第93話 ダンノージュ侯爵領の改革開始!

確かに、大きな街だと思いましたわ。

けれど、全体的に元気がないというか……なるほど、アラーシュ様が言っていた停滞というのは本当の様ですわね。

ありきたりの店。

ありきたりの商売。

行き交う冒険者の多さは……属国となったあちらと同じくらいかしら?

なんだか、モヤモヤしますわ。



「確かに停滞してるようだな」

「まだアッチの方が元気ですわよ」

「確かに。ここまで元気がない街も早々見ないねぇ」

「モヤモヤしますわ」

「リディア姉さんの改革の血が騒いでるようです」

「カイル、新たな新商品が出来たら頑張りな」

「ああ……そうさせて貰うよ」



何やら腑に落ちない会話をされてますが、確かにこれほどまでに店に元気が無いのはいただけませんわ。

もっと街とは元気でないと!!

商店街らしき場所を歩いても、店の店員の方々もつまらなそうな顔。

アレではいけませんわ。



「ブラウンさん、この辺りで賑わっている通りはありませんの?」

「冒険者が良くいく酒場くらいですな」

「それは由々しき問題ですわよ」

「ははは! いっそ商店街諸共作り直しますか?」



ブラウンさんは笑いながらそう告げると、わたくしは「それですわ!」と声を大きくした。



「カイル、いっそ商店街作りましょう。【サルビア商店街】」

「は?」

「え?」

「なんて?」

「そうよ、元気が無いのなら作り直せばいいのよ! 何て良いアイディアかしら! ブラウンさん、件の道具屋はこの商店街にありますの?」

「いえ、その道具屋は酒場前に陣取ってますよ」

「では、わたくしこの元気のない商店街、まるっと欲しいですわ」

「リ……リディア?」

「ですがここは冒険者ギルドとも商業ギルドとも少し離れてますが」

「通って貰えば問題ないですわ。それほどまでに魅力的な店を作りましょう。足繁く通いたくなる商店街を作りましょう。壮大な改革ですわ! できますわよね? カイル」

「出来ないとは言えないだろう……」

「ですが既にお店を持っておられる方々ばかりですよ」

「その方々も丸っと雇いますわ。やる気が一切無いというのなら追い出します」

「お、おう」

「この一帯の商店街、買いですわ」

「リディアが言うのなら、商業ギルドで話を聞いてみよう」



気圧されたカイルから言質を取り、並んでいるお店のチェックですわ!

寝具店、こちらは提携できそうですわね。

飲食店、こちらは改革が必要そうですわね。

洋服店、サーシャさん達に頼んだら凄い事になりそうですわ。

お肉屋さん、こちらは他の店よりは賑わってますわ。話し合いで頑張って貰いましょうか。

お魚屋さん、閉まってますわね。

酒屋さん、閑古鳥が鳴いてますわ。

八百屋さん、品物がしなびてますわ。

雑貨屋さん、大きい店なのに閉まってますわね。

全部丸ごとお買い上げしちゃいますわよ??



そんな事を思いつつ商業ギルドに到着すると、ブラウンさんを見つけたギルド職員は急ぎやってきましたわ。

そして商店街をまるっと買いたいとカイルが言うと、職員は驚きながら走り回っておりますわね。



「別に今居る方々を追い出したいという訳ではありませんわ。場合によっては追い出しますけれど」

「そうなんですね」

「商店街丸ごと、金貨200枚で買えそうか?」

「あの場所に200枚も出して頂けるんですか!?」

「あそこには、それだけの価値を生み出す予定だ。嘘でも大げさでもなくな」

「分かりました。今居る方々はそのままに、場合によっては辞めて頂く事も検討と言うことですね。直ぐに話し合いに向かいます」

「結果報告は明日また伺います。もしやる気がまだ残っているというのでしたら、明日店主たちを集めて話をさせて頂きたいです」

「伝えておきます」

「辞めたい方には退職金を支払いますわ。でも出来れば頑張って貰いたいですわね。それと職員さん、働き口を探しているやる気に満ちた方も雇いたいんですの。募集もお願いしますわね」

「はい!」

「俺達が雇いたい人材だが――」



さぁ、大規模改革ですわ。

【サルビア商店街】の為にもアレコレ動きませんとね!

後はこの問題を箱庭に持ち帰って皆さんとで話し合いですわ!



「まさか」

「本当に」

「商店街丸ごと買うとか思いませんでした。兄さん大丈夫ですか?」

「やるしかないだろう。リディアが求めているのなら」

「「確かに」」

「あの場所に価値をつけますわ。必ず、確実に。ですから『停滞』と言うおごりを全力で潰しに行きますわよ!」

「お、おー!」



出せるものは箱庭に幾らでもありますもの!

不安があるとしたら野菜や果物ですわね。

増えた畑に野菜を植えて、お酒も箱庭産の物を出します事よ!

そう、あの商店街を――箱庭産で埋め尽くしてやりますわ!!



「さぁカイル! 今からが戦争でしてよ!」

「そうだな!! 本当に戦争だ!!」

「箱庭に帰って早速動き出しますわ! やる事が出来ましたので先に帰りますわね!」

「あ、リディア!!」



止めるカイルを振り切ってその場で箱庭に帰ると、ザザンダさんを呼んでまずは畑に野菜を増やす事をお願いしましたわ。

するとザザンダさんは待ってましたと言わんばかりに畑に案内すると、既に食料系の畑が増えてましたわ!!



「いつかリディア様が何かをやらかさないかと思い、小麦畑にジャガイモ畑や野菜畑を増やしておきましたわ!」

「流石ですわ!!」

「この箱庭は収穫して2時間で次の作物が実り終わる上に、腐りませんから」

「箱庭の外に出たら腐るでしょうけどね」

「カイル様のご実家で新たな商売ですか?」

「ええ、サルビア商店街を作りますわ」

「商店街……」

「その為にも野菜、果物、魚が必要でしたの! 助かりましたわザザンダさん!」

「商店街……うん、流石ですリディア様!」

「うふふ!!」



その後、戻ってきたカイルたちと共に拡声器にしたブレスレットで住民全員を呼ぶと、商店街を作る事を含め話し合いになりましたわ。



「寝具店と洋服店はコチラで出している商品との業務提携ができそうだと思いますの。問題は飲食店、お魚屋さん、八百屋さんですわね。こちらは是非箱庭産の物で埋め尽くしたいんですけれど、今居る方々で商売をしてみたい方はいらっしゃるかしら」

「あの! 私たち働きたいです!」

「保護された女性のうち、半数を箱庭の台所係りにして、子供が大きい私たちは働けます!」

「アタシたちも働きたいねぇ」

「オレもだ」

「ワシ等も出来るかのう」

「では、お爺様やお婆様、後は保護された女性達で、後で店を指定しますからお願いしますわ。ノーマンとナノンさんは魚の提供をお願いします」

「大量にありますよ」

「今まで釣ってきた魚は貰ったアイテムボックスに入ってますし。そろそろ溢れそうだったので助かります」

「ナイスですわ!」

「僕たちも遊びついでに海岸で貝類集めておいたよ」

「いっぱいあるよー」

「流石ですわ!」

「流石なのはリディア様ですよ。子供達にもレアなアイテムボックスを手渡してたんですから」

「子供のうちに楽をさせてはと思いましたが……」

「私たちは果物を沢山とってあるのよー!」

「男の子は海で、女の子は山で果物狩りしたんだよねー!」

「それでは、子供達にもお給金渡さないといけませんわね!」

「「「「「わーい! 仕事だ――!!」」」」」

「これから改革ですわ! 停滞こそ悪! 皆さんついて来てくださいますわね!」

「「「「「お―――!!!!」」」」」



こうして、一部の店員をゲットしつつ壮大な改革が始まりましたわ!

全員でぶっ壊しにいきますわよ!!!







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お越しくださり有難うございます。

本日二回目の更新です。

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