前のエピソード――第141話　VSカイザード

　剣を振り上げたカイザードに対して俺は魔法をつために魔力を放つと目ざとく気づいた彼が加護を使ってくる。

「その咎は沈黙をいざなう」

「誘わねえよ！！　常闇を司りし姫君よ、我にしたがい、その力を振るえ！！」

　アイリスとの会話や、アステシアの加護のおかげか一瞬記憶が飛びそうになるがとっさに膝をつねって正気を保ちそのまま魔法をはなつ。

　俺の影が生命を食らう闇の姫君の手と化しカイザードを襲う。

「ふはははは、随分とおてんばな姫君だな。ダンスにしては荒々し過ぎる」

「魔法を切った！？　魔剣かよ！！」

　まるでダンスでも踊るかのようなステップを踏みながら影を切り裂くカイザードに驚きの声をあげつつもアイギスのもとに駆け付ける。

「大丈夫か？　結構やるな、あいつ」

「ええ……お父様ほどじゃないけど強いわね。今の私じゃ勝てないわ、だけど……」

　剣を拾ったアイギスが苦々しい表情でカイザードを睨みつけた後に、俺に向けてほほ笑む。

「私とヴァイスなら勝てるわ！！　いくわよ」

「ああ！！」

　体制を立て直した俺とアイギスがカイザードに切りかかろうとすると、その体が軽くなっていく。

　これは……優しく暖かい光を感じて振り返るとロザリアを抱えたアステシアを目が合う。

「私のことをわすれていないでしょうね、あなたたちならそんな奴には負けないって信じているわ」

「ああ、当たり前だ！！」

「アステシア任せて！！」

　身体能力の上がった俺とアイギスが左右から同時に切りかかる。ダンスの練習をしていたからか、不思議なくらい息があってそれは連携となる。

　アイギスの一撃をかわした先に放った斬撃をお見舞いしてカイザードの体制をくずし、彼女がそこに追撃をかける。

「ふはははは、妬けるなぁ！！　だが、正義の味方として私は負けるわけにはいかんのだ！！」

「まだそんな軽口をたたくだけの余裕があるっていうの！？」

「まっとうに生きていれば心強い味方になったのにな……」

　先ほどよりは有利にはなった。だがそれだけである。アステシアのかけてくれたバフが解ければ不利になるのはこっちなのだ。

「アイギスサポートを……」

「魔法なんぞ使わせんさ！！」

「ちぃぃぃ！！！」

　距離を置こうとすると即座につめてきやがる。こいつ戦いなれている上に単純に強い！！

　エミレーリオやパンドラのように加護ありきの戦いではなくすの力が高いのだ。それは彼が加護を得る前に必死にどりょくしていたことを証明していた。

「お前は本当に『ハデス』が正義だと思っているのか！？」

「思っているさ！！　大人数が正しいとは限らんのだ！！　咎人の子だと忌み嫌われた私を救い正義の道を示してくれたのはゼウスではない、ハデス様なのだから！！　現にゼウスの加護を得て善良なはずのこいつらは私の加護で苦しんでいるではないか！！」

「それは……」

　どこか狂気すらも感じるカイザードの言葉に俺は何も言い聞かせない。彼はゼウスを信仰する貴族たちの勘違いによって破滅しかけたのだ。

　だが、その言葉にだまっていられない少女がいた。

「何がハデスよ……私はお母さんを病気にして殺そうとしたあいつらを許さないわ！！　そんなことをするやつらが正義というあなたも許さない」

「何を言って……うおおおおお！？」

　カイザードの動きが一瞬緩んだタイミングをみはからったようにアイギスが斬りかかる。

「それだけじゃないわ。私の友人くだらない呪いを与えたのよ」

「ハデス教徒に過激な人間がいるのも事実だ。だが……」

「しないって本当に思っていないわよね？　だって、私には嘘がわかるもの」

　カイザードの言葉にかぶせるようにアイギスが言葉を断ち切る。嘘がわかる彼女の前でごまかしの気持ちもさらされるのだ。

「ゼウスが正しいとは言わないわ。そしてあなたのようにハデスに救われた人間がいるのも認める。だけど、結局はだれが何を信じてどう行動するかは自分の責任よ、お父様が命令を信じて失敗したように、私がヴァイスを信じて今行動しているように！！　だけど、みんな自分の意思で決めて、戦っているの。あなたのように何かに正義になんかでごまかしたりはしないわ！！」

「ならば私は……貴族を信じ己の父を殺した私はなにを信じればよかったというのだ！！」

　守り一片だったカイザードの攻撃が激しくなる。だがその分荒くなっているので俺とアイギスで防ぐことができた。

　そして、俺は視界に端とある人が立ち上がるのを見て勝利を確信する。

「だからって、人を傷つけていい理由にはならないだろ！！　アイギスの誕生日を壊していいわけないだろ！！　それにお前が話すべき人は今後ろにいる」

「なに……？」

　その一言と共に一瞬意識を背後に送るカイザードだったが、ラインハルトさんの瞬間移動にも近い一撃によって、その意識を飛ばす。

　そして、カイザードさえ倒れればあとのハデス教徒は烏合の衆だ。

「アイギス……ヴァイス君……助かったよ。情けない姿をみせたね……我儘をかさねるようで申し訳ないが、彼と少し話をさせてくれないだろうか？」

新連載です。

よろしくお願いします。

巨乳好きの俺が転生したのは貧乳優遇異世界でした〜俺だけ巨乳好きな異世界で、虐げられていた巨乳美少女達を救っていたら求愛されまくるようになった件

https://kakuyomu.jp/works/16818093075826685289