第14話 【道具店サルビア】開店セールを箱庭師は引き籠って見つめる。

【道具店サルビア】開店初日――。

開店オープニングセールという事で朝から二人が呼び込みをしてくれたおかげで、ポツポツとお客様が入り始めましたわね。

声が聞こえるように池に宝石の欠片を一つ落とすと、店内の声も聞こえてきましたわ。

この池の凄い所は、宝石の欠片でも一つ入れれば見たい場所の声が聞こえるという事ですわね。一体どういう仕組みなのかしら。



『いらっしゃいませ! 本日は開店オープニングセール中です!』

『奥にはポーション等の品も普段よりお安めに置いております。是非見て行ってください』



あらあら。

ライトさんもカイルも張りきってますわね!

お客様も多種多様のようで、一般のお客様から冒険者のお客様まで幅広く来られているようですわ。

品物には説明文も書いている為、店員に聞かなくても大丈夫なようにしてあるのも良いのかも知れないわね。



『あら、このハンドクリームは他の店とは違って良い香りがするわ』

『本当ね、幾つか同じハンドクリームで種類があるみたいだけど』

『好きな香りのハンドクリームを選べるのは嬉しいわ』

『この傷薬、他の店よりも銅貨5枚安いわよ!』

『大容量用もあるのか! うちの店に丁度いいよ!』



等、嬉しい声が聞こえますわ!

庶民向きの方は上々。お客様も途切れることなく回っているようですわね。

それに、ハンドクリームは無香料からバラやラベンダーと言った香りつきの物も用意。

これで女性のハートは掴みましてよ!!

傷薬に関しては、大容量品なんて誰が買うんだとカイルは不思議そうでしたけれど、需要はあるんじゃないかなと思ってましたの。

例えば、擦り傷の多い木工ギルドとか、家具職人の所とか。

それ以外でも従業員の多い店では一つはあると便利じゃないかしら?

狙いは当たったようね。

さてさて、冒険者の方はどうかしら?




『ここは上級ポーションも数は少ないけど置いてくれてるのか』

『しかも今回は開店なんとかセールだろう? この機会に一本俺たちも買っておくか?』

『俺たちも中堅どころだ。一本くらい所持しててもおかしくはない』

『こっちの毒消し草は品質が良いな』

『角瓶入りってのが助かる。他の店だと革袋に入ってるのが精々だけど、アレはアレで使いにくい』

『麻痺解除ポーション!?』

『こいつぁ買うしかないだろう!』

『待って! MP回復ポーションも買って損は無いわ!』



こちらも次々にアイテムが売れる売れる。

すると、奥の庶民用の場所に不自然に置いてある宝石箱に気づいたオバサマがライトさんに声を掛けられましたわ。

ここからが、【道具店サルビア】の神髄の発揮ですわよ!



『ねぇ店員さん、この宝石箱の中は何か入っているの?』

『はい! そちらは付与アクセサリーが入っています。痛みを軽減するブレスレットが三つだけ置いてありますよ』

『まぁ! 付与アイテム?』



オバサマの大きな声に、冒険者達は一斉にざわつきましたわ。

無論近くに向かう冒険者も数名いらっしゃいますわね。



『坊主、この痛み軽減ブレスレットは本当に付与がついているのか?』

『シッカリ付与はついています。庶民の方にも使って欲しいという付与師の方のご依頼で、本日限り、一つ銀貨6枚となってます』



これには冒険者も庶民の方もざわめきが起きましたわ。

『あくまで、開店オープニングセール中にあわせてお値段を今日だけは抑えてくださってます』と、本日限りの特別品感を出すのを忘れないライトさん、最高過ぎるわ!



『本日は無理を言ってこの三つのみとなってしまいましたが、こちらのショーウィンドウを見てください。こちらに後日、その付与師さんの作品が並ぶことになっているのですが、毒無効や麻痺無効と言った付与から、徐々に体力が回復する付与の物も取りそろえる予定です』

『そいつはスゲェ!!』

『無論、付与品はお高いですので、一括払いでのみ取り扱わせてもらいます。こちらも信用問題になってしまいますので』

『なるほど、この店は付与師と提携してくれているのか』



そう、一般的な道具屋では、付与師との提携なんて夢のまた夢。

付与師はプライドが高いものが多く、また付与が出来る物も少ない為、なんでも値段が高くなりがち。

付与師自体がレアスキルかと言われるとそうではない。

ただ、付与師になるのは茨の道と言われる程に地味でコツコツとした作業をしなくてはならないし、必要アイテムの数の多さから、付与師に成れる者はほんの一部。

わたくしは暇を持てあました元公爵家の娘。

親からの愛情は貰えなくとも、好きなだけ金だけは使わせてもらえたので何とかモノにすることができた。

所詮は、お金が無ければ何もできないのと一緒ですわね。



『冒険者の兄さんたちが買わないなら一つアタシが買うわよ!』

『あっ!』

『いいじゃないか、五十肩で苦しむアタシの夫の誕生日なのさ。プレゼントの為に貯めたお金を此処で使わせておくれよ』

『それは』

『仕方ないな。他二つは冒険者で買わせてもらおう』

『そっちばかりずるいぞ!』

『あーあーあー! 奪い合いはお止めください! 近日中に痛み軽減付与の物も入りますので――!!』



店の中はテンヤワンヤしつつも、その賑やかさは外にまで響いている様子。

結局、争う冒険者さんたちはカイルさんの一喝により収まり、昼を過ぎる頃には交互にカイルとライトさんがお昼ご飯を食べに箱庭に来てくれた。

ニコニコ笑顔の二人を見ていると心がポカポカしますわ!


さて、此処から午後の後半戦!

どうなりますかしら!

期待してますわよ!!




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おばちゃんは強い。


午前編と、午後編で分かれています。

今日の昼か夕方くらいにもう一度更新予定です(`・ω・´)ゞ

★や♡とても嬉しいです!

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