第92話 一般的な箱庭と、リディアの箱庭について。
商売は保守に回れば成長しませんわ。
常に変化にとんでいなければ勿体ないことこの上なしですわよ!!
「勝算はこちらにどれ程ありますか?」
「道具店サルビアを考えれば……まぁほぼ此方が勝つだろう。だがあちらも必死にはなるだろうな」
「では、徹底抗戦ですわね」
「ははは! リディア嬢は中々好戦的だな!」
「商売は生き残りをかけた戦いですわ。喰うか喰われるか。でしたら、食べてしまいましょう」
「で、新しい商品開発へ進むという訳だなリディア」
「今あるアイテムでも十分勝ちは見えてますわ。ようは停滞している道具屋に勝ち、領民を仲間に引き入れるということですわよね」
「そうなるな」
「でしたら、道具店サルビアで売っている物、業務提携している商品などで何とでもなりませんこと?」
「あー…うん」
「確かにリディアの言う通りかもしれない」
「それに、調理師を新たに雇い入れ研修させ、カフェ・サルビアとは別の形の物を作りましょう。大々的に料理をお出しするお店ですわ」
「カフェ・サルビアはどうするんだ?」
「それはダンノージュ侯爵領の街を見て決めましょう。カフェでしたら王都でも作れますわ」
「では、担当を決めようか。属国となった方のお店の纏め上げはライト、お前に任せる。ロキシーと協力してやってくれないか」
「はい、分かりました」
「あいよ」
「その代わり、ダンノージュ侯爵領と王都は俺がやる」
「頼もしいですわカイル!」
「リディアも激務になるが、大丈夫か?」
「今保護している方々で様々なスキル持ちや錬金術師も増えましたし、何とかなりそうですわ」
「そうか、足りなくなる前に教えてくれ。問題は裁縫師の少なさとネイルサロンだが……」
「それだが、貴族を雇う気はないかね?」
「「「「貴族……」」」」
思わぬ言葉にわたくし達が顔を顰めると、アラーシュ様は苦笑いをしていた。
「流石に貴族は嫌か」
「嫌ですわね。何かと自分の矜持を重んじる方が多すぎますもの。それに貴族の方々が箱庭の方々と仲良くなる率は極めて低いですわ」
「俺もそう思います。没落貴族なら分かりますが」
「では、貴族の路線は止めておこう」
「まずは、領での商売を軌道に乗せるところから始めよう。ダンノージュ侯爵領の道具店サルビアを軌道に乗せ、その後他の店についても検討する」
「そうですわね。まずは着実に一つずつですわね」
「という訳で俺がオーナーをしても?」
「ああ、構わんよ。寧ろカイルにこそオーナーをして領民を見て欲しいし、都度報告は欲しいところだ」
「分かりました」
「問題は店員ですわね」
「一旦持ち帰って、やる気があるものはダンノージュ侯爵領道具店サルビアで一緒に働けるかどうか聞いてみよう」
「女性ばかりだけどね」
「そうだな……」
そう、商売に置いて女性ばかりでは成り立ちませんし、どうしたものかしら。
やはりアラーシュ様に頼んで人を募集して貰おうかしら……。
「……元冒険者の方はダメかしら。ダンノージュ侯爵領にそう言う方はいらっしゃらない?」
「冒険者でも向き不向きはあるさ」
「そうですけれど」
「アタシとしては、最初に雇う人間に関してはダンノージュ侯爵領の人間が良いと思うよ? 勝手がわかってる奴の方が強いからね」
「うううん……」
「商業ギルドで雇うと言う手もある。それまでに店をどこにするかはカイル、任せられるか?」
「はい、領地のどのあたりで商売をするのかにもよりますが」
「遺跡に近い所に大きな街がある。そこにはタウンハウスも置いてあるから、そこから決めればよい。此処から三日ほどの場所だ」
「そうさせてもらいます。どなたかその街までの箱庭経由で行ける方は」
「ブラウンがいける。頼めるかブラウン」
「畏まりました」
こうして話し合いは終わり、タウンハウスにわたくしも道を作るべくブラウンさんに着いて行き、ブラウンさんが箱庭を発動させると、わたくしは初めてブラウンさんが箱庭師であることを知りましたわ。
しかも他人の箱庭に入るのは初めてでしてよ!! 中はどうなっているのかしら!
ワクワクで一杯になりつつブラウンさんの箱庭に入ると――なんか、思ってたのと違いましたわ。
「ンンッ リディア嬢の箱庭が規格外なだけですからね?」
「え?」
「普通の箱庭師の箱庭とはこう言うものです」
そう、ブラウンさんの箱庭はタウンハウスが入る程度の広さに家が建っており、それだけでしたの。
この広さではアパートすら作れません事よ?
そんな事を思いつつ家の中に入ると、中は家というより扉ばかり。
その扉こそが、各移動地点への扉らしく、普通の箱庭師に多い作りなのだとか。
あらあら?
わたくしの箱庭の入り口は一か所だけですけれど、全部思う場所を思い描けば入れますわよ? わたくしの箱庭が可笑しいのかしら?
「納得してないというお顔ですな」
「申し訳ありませんわ……」
「リディアの箱庭は、リディアらしくていいじゃないか」
「まぁ、そうですわね」
個性なんて人それぞれですものね。
それに箱庭師のスキルを持っていると知った瞬間、昔やっていたゲームの箱庭を想像したのも大きいのかしら?
「是非、リディア様の箱庭は、お子様に引き継がれますことを祈りますよ」
「そうなるように育てますわ」
こうしてタウンハウスに到着したわたくし達は、街をぶらりと歩いたんですけれど……。
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