第83話 今の俺には無理です(2)
『今のヒューバートには扱えないだろう』
「はい。無理です」
「そんな! ヒューバート様!」
「使いこなせる気がしない」
いるのか、これを使いこなせる
だいたい左右に十基、背中に十五基、計三十五基ってなに、ヤバい。
そんなに多いの見たことないんですけど。
しかもこれ、通常なら盾の役割もある。
オールドミラーという名前は伊達ではないらしく、ビーム兵器から物理の砲弾も跳ね返す強度。
素材は不明。
なるほど……ギギも言ってたな。
いつ、誰が、なんの目的で、どうやって造ったか誰もわからない。
当時の技術力ですら、オーバーテクノロジーだったギア・フィーネ。
破損しても時間が経つと再生しているとかなんとか。
まあ、ギギ的には『再生してるのは都市伝説ですけどもー』って言ってたけど。
そういう機体のガ○ダム、あったよな。
なお、盾の状態でも先端の砲口からビーム出せるらしい。
ビーム維持すればビームソード。
なるほど……こういう戦い方の機体なのね、サルヴェイション。
や べ え。
戦いの幅がデカすぎる。
オールドミラーの連結を縦長に変えると、長距離ライフルにもなる。
背中と左右のすべてを連結して巨大な盾にすれば、衛星兵器の照射も防衛可能。
円形定間隔にし、電磁波を発生させれば電磁砲としても使用可能で、広範囲を高出力で攻撃もできる。
はい、なるほどね。
町一つを一時間で壊滅?
そんなことできんのかよって、思ってましたけどできますね、こいつ。
エネルギーどっからきてんの?
連射可能って書いてあるよ?
エネルギーどうなってんだお前。
無尽蔵なの?
やばくない?
「うわわわわ、やばい、むり、こわ……」
「ど、どうしたんですか、ヒューバート様」
『今のヒューバートには無理だ』
「だよね!」
「なんで嬉しそうなんですか?」
人は身に余る力を手に入れると恐れが勝るのだよ、レナ。
震えが止まらないんですけど、無理なんですけど、怖すぎなんですけど!
……けど、同時に納得もした。
こんなのが他にもいるのか。
戦争をしていた世界にとって、これほどの兵器は、なるほど、喉から手が出るほど欲しいに決まってる。
自己再生がマジなのだとしたら、壊された分の補修費用も不要ってことじゃん?
金があまりかからない上、最大級の牽制にも、攻撃にもなる。
ヤベェ、怖い。
こんなのの登録者になったら、これが全部思いのままなのだ。
体の震えが止まらない。
そりゃ世界中から狙われる。
核と同じか、それ以上の脅威。
生身の人間一人が、だ。
日常生活もまともに送れる気がしない。
『最初の登録者は毒を投与されて——』
思い通りにならなければ殺せばいいとか、そういう感じだったのかな。
新しい登録者になれば、そっちの方が扱いやすいかもしれないから、って?
そんな危険と隣り合わせで生きていくには、軍の言いなりになるのが一番安全なのかも。
くそ、マジで気持ち悪い!
「……だから貸出し、なのか?」
「ヒューバート様?」
「登録者はどんな目に遭うかわからない。俺は登録者じゃないから……サルヴェイションを自由にはできない。だから?」
俺の身の安全も考えてくれたのだろうか、サルヴェイションの登録者。
「……いい人なんだな」
力の責任をとてもよく理解している人だ。
こんなに心の底から「いい人」っているのか。
誰かを、ここまで、思いやれる。
その上で人を救え、という。
会ったこともない人を、ここまで尊敬したのは初めてだ。
『当機使用は非推奨だ。当機の火力ではやりすぎになるだろう』
「そうね」
どこからどう見てもお前大量破壊兵器だわ。
「とはいえこのままじゃワイバーン相手にジリ貧。ジェラルドに一掃してもらいたいけど、ジェラルドの魔力はさっきの
ここで無理をさせてジェラルドに倒れられるのはまずい。
どうしたものだろう?
「ヒューバート様、それならみんなを手のひらに乗せて、掲げれば届くんじゃありませんか?」
「なるほど、それ面白いな、それでいこう」
レナの提案採用!
ラウトのいるパーティーを呼び出して、
さすがに集団での魔法攻撃に、ワイバーンの群れも被害が増えてきた。
一体、二体と結界の中に落下し始める。
「下の方もかなり討伐が上手くいっているな」
「はい!」
魔力を使い切る生徒も現れ始めた。
けどまぁ、生徒は魔力量を増やすことに繋がるので、使い切ってもらう分には構わない。
中型の晶魔獣が粗方減れば、結界をやや薄くして小型を招き入れ、少しずつ物理で倒していけばいいから。
——そうして約二時間かけて、溜まっていた晶魔獣の群れは完全に討伐。
学生たちだけでなく、数名の魔法騎士も魔力切れを起こしてしまった。
だが、素晴らしい成果だ。
[浮遊]とレナ、サルヴェイションに頼んで結界の外に落ちていた晶魔獣の遺骸は結界内に回収。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます