第16話 駄肉女神、呑気に他の女神たちの行く末を見守る。

「フィフィ様お助け下さい!!」

「エルグランド様にあわせてください! アンタの所為でしょ!!」

「アタシたちにこんなことして許されるとでも思ってんの!?」

「んん??」



通路を歩いていると、前に辞めていった太陽神の女神たちが押し寄せていた。

何故辞めさせたのか理由も知らないのだけれど、太陽神の女神たちは挙って私の事を悪く言う。

どういうこっちゃ?



「アンタよ!! アンタがエルグランド様の妻になんてなるからこうなるのよ!!」

「身分相応って言葉をご存じ? 貴女では不釣り合いよ!?」

「お陰で私たちは辞めさせられた上に、次の仕事の斡旋もないのよ!!」

「どうしてくれるのよ!!」



そう喚いていらっしゃる。

私はタイリスとエルナを見ると、二人は頭を抱えて溜息を吐いている所だ。

つまりは――アレか?

私がこの太陽神殿にいるから辞めさせられたってことで合ってる?

嗚呼、最下位の下っ端豊穣の女神が最高位の太陽神の妻ってだけでスキャンダルではあるけれど、私は何も関わってないけど、物理的には関わっていることになるのかしら?



「何か言ったらどうなのよ!!」

「アンタの所為で! この疫病神!!」

「何を騒いでいる?」

「「「「!」」」」



怒りを含んだ声が聞こえ、後ろを振り返るとエルグランド様が無表情で立っていた。

おおう、こちらも何やら怒ってらっしゃる。



「タイリス、エルナ。フィフィにこ奴らは何と言った?」

「アンタの所為で仕事を辞めさせられたとか」

「疫病神とか」

「身分相応をご存じ? 貴女では不釣り合いよ等など仰っておりましたわ」

「ほう?」



チリリ……と髪が燃えそうな感覚がして、二人が防御魔法を展開したのが分かった。

エルグランド様は一歩、また一歩とこちらに近づき、私の横に立つと怯えて跪いている彼女たちを見下ろしている。

一体何があったと言うのだろうか??

職を辞さないといけないような悪い事でもしたのかな?



「門兵は何をしている」

「申し訳ありません! こ奴ら門を突破してきまして!」

「今も交戦中です!」

「そうか、全員捕らえたのち、それぞれに処罰を与える。追い出すだけでは足りなかったようだ」

「処罰?」

「神格を堕とす。最下位まで落とせば自分たちの仕出かした事も理解出来よう。最下位の神格では雇われる場所なんて限られているからな」

「おおお……お待ちください!!」

「神格を堕とすなんてあんまりです!!」

「俺の唯一、フィフィに対して暴言を吐いたのだろう? 命を奪う事も視野に入れたが?」

「ヒッ」

「何度も下っ端下っ端と騒ぐのなら、お前たちも下っ端からやり直してみると言い。仕事先の斡旋は一切しないが、どうなるのか見ものだな」



下っ端女神こそ仕事の斡旋がないと何処にもいけませんよ?

私だって人員が足りないって言う子供の園を何とか見つけて仕事に喰らいついた身ですから。そもそも上位の神に神格を堕とされたら不味いんじゃなかったっけ?



「エルグランド様、記憶違いでなければ、上位の神に神格を堕とされた場合、許しが無ければずっと下っ端のままですよね? 神格が確か上がらなかったと思うんですが」

「上がらんな」

「じゃあ、この騒いでいる女神たちはずっと下っ端で今後過ごすんですか?」

「俺の許しが無い間はそうなる」

「許してあげる気は、」

「無い」



ですよね――。

しかし、しかしですよ?

これ以上ややこしく成って私に不利益こうむるのは勘弁願いたい。

そう思った矢先――。



「誉れ高き太陽神の女神が、何故この様な目に……っ」

「全部アンタの所為よ! 下っ端の癖に!!」

「私は何もエルグランド様に頼んでませんし、気が付いたら神殿がグローバルになっていただけですが」

「「「「嘘よ!!」」」」

「え――被害妄想高すぎるぅ……」

「太陽神の女神って妄想激しいからね」

「嫌だわ。同じ女神として恥ずかしい」

「そもそも、アンタ達上司の言う事が聞けてないただの我儘の集まりじゃん。それをフィフィの所為にするとか、マジでないんだけど」

「煩い!! 風の女神風情が!」

「ほらね? 人の話も聞かないからトップの話も聞かない。こりゃ最下位決定だね」



なるほど?

プライドが高いが故に人の話を聞けないタイプって奴ですかね?

太陽神の子供は何度か育ててきたことありますけど、皆問題児でしたもんね。

まぁ、エルグランド様は比較的育てやすいほうでしたが。



「そう言えば、子供の園でも太陽神殿の子供って育てにくい事で有名でしたね」

「そうなのか?」

「ええ、無駄にプライドが高いので、下っ端豊穣の女神なんて何人も殺されてますよ? だからファーリシア様の神殿では太陽神の子供は殆ど預からなかったんです。問題行動が多いのと、他の子供達への執拗な嫌がらせも多数見受けられるとの事で、歓迎はされませんね」

「俺もか?」

「エルグランド様は力こそ強かったですが育てやすお子さんだったと思いますよ」

「良かった……」

「じゃあなに? 子供の園ですら嫌われてるのが太陽神の女神たちなわけ?」

「まぁ、率先して育てたくはありませんね。私もですけど」

「ふ……ふざけないでよ!!」

「アタシたちの何が悪いのよ!」

「これですよコレ。正にコレ! アタシたちの何が悪いのーって騒いで癇癪起こすんですよ。言い聞かせても聞かないからファーリシア様が呆れちゃって」

「なるほど、いい例を見させて貰っている気分だ。この際だ、しっかりとその汚らしいプライドをへし折ってやるのがこいつらの為だろう」

「かもしれませんね」



うんうん。

情けは人の為に成らず。

彼女達は神格を堕として反省して貰うしかなさそうです。

嫌だなんだと騒いでも、そんなプライドしかないような人を助ける気は毛頭ないしね。

それから暫くして拘束された女神たちが広場に並べられ、エルグランド様による神格堕としが始まりました。

無論、神官長だったノスタリア様もいらっしゃったので、仲良く皆で下っ端堕ち。

泣き叫ぶ女神様達には悪いけど、ちょっと反省して貰わないとね。

無論、下っ端女神が特例もなしに神殿で働いて良いわけでもない為、皆さん神殿の外に放り出されていた。

彼女達が少しでも反省してくれたらいいんだけど、そうはならないだろうなぁ……。

最後まで私の事を悪く言ってたし。



「何と言うか、アレですね。私が根本の悪みたいな流れでしたね」

「気にする事は無いと思いますよ? 此処で働いている女神たちは太陽神エルグランド様の言葉をシッカリと聞いて、フィフィ様がエルグランド様の唯一であると知っていますから、太陽神の女神たちのように無礼を働きませんし」

「そもそも、アイツら頭のネジぶっとんでんじゃないの? あれでよく仕事できるもんだな」

「頭ぶっ飛んでても雇われるのが上位女神ですからね。女神たちの間で派閥とか色々あるみたいですけど」

「面倒くさいなぁ」

「面倒くさいですねぇ」

「まぁ、御勝手にして頂ければ宜しいのではないでしょうか」

「朝から無駄に力を使ったな。まぁこの集めた神格はゴミ箱にでも捨てようか」

「なんて勿体ない!」

「せめて物置にでも放り込んでおきましょう。何時必要になるか分かりませんし」

「どうですよ、勿体ない」

「む、そうか? そうだな、もしかしたらそのうち役に立つかもしれんからな。物置にでも封印して入れておくか」



大事な女神たちの神格を封印して物置に……。

まぁ、他人の神格を使ってまで神格を上げたいわけでもないので、それでいいじゃないですかって答えておいた。



「さぁさぁ、仕事始めましょう! 無駄に時間を喰ったので早めに仕事を始めて給料欲しいです!」

「ふふふ、そうですね」

「初給料で欲しかった本でも買うかなー」

「良いですね! ナヌーサ様の本がそろそろ新しいのが出るので欲しいです!」



そんな会話をしながら私たちは先に仕事場へと入り、後から入ってきたエルグランド様と共に仕事を片すのであった。

新刊待ち遠しいなぁ!!

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