第109話 皆で食べる【焼肉】と【ビール】の破壊力。
地面に並べた七輪は人数分、七輪が肉の油で燃えた時に網を冷やせるように氷も用意し、替えの網も大量に用意して挑んだ――焼肉パーティー。
どんなお声が上がるか楽しみですわ!
「変わった焼き道具だね」
「七輪と申しまして、中で熱した炭火を入れて上に彫金師の作った網に少しだけ油を塗ってますわ。その上で肉を焼くんですの。本来なら特殊な机の上で食べるんですけれど、今回は地面で食べることにしましたわ。肉が焼ける姿が良く見えますもの」
「なるほど、氷は?」
「氷は肉の油が炭に落ちた際に、一気に燃えたとき用の冷やし氷になりますわ」
「大分アクティブな料理なんだね」
「これも一種の娯楽ですわ。お肉はたんまりとカイルに買ってきて貰いましたから、各部位色々楽しめますわよ。ついでに野菜も用意しましたの。是非、秘伝のタレで味わって下さいませ」
こうして始まった焼肉パーティー。
肉を焼く用のトングと、焼けたのを取る用のトングを用意し、取り皿とタレも用意してイザ、出陣ですわ!
網目の上で焼ける肉の香りはたまらなく、元冒険者の方々は「懐かしいな」と言いつつ焼いていましたの。
けれど、焼肉自体が初めての方々は、どうなるのかとドキドキしているようですわ。
頃合いを見て裏返したりと、皆さん思い思いに焼いていらっしゃいます。
わたくしも久しぶりの焼肉とあってテンションが上がってますけれど、カイルはわたくしの焼き方を見ながら「上手いな」と言ってましたわ。
肉には部位によって味が違い、皆さん思い思いに焼肉を三種のタレのどれかに付けて食べ始めましたわ。
「ん!」
「んん!?」
「これは……」
「タレは三種類、右からアマダレと普通のタレとレモンダレですの。場所によって試しながら食べると面白いですわよ」
「これは焼肉を舐めていたな……肉なんて冒険者時代に幾らでも焼いたのに」
「このタレだよ……このタレが肉の美味さを引き出している」
「野菜も美味しいです!」
「明日の仕事が無ければ、これにすりおろしたニンニクを沢山入れて精力をつけると言うのも一つの手なんですけれど」
「ニンニクかぁ……。滅多に食べたことが無かったな」
「まぁ! ニンニクはとっても滋養強壮にいいんですのよ?」
「そうだったのか」
「無論、取りすぎはダメですけれど」
「リディアは物知りだな」
「ふふふ。血圧が低い方はニンニクの取りすぎで倒れたりもしますから注意が必要ですけれどね」
そう言いながら食べていると、あちらこちらから火柱が上がり、慌てて氷で火を鎮めている方々が増えて参りましたわ。
「はははははは! こりゃ凄い火の勢いだ」
「軽い炎魔法くらいはあるんじゃないか?」
「美味しくて、ドキドキもしますでしょう?」
「確かに面白いな」
「それに、如何に肉を上手く焼くか、網目一杯に焼くかが楽しみになってくる」
「私は肉と肉の間に野菜も入れて、程よく野菜も食べてますよ」
「確かに野菜の甘みが凄いね」
「ピーマン嫌いだったけど」
「今は好き」
「ナナノさんとハスノさんの嫌いな食べ物が食べられるようになって良かったですわ!」
「自分で自分の好きな物を焼くと言う楽しみはいいね。ところで、このハサミは何に使うんだい?」
「今から用意しますわ。持ってきてくださる?」
そう言うと、厨房から小さなツボと、切り目の沢山入った大きめのお肉がやってまいりましたわ。
「ツボに入っているのは、ツボ漬け肉ですわ。野菜もツボ漬け肉と共にタレに沁み込ませてませてますからオススメでしてよ。そして大きい肉、こちらは食べやすいようにハサミで切るように、ハサミを用意してますの」
「なるほど」
「ツボ漬け肉も、この大きな肉と同じサイズの物が入ってますわよ」
「この秘伝のタレを漬け込まれし」
「美味しい肉と野菜」
「「勝てる気がしない」」
「本当に焼肉屋っていうのは、肉を食べる為のお店なんだね。派手にファイヤーしたりして楽しいし美味しいよ」
「これが勝ち戦って言ってたやつか。働き盛りや育ち盛りの子供たちは沢山食べるだろうな」
「子供用のお肉は薄い肉として出しますから、喉を詰まらせない様にしないといけませんもの」
「なるほど、子供に配慮した子供用のお肉もあるのか」
「今回は用意してませんけれど、薄い肉で食べられるようにしてますわ。カイルなら分かりますわよね? しゃぶしゃぶ肉」
「ああ、アレくらいなら確かに子供にもお年寄りにも良いな。寧ろお年寄りにも子供にも良さそうなのは、しゃぶしゃぶ屋じゃないか?」
「「「「しゃぶしゃぶ?」」」」
「それも次回のお休みの時にお出ししましょうか?」
「そうだな、全員でしゃぶしゃぶ祭りだ」
カイルの言葉に楽しみが出来た雪の園と朝の露のメンバーは嬉しそうに頷きあい、焼肉を食べてらっしゃいますわ!
しかし流石男性陣……肉が凄い勢いで消えていきますわ。
「しかし、無限に食べれるなこれ」
「時間制限とかしないとダメなんじゃないか?」
「焼肉屋のプランとしては、二時間食べ放題で銀貨3枚、お酒飲み放題をつけて銀貨2枚ですわ」
「二時間も食べ放題飲み放題が出来るのか、しかも銀貨5枚で」
「そのお酒と言うのが―――お出しになって貰える?」
「「「はい!」」」
そう言うと、冷凍庫でキンキンに冷やした陶器の大きめのコップに、これまた冷蔵庫でキンキンに冷やしたビールを出してきて貰うと、皆さんゴクリと生唾を飲まれましたわ。
ふふふ、やはり焼肉にはビールですわよね!!
「こちら、箱庭産のビールとなりますわ。専用の蓋を開けるものが御座いますの」
「ほお。専用の蓋開けか」
そう言うとビールを持ってきた三人はポンっと瓶の蓋を開け、皆さんにコップとビールを一瓶ずつ渡すと、にこやかに去って行かれましたわ。
三人もビールを飲みましたけれど、驚かれてましたわ!
そして、皆さんもキンキンに冷えたコップにビールを注ぐと、軽く乾杯してから飲まれましたの。
すると――。
「――美味い!!」
「なにこれ、焼肉に最高に合うじゃないか! リディアちゃん凄いじゃないか! アタシこのビール大好きになっちまったよ!?」
「ふふふ、美味しいでしょう? 焼肉にはコレですわよコレ」
「酒場のエールとは随分と違うが、こっちの方が断然美味いな」
「喉越しが最高だぞ……」
「シュワシュワ感が」
「たまらない……」
「この焼肉とビールのセット、売れない訳が無いでしょう?」
「「「「「絶対売れる」」」」」
「確かに勝ち戦しかない商売だな」
「でしょう?」
「ピザも捨てがたいですが、焼肉には負けます」
「これは酒場が潰れるぞ」
「王太子領の酒場では、ビールを卸そうと思ってますの。ちゃんとした扱いをする酒場に限りなのと、個数は限定になりますけれど」
「いいねぇ」
「これなら直ぐに店の元手も取れそうだな」
「その為の焼肉ですわ。わたくしの作ったお店では一番最強ですわ。でも、これらは不遇スキルと呼ばれた陶芸師と炭師がいないと作れない商品でもありますの」
「確かに、この七輪は陶芸師が作ったんだろう。炭は無論炭師」
「ええ、不遇スキルも商売さえ成り立てば最強のスキルですわ!」
「確かに言えてる!」
そう言いながらもドンドン肉を食べ進める男性陣に、ついに肉の方が尽きましたわ。
結構買ってきて貰いましたけれど、あっという間でしたわね。
「いや――美味かった!」
「よう御座いましたわ。今回は牛肉だけでしたけれど、他に豚肉や鳥でも美味しいですわね」
「焼くための肉は豊富ってことか」
「ええ、ソーセージやベーコン、魚介類も最高ですわ」
「いいねぇ……」
「焼肉屋……俺は通い詰めるぞ」
「レイスさん余程気に入ったんですね」
「だって、各種より取り見取りのお肉に美味しい焼き野菜、秘伝のタレは正に至高! その上酒まで美味しいってなったら通うしかないだろう? なぁイルノ!」
「ああ、一緒に通おうぜ」
「二日酔いにはならないでくださいよ?」
「「解ってます」」
「信じてますからね!」
カイルに釘を刺された二人は少しだけションボリしてましたけれど、それはそれ、仕事は仕事ですものね!
甘えは許されなくてよ!
「カイル」
「はい」
「焼肉屋、急ぎで頼むな」
「その前にやる事があるので二番目か三番目ですかね。出来るだけ急ぎます」
「サルビアは商売の中では一人勝ち状態だな……リディア嬢が余りにも商売人過ぎた」
「お褒め頂きありがとうございますわ!」
こうして、焼肉パーティーもお開きとなり、今後七輪作成が陶芸師に一気に襲い掛かることになりますけれど、頑張ってくださいませ!!
まずは『サルビア布製造所』の早期オープンですわ!!
ガーゼシリーズは他所にも協力を仰いで、明日から頑張りましてよ!!
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焼肉食べ放題とかいくと、肉は殆ど食べない私です。
基本的に夫が食べているのを見つつ、少しだけ食べる。
肉が嫌いと言う訳ではないんですが、年ですね(;´Д`)
思いきり肉を食べていた若い頃が懐かしい……。
個人的に、ワサビをつけた肉を食べるのが好きです。
皆さんは焼肉屋、好きですか?
何時も♡や★等有難うございます!
一カ月以上、一日三回更新続けられております。
我ながら誤字も多いけれど良く書いている……。
楽しく書いているので、是非読者様にも楽しんで頂けたら幸いです。
これからも応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ
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