第74話 英雄を陰から守った守護の店と新たな商品開発

ネイルサロン・サルビア及び、道具店サルビアが移転することをネイリストの方々に説明したのも束の間、ロキシーお姉ちゃんがライトくんがしてくれていた広告の印刷依頼から広告配りから色々してくれてる中、新しいメンバーの研修も始まりましたわ。


朝の露のメンバーと雪の園のメンバーが揃って道具店サルビアで働くとは思っていなかったお客様達は驚きを隠せなかったようですけれど……。




「俺達の命があるのは道具店サルビアの店主のお陰だからな」

「こっそり特別なアイテムを用意してくれたから我々は助かったんだよ」

「恩を返さないとだろう?」



と冒険者や庶民の方々に言うと、道具店サルビアは『英雄を陰から守った守護の店』としてさらに有名になり、多くのお客様が訪れていますわ。

誰だってゲン担ぎはしたいもの。

守護の店ともなれば、それはもう――。

お陰様で新しいメンバーの店員レベルが、ガンガン上がってますわ!


そんな中、ネイルサロン・サルビアの三階で、期間限定で発売が始まった『ガーゼシリーズ』及び、『ひんやり糸』を使った洋服販売ですけれど、こちらも好調なようで、二時間もすれば全てが売切れる程の勢いでしたわ。


今回は貴族のお客様抜きでやりましたけれど、これは……。



「「リディアさん」」

「はい!」

「こちらの『ガーゼシリーズ』及び『ひんやり糸』も業務提供をした方が良いと思います」

「今箱庭にいる裁縫師たちは家を建てるのに必死ですし」

「そうですわね……」



そう、魔法が使える希少な彼女たち――ジャックさん、マリウスさん、ガストさんは現在皆さんが住む家を建てる為にガンガン魔法を使って建築を行っておりますわ。

もう直ぐ子供を持つご家族やわたくしが住める3LDKの二階建ての20部屋あるアパートが立ち終わりそうなんですけれど、そのあとは独身女性達が暮らす2DKの20部屋あるアパートを作り、尚且つそのあとは作業小屋を作る事になってますわ。

彼らが裁縫師として活躍するのはまだ先……ならば、業務提携した方が良いでしょう。



「業務提携は前向きに検討しましょう。カイルに相談してきますわ」

「「お願いします」」

「お店に一部を卸してもらう感じにして貰いましょう。折角3店舗をカイルのお爺様から貰ったんですから。一つのお店はサーシャさん、ノマージュさんたちが好きに服を作って売るお店にしましょう!」

「「ありがとうございます!!」」



こうして、直ぐにカイルを呼んで事の内容を説明すると、洋服関係で業務提供しているところに『ひんやり糸』を提供する代わりにマージンを貰い、服を売る事を許可しようと言うことになりましたわ。

問題はガーゼ系ですけれど、ガーゼの服に関しては今まで通りサーシャさんとノマージュさんに頑張って貰う事にして、ガーゼケットやガーゼの敷パッドは寝具店と提携して、一部を新しく作るガーゼと服の専門店サルビアに卸してもらい、マージンは貰うけど売って貰う事にしましたわ。

しかし、カイル一人では無理がある為、新たな朝の露か雪の園メンバーを連れて行き、担当を決めることにしたそうですわ。



早速動き出したカイルは、レイスさんを連れて業務提携をするべく寝具店及び、洋服関係の業務提携をしているお店へと向かわれましたわ。

アイテムボックスには大量の『ひんやり糸』と『ガーゼ布各種』を入れて。

時期にあわせてガーゼは二重、三重、四重、と増やせますものね。

その辺りの説明は既にしていたので、後は業務提携してくださることを祈るばかりですわ。



さて、カイルとレイスさんにお任せした後は、わたくしは新たな商品開発に余念がなくてよ!

この世界では平民や冒険者は石鹸で手を洗う事が無いのだそう。

辛うじて、男性は髭を整える為に使う様ですけれど、それではいけませんわ。

手こそ綺麗にしなければ、病気の元でしてよ!

貴族も庶民も使えるように、石鹸には花の香のするものを多く用意しましたわ。

普通の石鹸も男性向きに作り、薔薇の香にラベンダーの香り、百合の香りなどを用意して、後は男性が髭剃りに使いやすい泡石鹸を用意しましょう。


泡石鹸に関してはロストテクノロジーが無ければ作れませんわ。

これはわたくしの仕事になりそうですわね。

器となるのは男性ならば青系にして、中に詰めるのは詰め替え用を別途用意しましょう。

でも、子供さんが使うのならば容器は少し小さめにして可愛らしい絵を入れた物が宜しいわよね。

それこそ、人気の英雄たちをデフォルメしたものとか、女の子なら絵本のお姫様をデフォルメしたものとか……。

子供用の小さい容器が出来たら専用の詰め替え用も絵柄を入れて作りましょう。

香りは少し甘い香りのする花の香りにしておけば問題はないはず。


わたくし個人としては、どっちの石鹸が売れても、皆さんの手が綺麗になるのでしたら問題ありませんわ!

それに、手洗いが習慣されていけば、皆さんの病気にかかる率が減るんですもの。

売れ残っても習慣化されるのでしたら安いものですわ!



そう言えばロキシーお姉ちゃんから、リンスインシャンプーの依頼がありましたわね。

此れも売れるのかしら?

試しに店に置くように各店舗に50個ほど用意しましたわ。

それにボディーソープも同じように各店舗50個ほど。

わたくし達が温泉で使っているものですけれど、こちらの世界ではシャンプーもボディーソープも貴族しか使わないのだとか。


でしたら、庶民が手が出せるように安めの値段に設定ですわね。

石鹸が一番安くて銅貨2枚。

泡石鹸は大人用の容器が銅貨5枚、詰め替え用が銅貨4枚。

子供用の容器が銅貨3枚、詰め替え用が銅貨2枚。

シャンプーとボディーソープは銅貨5枚にしましょう。


平民で収入が少ない人達でも手が出せる筈ですわ。

儲けよりも、皆さんが病気にならず、皆さんが綺麗になることが優先ですわ。


貴族用には香りが良いものを用意しますからお値段は高く設定しますけれどね。

容器も綺麗な物を用意しますし、お金を持ってる貴族からガッツリ貰いますわ!



「そうだわ。手洗いに関してはどれ程病気の予防になるのかを徹底して分かりやすく……そう、例えばこんな……」



テーブルと画用紙をアイテムボックスから出し、箱庭で遊ぶ子供達用に作ったクレヨンを鞄から取り出し、手洗い用のポスターを描いていると、子供達が集まってきましたわ。



「リディアさまなにしてるのー?」

「これなんのえ?」

「てあらい?」



保護された子供たちはとても不思議そうに見つめてますわね。

やはり手洗いと言うのはこの世界に浸透させねば!!



「そうですわね……手には沢山病気の元になる、わる――い奴が潜んでいるんですの。それを倒すためのアイテムが此方ですわ!」

「なにこれ―!」

「これが石鹸ですわ! 石鹸を使って手を綺麗に洗う習慣がつくと、病気になりにくいんですのよ? 手に潜む悪いモンスターを倒しますの!」

「「「「おおおおお!!」」」」

「箱庭でも手洗いは必須ですわ! 夕食の時に話をしますからね」

「「「「はーい!」」」」



そう言って駆けていく子供たちを見送り、わたくしはハッとしましたわ。

分かりやすく書くのでしたら、『手に潜んでいるモンスターを倒せ! 我々が病気にならない為に!』みたいな書き方が良くなくて?

案を書いたら後はポスターを制作してくださる所にロキシーお姉ちゃんに書いた絵を持って行って説明して貰いましょう。

ポスターが出来たら道具店サルビアとネイルサロンの方へポスターを貼って貰って、業務提供している所にお願いしましょう。

後はそうですわね……新店舗にも必ず貼る事にしましょう!

そうだわ!

道具店サルビアは『英雄を陰から守った守護の店』ですもの。

今度は国民が病気にならない様に守る守護のポスターとして、ご利益があるものとしていろんなお店にポスターを貼って貰いましょう!

目に見えるところにあるポスターで、尚且つ『英雄を陰から守った守護の店』からのポスターならば効果は抜群の筈ですわ!

その方法で行きましょう!!


こうして、ロキシーお姉ちゃんを呼び出して色々説明をすると、「絶対ご利益欲しい店はポスターを貼るよ!」と言って下さり、下書きの画用紙と手を洗う事についての予防効果を書いた書類を渡すと、早速印刷所へと向かわれましたわ。

夕方にはポスターが出来上がり、明日には新商品の販売とポスターの張り出し等、皆さん忙しくなりますわね!!


そして一日の報告に箱庭に皆さんが集まると――。



「石鹸や手洗いにそんな効果があるとは思わなかったな……」

「良いねコレ、『手に潜んでいるモンスターを倒せ! 我々が病気にならない為に!』って子供にも分かりやすいじゃん? こんな事言われたら子供たちは率先して手を洗うと思うぜ」

「そして親も手洗いを子供から言われて洗うようになると」

「良い連鎖です」

「普通の手洗いだけでもそれなりに綺麗にはなるんですけれど、やはり石鹸や泡石鹸があった方が便利ですものね。箱庭を少し弄って、畑のあるあちら側に二か所。居住区に手洗いや歯磨き場所の為の水道を多めに作りますわ。無論石鹸か泡石鹸を置きましてよ!」

「それって、チョー便利だよね……箱庭師が羨ましいわ」

「箱庭師」

「有能過ぎる」

「有能と言えば、温泉も大きくなったよな」

「ええ、男女別にしようかと思ったんですけれど、とりあえず大きければいいなと」

「リディアさーん、男女別にはできないんですか?」

「イルノさんは男女別が欲しいです?」

「俺達男性陣は欲しい」

「では、居住エリアが完成したら作りますわね」



こうして一日の報告会は平和に続き、それが終わると全員で食事となりましたわ。

わたくし達が報告会をしている間に、内部処理班の皆さんとお子様たちは先に温泉に入って貰ってますの。

ジャックさん、マリウスさん、ガストさん、ザザンダさんも女性達と同じようにお風呂に入ってますわ。

最初こそ驚かれたようですけれど、心が女性な事と、女性として接して欲しいと言うお願いは、保護された女性達にも受け入れられたようで、今では4人の心が乙女の彼女たちは、箱庭のムードメーカーになってますわ。



「リディアさーん!」

「もうそろそろ子供を持つ親御さんとリディアちゃん達が暮らすアパート出来上がるから楽しみにしててね!」

「一カ月経ってませんけど、早いですわね!」

「あれだけのMPポーションを貰った上に、木材が伐採しても2秒で大きくなるんですもの」

「嫌でも早く出来ちゃうわ」

「そうなんですね。お疲れさまです! 楽しみにしていますね!」

「家具も作らないとね!」

「楽しみだわー!」



前世で言うオネエさん達は、各自ノリノリで会話と食事を楽しみ、皆さんが眠りに行くついでに男性陣が温泉へ。

残った夫の暴力から逃げてきた女性達が食器洗いをして下さって助かってますわ!

その後わたくしとロキシーお姉ちゃんも温泉で疲れを癒し、秘蔵の紅茶を飲みながら皆さんで寛いでいると――。



「明日の新商品発売、楽しみですわ――!!」

「ははは、店にでてる俺達は全員地獄が来るぞ、気合を入れようぜ」

「ははは、一体どうなってしまうのか今から怖くて仕方ないよ」

「モンスターと戦うよりこわいかもな」



そう言って笑う皆さんが居たのは言うまでもありませんわね!

頑張ってくださいませ!





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本日も一日三回更新です。

宜しくお願いします。

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