第53話 箱庭師は赴くままに動き出す。
娼婦だった彼女たちを保護してから一週間後――。
『破損部位修復ポーション』の威力は凄まじく、健康体であった頃と同じ状態にまで彼女たちを治すことが出来た。
それでも、元々が良い生活をしていたようではないようで、まずは体力をつけるべく箱庭で日々を過ごしていらっしゃいます。
心の傷も多少なりと破損部位修復ポーションで治ったものの、元々が男性に対して良い思いをしてこなかったのでしょう。カイルやダルメシアンさんと話す時は、少し硬くなっておられますが、それも少しずつ薄れつつあるような気もしますわ。
それもこれも、カイルとダルメシアンさんの人柄によるものでしょう。
何よりカイルは、徹底してわたくしに構ってきますから、今まで接してきた男性とは違うのだと思っているのだと思います。
サーシャさんとノマージュさんは、箱庭の仕事が終わった後は、よく二人で釣りをしていらっしゃいます。
そう言うマッタリした時間を過ごすことも無かったのでしょう。
彼女たちいわく「こんな贅沢な時間の使い方が出来るのは箱庭のお陰なんですね」と嬉しそうにしてらっしゃいます。
そして、リリーさんとアンリさんのお母さんであるナナリシアさんは、元々細かい作業が好きだったようで、魔石をクリスタルにする方法を教えると黙々とスキルを上げるように作っておられます。
割れる魔石の方がまだまだ多いですが、彼女たちが何かに夢中になれることはとても良い事なので、好きなだけ魔石が使えるようにカイルに頼んで大量に仕入れて来てもらいましたわ。
居住区にはサーシャさんの小屋と、ノマージュさんの小屋、そしてリリーさんとアンリさん姉妹とナナリシアさんが一緒に暮らす小屋も立ち、皆さんが少しでも心が休まるように、今は様子を見ている所です。
また、あれからわたくしは『破損部位修復ポーション』を、MPポーションを飲みながら30本程作り、今後に向けて動き出しておりますの。
ナナリシアさん達のような元娼婦の方が箱庭に、ひと時の休息時間を得られるように小屋も五つ建ち、更にロキシーお姉ちゃんとカイルにお願いして、娼館ならば貴族がいく娼館以外の場所に定期的に行って貰い、借金の支払いが終わってその後の行き場のない娼婦さんや、質の悪い娼館や、ナナリシアさん達のいたような娼館の娼婦さんを、たんまりと貯めこんだ金貨で買いつけ、王都では小さい娼館がドンドン無くなっていると言う噂すら流れるようになったようですわ。
それでも、ナナリシアさん達がいたような粗悪な娼館はそう無いらしく、けれど破損部位のある女性も少なくなかった為、娼婦の皆さんを購入したら一旦ネイルサロン・サルビアの上の使っていない部屋にベッドを並べて休んで貰い、破損部位を治してから、夜になると教会で神殿契約を結び、彼女たちの精神状態に問題が無ければ、宿屋で金貨を払い部屋を借りるようにしておりますわ。
今では宿屋のおじさま曰く「この宿屋はアンタのとこで持ってるようなもんだ」と呆れながら話していらっしゃったとか。
その助けることが出来た元娼婦の女性達は、現在総勢32人にまで及びますわ。
今後も増える予定ですけれど、嬉しい事にその殆どの方々がネイリストの皆さんの仕事が終わってからネイル講座で勉強していて、技術取得に余念がありませんの。
向き、不向きはあるにせよ、元娼婦の方々は必死に毎日技術を得る為に勉強し、仲間のネイルを見ては勉強し、技術を磨いておられますわ。
建国記念日頃には、皆さんがネイリストデビュー出来るかもしれませんわね。
「もう少し人数が増えたら、貴族部門と冒険者と庶民部門で店をもう一つ用意するのもアリですわね……」
いっそ、道具店サルビアのネイルサロンは庶民用にして、冒険者専用ネイルサロンを作るべきかしら。
場所の選定も考えないといけませんわね……。
後はそろそろ新しい商品開発も……。
けれど、仕事は次から次に舞い込んでくる為、新しい商品制作までには行きつきませんわ。
「いっそ……ネイリストだけではなく、アイテム制作部門で人を増やそうかしら」
「アイテム制作部門ですか?」
「楽しそうですね」
「あら、サーシャさんにノマージュさん」
「ふふ、リディア様眉間に凄いシワが寄ってましたよ?」
「私たちも辛かった分ゆっくりとさせて頂きましたから、お手伝い出来る事ならば何でもお手伝いしたいと思っている所です」
「まあ! まあ!! お手伝いして頂けますの!?」
「簡単な物からしか出来ませんが」
「お役に立てたら嬉しく思います」
サーシャさんにノマージュさん……っ!!
なんて良い人なの!!
「箱庭の整備諸々でも助けて頂いてますのにっ! 宜しいんですの!?」
「はい! 外に出るのは怖いですが、箱庭の中なら安心して仕事が出来ますから」
「私もです」
「ではでは! お二人は裁縫できまして!?」
「ええ、得意な方ですが」
「私も裁縫は得意です」
「では! このアイテムをあらゆる種類で用意して下さるかしら! 布はコチラのアイテムボックスの中にありますし道具も入ってましてよ! 数は一日まずは一人50個あればなんとかなりますわ!」
そう言って取り出したアイテムはシュシュの道具。
一般市民の女性陣と冒険者の女性陣にとにかく売れまくっている商品ですわ!
「働いていただけるんですもの! ちゃんと給料はお出ししますからお願い出来ますかしら!」
「給料が貰えるんですか!?」
「こんなに良くして頂いてるのに!」
「無論ですわ!! 是非、一人50個をノルマに頑張ってくださいませ! 出来上がったら教えて頂けると幸いですわ!」
「はい!」
「ナナリシアの家族にも声を掛けてきます!」
「あ、ナナリシアさんたちには一度こちらに来てもらえるように伝えてくださる? ちょっと調べたいことがありますの」
「分かりました! 池鏡の前に来るよう伝えておきます!」
こうして、道具を持って二人は走り去り、数分後ナナリシアさんご家族がやってきましたわ。
「何かお呼びだとかで……」
「どうしたの?」
「わたしたち、なにかしてしまった?」
「心配なさらないで! ちょっと早いですけれど、リリーちゃんとアンリちゃんのスキルを見ておくのと、ナナリシアさんのスキルをみたくてお呼びしましたの! じゃーん! ロストテクノロジーで作ったスキルボードですわ!」
そう、三人はどうやら錬金や彫金、そういったスキルが高そうなので、一度シッカリとみておきたかったので、ロストテクノロジーでスキルボードを作りましたわ!
手のひらを当てると、その人のスキルが表示される優れもの!
これ、カイルに後で見させていただこうかしら?
いえいえ、きっと秘密が多い男性かもしれませんわ。見ないほうが良いかもしれませんわね。
「あの、スキル鑑定と言うのは貴族限定では?」
「そう言うのは、わたくし、ここでは取っ払う事にしましたの! スキルは庶民だろうとなんだろうと、誰であろうとみていいものだと思いますわ!」
「その考えは王家に反するかと」
「既に反してますもの、今更一つや二つ増えても問題ありませんわ。それに、自分たちに向いている仕事、したくありません?」
わたくしの言葉に三人は目を見開き小さく頷くと、わたくしはスキルボードを地面に置き、早速三人を調べてみることにしましたわ!
「スキルボードに5秒ほど手のひらをのせて、後は終わりですわ。どんなスキルがでてくるか楽しみですわね!」
「とても悪い事をしているきがしますけど……」
「ドキドキする」
「でもたのしい」
「楽しいのが一番でしてよ! では早速見て参りましょう!」
「「「はい!」」」
さぁ、三人のスキルがどうなっているのか――見させてもらいますわ!
==========
本日も安定の一日三回更新です。
心の赴くままに!
と、言わんばかりのリディアちゃん。
ここから彼女は心の赴くままに動き出します。
いや、何時も心の赴くままに動いている気もする!(汗)
応援よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ
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