第14話 最高位太陽神と神殿女神たちはフィフィに気づかれぬように守る。

――エルグランドside――



「酷いです! 私たちないもしてないのに!」

「ちょっとした問題じゃないですか!」

「太陽神の神殿なのに太陽神の女神がいなくなるのは問題だと思います!」

「そうですよ!!」

「エルグランド様がとってもお怒りなのは、あなた方に理由があるからですよ。その理由を再度言わねばわかりませんか?」



そんな声が聞こえてきた。

どうやらタイフリアが件の女神たちに太陽神の神殿を辞めるように言ったようだな。

どれ、どうなるのか聞いてみるとするか。



「だって……たかがだ下っ端豊穣の女神が私たち女神を働かせるなんて、許されない事だもの!」

「そうよ!!」

「そもそもあの下っ端の所為でどれだけの太陽神の女神が神殿から追い出された事か!!」

「追い出したのは理由があってこそです。エルグランド様の唯一の妃に対し、あなた方のしたことは許される事ではありません。もっと厳しい処罰が欲しいのでしたら、エルグランド様より承ってきますが?」

「それは……」

「でも、正直私たちの方が美しくてお役に立つと思います!」

「そうですよ!!」

「最初、エルグランド様は雇い入れる時に聞かれた事を忘れましたか?」

「それは……」

「エルグランド様の目にはフィフィ様しか映ってませんよ? あなた方が入り込む隙などどこにもありません」

「「「「………」」」」」

「それにしても、太陽神の女神とはこんなにも欲深い女神が何故多いのでしょう。他の女神たちは己の役目をキッチリとこなしているというのに、恥ずかしくはないのですか? 私でしたら恥ずかしくて外を歩けませんけど?」



おお、結構手厳しくやるなタイフリア。

だが、それくらいの力が無ければ女神長の仕事は務まらないからな。

しかし太陽神の女神たちはそのような事を想いながら仕事をしていたのか。

やはり当てにはならんな。



「でも次の仕事の斡旋もないなんて酷過ぎます」

「前女神長を含める太陽神の女神たち全員、エルグランド様は次の仕事の斡旋などしておられませんよ」

「「「「え」」」」」

「エルグランド様の唯一を粗末に扱った者たちを、何故斡旋するのです? するだけの価値があるとでも思いますか? 私でしたら思いません」

「「「「………」」」」

「あなた方は判断を誤りました。それはとても恥じるべき事でしょう。その恥じるべきことを理解していないのであれば、結果は同じだったでしょうが。今更心を入れ替えるという言葉を聞いたとしても、不信感の方が強いのです。あなた方に此処での仕事は御座いません」



最後に切込みを入れてから助かる道筋を消すとは。

それでこそ女神長に任命しただけのことはあるな。



「もう二度と太陽神殿、エルグランド様の神殿には戻る事は出来ないでしょうが、どうぞ皆様お元気で」



そう言うと5人は泣きながら走り去り、タイフリアは小さく溜息を吐くとその場を去って行った。

太陽神殿の女神は確かに他所の女神よりは下っ端でも上になるが、それでも臆さず話したタイフリアは素晴らしい女性なのだろう。

フィフィには負けるが、芯のある女性が女神長なのは安心できる。

そんな事を思いつつ俺もフィフィのいる部屋へと戻ると、丁度偶像を夫婦用の部屋、それもフィフィの部屋に運んでいる最中だったようで、楽しそうな会話が聞こえてくる。


フィフィには神殿で生活する間、憂いなく過ごして欲しいからな。

少しでも憂いがありそうならば、度々取り除いていかねばならない。

過保護すぎるかもしれないが、フィフィはとても弱いのだ。

守ってやらねば。

夫しても、太陽神としても。



元々豊穣の女神は、基本的におっとりとした性格が多く、面倒見がいい。また子を沢山産むという理由もあり、神々は妻に添えるのに一人や二人は傍に置く。

俺の妻はフィフィ一人と決めている為、他の女神が入る隙は無い。

だが、それを理解しない輩が多いのも、また問題の一つだ。


フィフィとて、太陽神の『執着』と言うのを理解しているとは思うが、太陽神は何かに執着すると絶対に離れない。

俺の場合はそれがフィフィだったのだ。

幼い頃の己の過ち、そして他の神を傷つけさせない為に盾となったフィフィ。

今も消えぬ額の傷は、俺の残したその決意とも言えるだろう。

嗚呼……フィフィを妻にして良かった。

これまでの神として生きてきた中で、今が最も充実している。

ずっと求めていたフィフィが傍にいるだけで満たされる。

もう誰にも取られることが無いのだ。

子供の園の子等にも、誰にも――。



「フィフィ、性が出るな」

「エルグランド様」

「俺も何か手伝おう」

「今運んでいるもので最後です。素敵な私だけの部屋が出来上がって幸せですよ」

「うむ! 寝室は一緒になるがフィフィだけの部屋があるのは良い事だ。偶像もドンドン集めて貰って構わない。だが、俺の事を蔑ろにしないでくれよ?」

「う……気をつけます」

「是非そうしてくれ」



偶像は所詮偶像だ。

物語の中の者にまで嫉妬していては、フィフィに申し訳ないからな!!

そこまで心の狭い男にはなりたくはない。



「今日から一緒に寝れると思うと胸が逸るな!」

「本当に、燃やさないでくださいよ?」

「善処しよう」

「命にかかわりますので」

「気をつけよう」



フィフィを燃やさぬよう触れる日が来るように、俺もまた成長しなくてはならないな!





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フィフィには徹底して守りの態勢の太陽神と神殿女神たち。

甘いと言えば甘すぎるけれど、これも過保護と言うべきか

溺愛と言うべきか悩みますね!

私の中ではギリ溺愛です。

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