第5話 箱庭師は箱庭を案内した後、盾の人の良さに感激する。

岩の隙間を進み開けた砂浜に出ると、そこは全てが居住用スペースとしてわたくしが使っている場所。

大きな岩と岩の隙間に部屋を作り、近くには程よい温度の滝があり、その隣には目隠しも一切ない温泉を用意。

雨も降らないこの不思議なエリアでは天候も安定してて過ごしやすく、とっても快適に過ごせる。

元日本人であるわたくしとしては、四季があっても宜しいのに……とは思うけれど、それはユニークスキル箱庭ですから仕方ないのでしょうね。



「ここが居住エリアですわ。今まではわたくし一人だったからこの作りですけれど、カイルが一緒に住む事を考えると色々手を入れないといけませんわね」

「これは……凄いな」

「凄いでしょう? わたくしの秘密基地でしたの。今日からはカイルも一緒に秘密基地での生活ですわね」



そう言ってクスクス笑うと、カイルは周囲を見渡しリラックスした様子で背伸びをした。



「もう此処までくると、この箱庭についてあらゆる驚きを捨てた方が身のためだと判断したよ」

「あら、とっても賢明なご判断ですわ」

「だが、一緒に住むというのは少々問題があるんじゃないか?」

「何を仰いますの護衛者様」

「それもそうでした護衛対象様」

「急ぎもう一つ個室を作らねばなりませんわね……。それとも、店を用意出来たら店の護衛を兼ねてカイルがお店で寝ます?」

「そっちの方が助かるかな。でも温泉は聞き捨てならないぞ? 昔冒険の途中で入った温泉は最高に気持ちが良かったんだ」

「なら、食事とお風呂はコチラに来て済ませれば宜しいですわ」

「そうさせてもらおう。しかし本当に凄いな」



一応、こちらにはわたくし専用の仕事場もあり、いくつかの小屋はあるのだけれど、それの一つ一つをカイルが見学すると驚きの声を何度も上げていましたわ。

外で売ろうとすればとんでもない値段の付くロストテクノロジーで作り上げた装置や道具の数々が無造作に置かれた居住エリアの小屋は、どれか一つ売るだけで一財産を手に入れることができるでしょうね。

そんな事を思いながらニヤニヤしながらカイルに付いていくと、途中からナニカに気が付いた様子。一体何が気になったのかしら?



「リディア、魔石が大量にあるが、その隣に無造作に更に積み上げられている品質のいいクリスタルたちは……」

「よく気が付きましたわね。あれは紛れもなく各魔石を研磨して作りだしたクリスタルたちですわよ」

「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。魔石を研磨してクリスタルってどういう事なんだ?」



この世界には、一般的に知られている魔石。

魔石はあらゆる場所で使われていて、火、水、風、土、雷、氷、闇、光の魔石が存在する。

無論希少な闇や光の魔石は他の魔石よりは値段は高いですわね。

けれど、ロストテクノロジーを使えば、それらの魔石を研磨して各種のクリスタルを作ることが可能になる。

わたくしが何かを作る際、このクリスタルが全ての基盤となるのですけれど、このクリスタルと言うのがまたお高いんですの。

販売しているのは教会の一部と、ロストテクノロジー持ちを雇っている商業ギルドだけではないかしら。



「魔石を使うよりも安全に、尚且つ安定してモノを作れますのよ?」

「それは知っている。とても研磨が難しいと聞いたことがある」

「そうですわね、慣れるまでは魔石を何度割ったか分かりませんわ」



無駄になった魔石の数は忘れましたわね……。

それでもコツコツまだ公爵家に居る時に魔石を貰っては研磨していたのだから、公爵家のお金には感謝していますわ。



「今は割る事の方が少ないですわよ。それに気分が良い時に作り溜めしたり、考え事をしている時に黙々と研磨しておけば、いざという時に足りないという事もありませんでしたし」

「商業ギルドで店を開きたいと言った時、何を売るのか決めているのか?」

「そこは魔法の言葉がありますでしょう? 『箱庭師の箱庭から出たアイテムと箱庭師が作るアイテムを少し売るだけだ』と言えば問題なくて?」

「確かに」



それだけ箱庭師と言うのはハズレスキルと思われている。

それを今回は逆手に取りますわ。

まさか箱庭師がロストテクノロジー持ちとは思いませんものね。



「それに、此れだけの大金があれば商業ギルドとしては笑顔で許可を出してくれると思いますわよ?」

「確かに笑顔で家付きの店を教えてくれそうだな」

「後は店を買う方がいいか、借りた方がいいかですけれど」

「店は借りた方がいいだろう。面倒な出来事ができた際には直ぐに切ることができる」

「それもそうですわね」

「値段にもよるが、此れから二人で商業ギルドにいくか?」

「一度わたくし追い出されましたから、カイルが店の手続きをお願いしたいですわ」

「わかった。出来るだけの手伝いはしよう」

「助かりますわ! でもその前にやる事がありましてよ?」



そう言うと自分で作ったアイテムボックスである鞄から一つの小瓶を取り出すと、カイルに手渡した。



「先に解呪薬の弱いのを飲んで、見た目だけでも魔付きを消しておきましょう。それと、お風呂も長い事入ってないのではなくて? 着替えがあるのなら温泉にどうぞ。覗いたりは致しませんわ。嫁入り前ですもの」

「助かる」

「温泉から出て着替えたら奥の部屋に来て頂ければ結構ですわ。わたくしそこで作業してますから」

「君のように魔付きに優しい女性を見たことは無い。本当にありがとう」

「これからは守って頂かねばならないのですから、おあいこでしてよ?」



本当に人の良いカイル!

心配になってしまいますわ!!

こうしてカイルが先に解呪薬の弱いのを飲んだのを確認し、少しワクワクしながら部屋で待ち、カイルがお風呂から上がり着替えを済ませたうえで、改めてわたくし達は商業ギルド近くに箱庭を移動させると、同じように裏路地から出て商業ギルドに入りましたの。



さてさて、どうなりますかしら?






=========

引き籠りだけどやりたいことは沢山!


此処まで読んで頂き有難うございます。

新連載です!書き溜め沢山!(/・ω・)/

商売系は初めてなので、生暖かく見守って頂けると幸いです。

夕方に@1更新予定ですので

☆や♡等の応援よろしくお願いしますm(__)m

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