいたいし。炭用のアイテムボックスは渡してあるんだっけ?」
「ええ」
「ならそれも貰ってくるよ。新しいアイテムボックスと交換でね」
「頼みますわ!」
「肉関係は別途アイテムボックスで用意してある、もういい加減肉だらけのアイテムボックスが増えに増えてちょっと困ってたくらいだ」
「では丁度いいですわね。明日わたくしも赴いて、炭をおこすのは皆さんやり方知っているとは思いますから別として、肉の焼き方や七輪の使い方、あとはビールと、白米の炊き方を教えてきますわ」
「白米はやっぱり出すのか」
「無論ですわ! 第一店舗にまずは明日全員集まって貰えるように言って貰えますかしら? 白米の炊き方とかも皆さんに教えたいですし、こちらも慣れている主婦の方を数名連れて行きますわ」
「なら、その旨は俺から伝えよう」
「ふふふ、大量に陶芸師の方々から作って貰った大釜が火を噴きましてよ! ちゃんと5つほど白米用の大釜を炊く用の場所は作ってありますから何とかなりそうですわね」
「直ぐ白米が無くなりそうだから、米を炊く専用の人も用意するのか?」
「そうですわね、調理師の皆さんに覚えて貰いたいですわ」
「そうか」
「後は秘伝のタレは既にストックがアイテムボックス二つ分出来てますから大丈夫ですわね。ダンノージュ侯爵領用の秘伝のタレも近々作り始めますわ」
「う、うん。そうだな、秘伝のタレあってこその美味さだよな」
「後は、カイルの方からアカサギ商店にお願いして、【ニンニク】を大量に仕入れて来てもらいたいですわ。明日お願いできるかしら。」
「分かった。他に欲しいものは?」
「白米はかなり多めに、一気に100ダースほど買えたら最高ですわね。あとは醤油とワサビを。ワサビは試しですけど私は大好きですから多めに欲しいですわ」
「分かった」
「わさび醤油で食べる肉って、タレよりも美味しいんですのよね」
「よし、大量仕入れだ! 今のうちにアカサギ商店に連絡を入れて貰って、明日買いたい商品をつたえて置くから待っててくれ」
「分かりましたわ」
そう言うと俺はその足で商業ギルドへ向かい、アカサギ商店に明日朝一番に道具店サルビア一号店に来てもらうよう頼み、欲しいアイテムは米100ダース、醤油50本、ワサビを30個、ニンニクを100個とお願いすると、商業ギルドの方は驚いていたが直ぐにアカサギ商店に向かったようで、数分後アイテムボックスを手にアカサギ商店のナギサがやってきた。
「お久しぶりですカイルさん。大量に買って下さるとの事で、急ぎアイテムを積めて持ってきました」
「早いですね」
「丁度米が残り100ダース分しかなかったので、ご入用でしたらまた仕入れてきます」
「ああ、必要になるから大量に仕入れて来てくれ」
「後は頼まれていた商品もこちらの鞄に入れています」
「ありがとう、今後とも素晴らしい取引をお願いします」
「こちらこそ! これからも御贔屓に!」
こうして商品の値段を支払い、箱庭に帰ると既に女性達による最後に残っていた米の精米が始まっていた。
精米機の隣には小屋が作られており、そこに米を入れておくシステムに今は変わっている。
「ご注文の品を直ぐ用意できたぞ」
「有難うございますわ。米は先に米専用小屋に入れておいてくださる? 精米した米は持って行きますわ。後は必要な物をこの中に入れたいですから、カイルは肉用のアイテムボックスを用意してきてくださる?」
「何個ほど?」
「各店舗に1つほどあれば良いかしら?」
「分かった、3つずつ持っていくよ」
「あとは秘伝のタレ用のアイテムボックスをお願いしますわね」
「分かった」
「リディアちゃん、炭師からアイテムボックス二つ貰って来たよ」
「助かりますわ!」
「精米は今日のうちに20キロを幾つ必要でしょうか?」
「まずは二袋用意してくださる?」
「「「分かりました」」」
こうして慌ただしくなりつつも、リディアは作らねばならないものがあると知って鉱石の入ったアイテムボックスを手に、見たことのない皿を作った。
棘が沢山ついている物で、主婦たちが興味津々だ。
「こちらは【すりおろし器】と言って、これで色々な物をすりおろすことが出来るんですの。ちょっとニンニクをすりおろして見せますわね」
そう言うとニンニクを取り出し、中のニンニクを分けるとすりおろし器で一気に擦切ってしまった。
ニンニクは固形物からすりおろされた姿になり、香りも食欲をそそる。
「ニンニクは滋養強壮剤にも使われる程素晴らしい物なんですけれど、血圧の低い方が食べ過ぎると倒れますわ。そこは注意喚起必須ですわね。もう一つのすりおろし器でワサビもすりますわ」
そう言うと手慣れた様子でワサビもすりおろすと、今度はツーンとした臭いが漂ってきて臭い慣れていない俺達はくしゃみが出た。
「ふふふ、これは少しだけ肉に付けて食べると美味しいし、少しだけ醤油に入れて溶かして食べると、魚も肉も美味しいんですの。でも好みは分かれる商品ですわ」
「なるほど」
「こちらも明日、調理師やウエイトレスにウエイターに話をしながら研修させますわ。オープンは研修の一週間後で宜しいかしら」
「それまでに米を炊けるようになればな」
「皆さんに炊けるようになって貰いましょう。後は味噌汁も作れるようになってくださると助かりますわね。昼の焼肉定食に出したいですし」
「昼間は焼肉定食のみか?」
「ええ、オープンは昼11時からにして、食べられる肉も制限を設けますわ。それに白米と味噌汁がつく感じですわね」
「なるほど」
15時までの限定にして、その後焼肉屋としてのオープンは17時からにすれば宜しいですわ」
「分かった、そうしよう」
「満遍なく皆さんが焼肉屋に通って貰う為にはそれが一番でしてよ。それに牛丼試食も今週末でしょう? 保護した主婦の皆さんには頑張って貰わねばなりませんわね」
こうして、明日の研修アイテムは夜21時には出来上がり、リディアは鞄に白米を入れてから温泉に入り就寝となった。
そして翌朝8時――第一店舗の研修が始まった。
数人の手慣れた主婦たちを連れて――。
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