第17話 最高位太陽神様に月の神がお怒りだそうで。

まぁ――大量の女神たちへの神格堕としは問題にはなった。

各上位の神々が訪れてはエルグランド様に異議申し立てをしていたけれど、彼等は事情を聴くとアッサリ帰っていった。



『貴様たちは妻を目の前で侮辱されても笑顔でいられるのか?』



この一言で皆さん帰っていく。

神様って奥さん想いの人たちが多いから、神格を堕とされた女神たちを庇おうと言う気も失せたのかもしれない。

しかし、唯一その言葉を聞かない神様がいた。

それが、現在目の前で繰り広げられている。



「エルグランド、お前は少々妻に依存し過ぎではないのか?」

「ファシス、君の寝言は聞きたくないのだが?」

「そもそも最高位の太陽神が妻を一人しか持たぬと言うのがだな」

「俺の唯一がフィフィだけだと言う事だ。口を挟むべき問題ではないと思うが?」

「だとしてもだ。お飾りの側妃くらい持ったらどうだ?」

「お前の耳は腐っているのか」

「なんだと?」



これである。

ファシス様と言うのは月の神で、エルグランド様とは犬猿の仲だとか。

それを聞き流しながら仕事をしていると、ファシス様は大きく溜息を吐いた。



「下っ端の豊穣の女神を娶るのが悪いとは言わんさ。だが他の神々に示しが付かぬだろう」

「新婚相手に文句を言ってくる輩の言葉など聞きたくはないモノだな」

「新婚とは言っても、お前が子供の園から攫ったと言う話だが?」

「それは間違っていない」

「お互いの同意ではなかったのではないか?」

「惚れさせて見せるから安心しろ」

「もう子作りくらいは始めているんだろうな?」

「プライベートな部分だ。お前に教える義理は無い」



この押し問答である。

ファシス様もこっちの仕事がある程度無いからと居座っているが……お前の所の仕事はどうなんだと少し思ってしまった。



「まぁ、仕事は出来る女神のようだな」

「ああ、とても助かっているし常に一緒にいられる幸福感はたまらんな!」

「毒気が抜かれる。俺は帰る」



そう言うとファシス様は帰っていった。

勝敗はエルグランド様に上がった様だ。

まぁ、惚気なんて聞きたくねぇってのがファシス様の言い分かもしれないけれど。

結果として、他の神々もエルグランド様の唯一の妻を蔑ろにした女神たちならば仕方ないと言う結果に収まった様だけれど、その後の下っ端女神たちがどうしているかは知らない。

仕事にありついてればいいが、最悪死んでいる場合も想定できる。

プライドが高いが故に、安月給な所で働こうとはしなだろうしね。

子供の園なら万年先生不足だから雇ってくれそうだけど、無理だろうな。

プライドだけで食べて行けるような世界じゃないしね。ここも下界も。


それにしても、陰ながらアレコレ動きつつ私を守る為に動いていたとは、エルグランド様は以外と愛妻家かもしれない。

そこは好感持てるところだ。

一緒に寝てるときも手を伸ばしたくらいで他は無かったし。

意外と紳士的なのかもしれない。

燃え尽きてたけど。


そう思うと、男神のアレヤコレを考えると――我慢強いのかもしれない。

まぁ、一日でそれを決める訳にはいかないので、今後も様子を見守るしかないけれど。



「そう言えばフィフィ様? エルグランドと一日同じベッドで寝て、何か変化はありましたか?」

「神脈詰まりのこと?」

「ええ」

「うーん、一日じゃ効果がでないのかな? でも少しだけスッキリはしてるような気がします」

「滞っていたものが流れようとしているのかも知れませんね」

「長年詰まっていたとしたら頑固かも……」

「そこを押し流すのが、最高位の太陽神様ですから大丈夫ですよ」

「そうでしょうか?」

「俺に任せておけ、神脈詰まりを綺麗に流して、ちゃんと神格があがるようにしてやる」

「そう言って頂けると助かります」

「そうそう、その神脈詰まりだけど、お風呂でマッサージしてもらうだけでも大分違うらしいよ」

「そうなんですか?」

「詰まりが取れやすくなるらしい」

「それは良い事を聞いたな。今日からは一人で風呂に入らず、女神たちに解して貰うと良い」

「そんな恐れ多い」

「して貰え。命令だ」



初めて命令って言いましたよこの太陽神。

まぁ、命令なら従うしかないね。

上司の命令は絶対だし。

しかし……本当にリンパ詰まりみたいなものか?

それだと確かにマッサージしてもらった方が詰まりは取れるけれども……頑固そうだなぁ。痛くないと良いけど。

子供達に構って自分の事なんて後回しにしていたから、そのツケが来たのかもしれない。



「治るのに時間は掛かりそうですけど、頑張ります」

「そうね、まずは頑張ってみましょう」

「命に係わる病気じゃなくて良かったって思うだけでも違うさ」

「それもそうね」



こうして夜、お風呂に入る時は女神たちに念入りにマッサージを貰うようになり、少しだけ身体が細くなったような気がする。

マッサージって大事なんだなー。まぁ下っ端の豊穣の女神にとっては贅沢以外の何物でもないんだけど。

綺麗になりたくて向上心を向ける豊穣の女神が多いんだと思ってたけど、もしかしたら神脈詰まりを予防する為だったのかもしれない。

けど、私は子供の世話が好きだからどうしても園から離れたくなかったんだよね。

あぁ……子供の世話か。

またしたいな。

したくても我が子の世話になるぞって脅しを掛けられるのが分かっているから言えないけど。

無垢な赤子は可愛いし、色々手が掛かるけどやっぱり可愛いし、なんでこう幼い子供って存在だけであんなに可愛いんだろうね!!

ヤンチャ盛りになると目も離せないくらい凄いけど、そのヤンチャもまた可愛いんだよね。



「はぁ……」

「どうした?」

「子供に会いたい」

「神格があがれば、俺達の子供が沢山できるさ」

「いや、それも大事でしょけどそうでもなく」

「フィフィには50人程子供を産んで貰わないといけないからな」

「……え?」

「最高位の太陽神ともなれば、最低50人は欲しい所だと、他の神々から言われた」

「あ――……それ、私一人で産める人数じゃないですよ?」

「分かっているが、それ位産んで欲しいということだ」



妊娠して出産してはまた妊娠して、延々と繰り返さないとダメじゃないか!!!

幾ら豊穣の女神は子を産みやすいとはいえ、流石に無理なレベル!!!



「流石に身体を壊しますよ?」

「分かっている。言いたい奴には言わせておけ。俺はフィフィが居なくなったら生きていけないからそこまで望んでない」



そもそも手を繋いだだけで興奮して私の手を焼くから無理だしな!!

子作りとて何時丸焼けにされるかと思うと恐怖しかないんだが。



「今は神脈詰まりを取る事を考えよう。それから神格上げ、その後の話だ」

「良かったです」



――随分先になりそうで。

そう言いたいのをグッと堪えていうと、その後も仕事をして終わる頃には良い感じにお腹が空いていたのでエルナさんからお水を貰い、満腹になって暫くすると多数の女神たちが部屋に押し寄せ、朝の仕事前に全身をくまなくマッサージされたのは言うまでもない。




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金曜日から新連載と言う事で、こちらはペースを上げております!

2話ずつにしようかなとも思ったんですけどね。

取り敢えず、うん、早めに終わらせようかなと。


楽しんで頂けていたら幸いです!

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