第27話 箱庭師は今日の予定をスムーズに運ぶべく考える。
次の日――。
朝はいつも通り箱庭の作業を進めていると、薬草園から這い出て泥を落とすと、ライトさんが嬉しそうにザル一杯の宝石をわたくしに見せに来てくれましたわ。
ルビーにサファイア、エメラルドにダイヤモンド……どれもこれも宝石のなる木から採れた美しい輝きですわね!
そう言えばロキシーお姉ちゃんに宝石のなる木の事を聞いたとき、箱庭で栽培できるのではと思い、駄々をこねてしまって、結局沢山の宝石のなる木を持って帰ってきてくれましたわ!
その時、一時的にどこかのドラゴンの素材が値崩れしたと聞いた気がしますけれど、ドラゴン素材なら採掘所でもたまに出てきますものね。
本当に不思議な箱庭ですわ。
「まるで宝石のような果物にみえてきますね!」
「ええ! 宝石ですけれど美味しそうな果物にも見えてきますわね!」
ライトさんと二人微笑み合いながら採れたて新鮮な宝石類を見ていると、採掘所から何かを手にこちらに駆けてくるカイルさんが見えましたわ。
今日はまだ解除薬の弱いのを飲んでいないのか、鱗がビッシリ生えた腕が輝いてますわ!
「見てくれ二人とも!」
「まぁ、どうしましたの?」
「クリスタルゴーレムの腕が採掘所から出てきたんだ!! 綺麗な腕がボロッと!」
「ホラーですね」
「凄いですわね」
「クリスタルゴーレムの素材なんて冒険者ギルドに持っていったら、とんでもない事態になるぞ……値段も幾らつくか想像つかない」
キラキラと輝くクリスタルゴーレムの腕に、わたくしたち三人が「ほ――……」と見つめていると、ライトさんがポツリと呟きます。
「でも、売れないものが発掘されても困りますね……主に置き場所が」
「アイテムボックスに売れないモノ用がありますから、そちらに入れたら如何ですの?」
「ああ、あのダンジョンコアが入った【売りに出せないモノ用】アイテムボックスか」
そう、カイトさんが暇を見てコツコツアイテム整理した際、どうしても、どうやっても売りに出す事が出来ないアイテムがあったらしく、それらを纏めたアイテムボックスが御座いますの。
流石にダンジョンコアがその辺に転がってるとは思ってなかったらしく、カイトさんから慌てて時を止める方のアイテムボックスが欲しいと言われ、在庫の一つを渡したのも、つい最近だった気がしますわ。
カイトさん曰く、あの【売りに出せないモノ用アイテムボックス】は、アレ一つで国宝が入っているのと同じなのだとか。
スキルを神殿で貰ってから、毎日コツコツ狂ったように篭った甲斐がありましたわね。
朝の仕事も一段落すると、男性陣が汗を滝で流している間に軽食の準備をしますわ。
そして二人がお店に出る時の服装になって戻ってくると、軽い会話をしながらの食事となりましたの。
「今日の予定は、わたくしも店に出ていいんでしたわね。マニキュア講座頑張りますわ!」
「私と兄さんとで店を切り盛りですね。兄さんは途中で来客があるんでしたっけ?」
「アラクネさんが銀鉱石50個を取りに来る予定だ。ああ、後は昨日興奮してて忘れているだろうが、俺達を助けてくれた冒険者でもあり、アイテムボックス三つを購入なさった雪の園のメンバーの双子の女の子が、【お守りの付与された髪飾り】が欲しいとかいってたぞ」
「お守り……【身代わりの華】のことかしら? 助けて頂いたお礼にプレゼントして差し上げたら喜ぶんじゃなくて?」
「喜ばれると思います!」
暇を見て可愛らしい双子さんの為に、【身代わりの華】のお守りを作る事を決めましたわ。
朝食も終えて昼の作業をしていると、カイルさんがわたくしを呼び、先に今回から研修に来る三人の引っ越しを手伝ってくると言うではありませんか。
確かに宿屋を4つ既に借りていますし、引っ越しの方は早めにした方が良いですわね。
「着替えや必要な物だけでも鞄に詰めて来て頂けたら助かりますわね。後は何度か整理の為に往復と言うところでしょうか。それなら、三人にはアイテムボックスをお渡しして、必要な物を詰めて貰いましょう。後はレアな方のアイテムボックスも持って行って貰って、そちらはカイルが三人のうちの誰かと話し合いながら、レアな方に画材や絵を、まるっと、入れてきて頂けると助かりますわ」
「そうだな、そっちの方が色々手軽でいいか。でもそんなにホイホイとアイテムボックスを渡して大丈夫か?」
「裏切られたらその時は、わたくしに見る目が無かったのだという戒めになりますもの。気にしませんわ」
「人が良すぎるぞ、お前は」
「カイルも人の事言えませんわよ?」
クスクス笑いながらそう告げると、カイルは苦笑いしながらアイテムボックス三つと、レアな方のアイテムボックスを鞄に入れて工房へと向かわれたようですわ。
わたくしも今日はマニキュア講座がありますし、服装も少しだけオシャレにしましょう。
眼鏡も掛けて髪型もいつもお団子ですけれど、違う感じにすればイメージも変わりますわ!
それから、自分の化粧用にと用意しているカラーリップも忘れてはなりませんわね。
出来る女の格好と言うのも、一種のコスプレみたいで楽しいですわ!
着替えを済ませ、化粧も済ませ準備万端整えると、店の開店時間前にわたくしを呼びに来たライトさんと共にお店の二階に向かいましたの。
アイテムボックスの中に入っているマニキュアを各自の手元の棚に入れ込んで、コットンも用意して、リムーバーを用意して、ネイルチップも一人30枚ずつ用意。
これだけあれば、まずは大丈夫でしょう。
まだ本格始動はしないから、女性用アイテムはまだ一階にありますし、二階はまだ閉店でしてよ!
色々と店の中にマニキュアや宝石箱をオシャレに飾りつけして、香りも焚き始めた十分後――。
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本日も一日三回更新です。
こちらは二回目です。
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