第22話 駄肉女神、やっと子供の園へ向かう。

それから数日後――。

太陽神殿にいる医師からも問題なしと言う太鼓判を貰い、やっと戻ってきた子供の園!!

長時間は居られないけど、懐かしい子供の園へエルグランド様とタイリス、エルナと共に入ると、子供の神が元気そうに、下っ端豊穣の女神の手が付けられない程に暴れていた。


スウッと息を飲んでから――。



「はーい! 皆お片付けしなさ―――い!!」



よく通る声で叫びつつ手をパンパンパンとリズムよく叩くと、子供達はバッと私の方を見た。

懐かしい面々だわ。



「あ! 駄肉先生!!」

「駄肉だ――!!」

「はいはい、皆大好き駄肉先生ですよ」

「何時戻ってきたの!?」

「今日から一緒に住める?」

「はいはい、お話はお片付けのあと! じゃないと先生何も話しませーん!」



そう言うと子供達は一斉にお片付けを始めた。

古参の下っ端女神を舐めて貰っては困る。呆然とする豊穣の女神たちを他所に、お片付けを始めた子供達は片付けが終わると私の元へと戻ってきた。



「駄肉先生綺麗な服着てるー!」

「なんでー?」

「はい、皆さん注目してくださーい!」

「「「「「はあああい!」」」」」

「此方にいらっしゃるのは、最高位の太陽神エルグランド様です! 皆さん上手にご挨拶出来るかなー?」

「「「「ようこそおいでくさいました!!」」」」」

「うむ、元気があるようで何よりだ。流石我が妻は子供の扱いに長けている」

「それほどでも」

「駄肉先生、えるぐらんど様と結婚したの?」

「下っ端なのに?」

「先生急に攫われたって皆騒いでたよ?」

「はい、では一つずつ話します! まず、急に先生がいなくなったのは、エルグランド様が私を迎えに来たからです。奥さんになる為にお迎えに来たんですよ」

「「「「えるぐらんど様の奥さん――?」」」」

「駄肉なのにー?」

「その通り、俺はフィフィ以外を妻に持つ気が無くてな。必死に必死に修行して、やっとフィフィを妻にすることが出来たんだ。皆がフィフィを駄肉と言うが、俺にしてみれば触り心地の良い最高の肌だと思っている!」

「えるぐらど様エッチね」

「エッチだね」

「うむ! 俺はエッチだ!」



エルグランド様、開き直ってますね。

でもそっちの方が子供達にはウケが言いようで、男の子の神なんてニヤニヤしてる。

まぁ、少し年のいった男の子の神って、何かとエッチな子も多いけどね!



「余りにも早く妻にしたくて持ち帰ってしまったことは謝ろう。だがフィフィはこの最高位の太陽神エルグランドの唯一の妻になったのは間違いない事実だ」

「駄肉が幸せならいいけどよぅ」

「なぁ……」

「あらあらあら? 私のことが大好きだったのかしら?」

「ちがうやい!」

「駄肉が居なくなってから新しい女神たち来たけど、全然纏まらなかったんだもん!」

「ちからぶそくよ!」

「あら? だったら皆が教えていってあげれば良いじゃない? 先生だって最初は分からないことだらけだったけど、あなた達の先輩たちが色々教えてくれたわ」

「わたしたちがおしえてもいいの?」

「そうよ? あなた達は子供であると同時に先生なの。きっと素晴らしい先生になってくれると思うわ! でも、新しい女神さんたちをイジメないでね?」

「「「「はーい」」」」

「先生は僅かな時間をエルグランド様に我儘を言って連れてきて貰ったの。あまり長い時間一緒に過ごせないけれど、皆の元気な顔を見れてホッとしました!」

「駄肉先生戻ってこない?」

「うん、エルグランド様が離してくれないの」

「ケチね」

「うん、ケチね」

「でも、幸せならいいわよ?」

「ありがとう! 小さな先生達!」

「「「ふふふ!」」」



子供達は皆可愛い。

個性豊かでこれほど『十人十色』と言う言葉が似あう場所もないくらい。

毎日が刺激に溢れていて、毎日が楽しかった!

乳児から預かり、寝返りが出来るようになり、うつ伏せができるようになり……ハイハイをし始めていつの間にか高速ハイハイを取得し、一人で立とうとする姿は、余りにも愛おしくてたまらない。

気が付けば歩いていて、走り出して、あっという間に大きくなってしまうのよね……。

そんな胸の張り裂けそうな思い出を胸に――私は!!



「先生は、改めて今日此処から卒業します。皆さんもここを卒業したら、色々な事があるでしょう。いつか大きくなったら、エルグランド様の太陽神殿に配属される日も来るかもしれない。その時は先生の事を色々手伝ってね」

「「「「「はい!!!」」」」」」

「若い先生達にも優しくしてね。あなた達なら出来ると信じてます」

「「「「はい!!」」」」

「最後に、皆さんが健やかに育ちつつ、お友達を大事にして、怪我無く過ごせることを祈っています。先生は此処を卒業してお嫁にもう行っているけれど、エルグランド様の妻としての仕事を頑張ります。応援していてね?」

「えるぐらんど!!!」

「こら、様をつけなさい様を!」

「いや、いい。なんだ小僧」

「フィフィをなかせたら、おれがさらいにいくからな!!!」



あらあらまあまあ!

年中のフレデリアスが宣戦布告だわ!!

確かあの子も太陽神よね。



「良いだろう。だが子供のお前では迎えに来ることも出来まい。俺の許にきたければ死ぬほど修行しろ。そして貴様の目の前で如何にフィフィが俺に愛されているか見せてやろう」

「のぞむところだ!!」

「待っているぞ! フレデリアス!」



なんか、太陽神同士の火花が散っているのが見えるわ。

太陽光線? 太陽光線なの? あぶねぇ、近寄ると焼かれる奴だわ。


こうして、私たちはその後書類に埋まりに埋まったファーリシア様にご挨拶し、「卒業おめでとう」と改めて言って貰えたことで、私は心に蟠りなく太陽神殿に戻ることが出来た。

卒業か……私卒業してきたんだな。

長年勤めたあの子供の園から、改めて今日からこのエルグランド様の太陽神殿で妻としての日常が始まるんだな。

――感慨深い。



「さてフィフィ、無事に卒業して俺の許に永久就職したんだ。子作りの覚悟は出来たか?」

「それはまだできませんね。何しろ恋をしてませんから」

「むう……俺ほどいい男は居ないだろう? 早く俺のものになってくれないと、俺が持たない」

「トイレで泣くんですね?」

「その通りだ」

「ではエルグランド先生? 私に恋を教えてくださいな」

「ほう?」

「何しろ姉妹だらけの場所で育った上に豊穣の女神の神殿は男性が殆どいなかったんですよ。父は引き籠って出てきませんし。直ぐに子供の園に行ったので恋愛と言うのもしたことが無くって」

「では、フィフィ専用の先生として色々と教えていく事にしよう。恋が愛に変わる瞬間を見るのもまた一興だ」

「お手柔らかにお願いしますねー」



こうして私たちは先生と生徒、夫と妻と言う二つを併せ持ちながら――新婚生活を再スタートさせた。

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