第30話 箱庭師は、冒険者に必須のアイテムを作る事にする。
本日から、ロキシーお姉ちゃんも交えて一日の終わりに夕食及び、今日の出来事からお客様からの要望、または本人たちからの要望を聞く時間になりましたわ。
前もって連絡事項などをしていた事を、解かりやすくした感じですわね。
「今日のお店はどうでしたの?」
「ああ、今日は冒険者も多かったが一般客にも噂が広がって、一般のお客も増えてきた感じかな。擦り傷の絶えない職場用に大容量の傷薬が良く売れてる。効果が高いそうだ」
「それと、冒険者の間では毒消し草を角瓶に入れた物が人気らしくって、そちらも良く売れてますよ。でも、やっぱりポーション類が良く売れますね。MPポーションも飛ぶように売れてます」
「元Sランク冒険者のロキシーお姉ちゃんからみて、足りなさそうな導具とかはありまして?」
そう問いかけると、ロキシーお姉ちゃんは「そうだねぇ」と呟いてから口を開きましたわ。
「客層が庶民から冒険者ってところでだよね。一般庶民が使うのは傷薬が一番売れてると思うけど、冒険者視点になると、品揃えはもう一歩踏み込んで欲しい所はあるよ。部位破損を治すポーションとかは止めた方が良いだろうけれど、付与アイテムなら、いざという時に使える【帰路の護符】とかかね」
「【帰路の護符】……そこは思いつきませんでしたわ」
「この王国にはダンジョンも多いから、【帰路の護符】は飛ぶように売れると思うんだけどねぇ。出してみるのを考えてみないかい?」
――帰路の護符。
これは、付与レベルが高い者が一番収入源にしていると言っても過言ではない、ダンジョンから出る為の使い切りのアイテム。
発動に10秒掛かるとはいえ、一瞬でダンジョンの外に出られるアイテムとして、王国の冒険者必須のアイテムだったはずですわ。
また、護符の上の物で【帰路の指輪】という回数制限はあるものの、上級冒険者御用達のアイテムもありますわね。
「確かに【帰路の護符】はどこの道具屋にも置いてありましたね……確か、銅貨10枚」
「そう言えばそうでしたわね……。後は【身代わりの護符】も値段は高かったですけど、置いている道具屋を見たことがありますわ」
「冒険者にとって、そして冒険者が雇うアイテム運び人にとっても必須アイテムだからね。おいて損はないと思うし、不自然ではないと思うよ」
「「なるほど……」」
「もし置くのであれば、【耐火の護符】も置いてみると良い。この辺りのダンジョンで人気が高いダンジョンの一つなんだけど、とにかく暑くてね。【耐火の護符】があるのと無いとじゃ収穫に雲泥の差が出るからね。特に採掘依頼が多いエリアでもあるから、耐火の護符を買っても御釣りが来るくらいには冒険者は稼ぐよ」
「兄さんも冒険者なのですから、そう言う情報は欲しかったです」
「う……っ」
まさか自分に飛び火するとは思っていなかったのか、カイルは申し訳なさそうに「そうだな」と呟いておられましたわ。
「でも、カイルは店や売り上げのやりくりで手いっぱいですし、仕方ありませんわ。お店もオープンしてまだ日が浅いですもの」
「リディア姉さんは優しすぎますよー?」
「そうかしらー?」
「まぁ、ダンジョンも幾つか存在しているけれど、よく売れるのが【耐火の護符】であって、後はダンジョン傾向によっては、【麻痺回避の護符】や【水中呼吸の護符】なんかも売れると思うよ。ダンジョンの草原エリアでは何時麻痺の風が吹くか分からないからね。【水中呼吸の護符】に関しては、Cランクから潜れるようになるダンジョンで活躍するよ」
「では、護符関係を一式揃えておけば、多少問題なく?」
「付与アクセサリーで作れるならそっちの方が利益がでるだろうけれど、金のない冒険者にとっては護符の方がありがたいだろうね」
「分かりましたわ」
それなら、今日の夜は【帰路の護符】と【身代わりの護符】を作りましょう。
護符は全て木材の長方形の板に模様を特殊なインクで書き込んで、インクの上に付与魔法を入れ込む事で完成しましたわね。
それらを使うと木が割れる仕組みになっているから使い切りでしたわ。
分かりやすいように、【帰路の護符】には黒の紐をつけ、【身代わりの護符】には白の紐を付ければいいかしら。
【耐火の護符】なんかは、一日使い切りのアイテムで、一度発動させると一日は防いでくれる。けれど、ダンジョンから出れば割れる仕組みだったはず。
紐で色分けしておけば、間違いようがありませんわね。
「では、お客様には今後護符も増えていくと言う事を伝えておけば良さそうですね」
「そうだな、リディアには負担を掛けてしまうが……朝は寝てていいんだぞ?」
「腐る程アイテムがあるんですもの、作ってお金に変えないと勿体ないですわ」
「だからと言って、自分の体調を後回しにはするなよ?」
「その為の疲労回復温泉ですわ!」
「前から思ってましたけど、リディア姉さんって仕事中毒なところありますよね……」
「アタシたちが監視してれば多分大丈夫だと思うけど、まぁちょっと人より多めの休みを取らせないとかねぇ」
「休むときは休ませて頂きますわ! それは皆さんも同じでしてよ?」
三人の視線に耐えきれず思わず反論しましたけれど、確かに元日本人……ワーカーホリックな所があるのは否めませんわね。
気を付けねば……。
「それとカイル、乗り込んできた冒険者達や、銀鉱石の方はどうなりましたの?」
「ああ、報告しておかないとな。実は――」
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本日も一日三回更新となっております。
此方は二話目です。
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