第82話 今の俺には無理です(1)
南の国境沿い。
結界の外で大型の晶魔獣が集まっている、という情報を受けて来たが、思った以上に多い。
レナが結界を強化するようになってから、小型の晶魔獣もあまり入ってこなくなった。
それほどまでに、レナの結界は強固なのだ。
なので結界の外で中型、小型の晶魔獣がこちらに入りたそうに溜まっている光景にはゾッとした。
「学生たちは二人一組になり、騎士二名、魔法騎士一名、計五名のパーティを結成、討伐を開始してくれ! 結界の外で倒しても[浮遊]魔法で回収するから問題ない!」
「「「おおおおお!」」」
「聖殿騎士団は聖女を守り、マルティア殿は結界を超えて入ってきた晶魔獣により怪我をした者の治癒を頼みます!」
聖殿騎士と聖女マルティアが、それはもう不安そうな顔をしているのが見えた。
晶魔獣があんなにいるとは思わなかったのだろうし、戦うのが怖いと言っているのが顔に全部出てる。
なので要訳すると「なにもするな」と言っておく。
レナの結界が簡単に破られるわけがないので。
結界内から結界の外へ攻撃しても、結界は割れない。
晶魔獣は牙か爪しか攻撃の選択肢がないので、安全に魔法で倒せる。
騎士は護衛だな。
俺はサルヴェイションから全体の状態を見つつ指揮を取りますよ。
見た感じ生徒と騎士団、魔法騎士団のパーティで討伐可能そうだから大丈夫だろ。
大型が出てきたらジェラルドに頼むとして、問題は空。
結界の上を旋回しているワイバーンの群れ。
「ワイバーン、どうしようかな。下の晶魔獣が片付いたら降りてくると思う?」
「いえ、火球を放って結界を攻撃してますから、降りてはこないと思います」
だよねー。
レナも俺と同意見なの、ちょっと嬉しい。
「じゃあ上の方は
『お待ちしておりました!』
なら、先に別の検証をすればいい。
しかし、聖女のような『聖属性』ではなく、乗っている操縦者の魔法属性に染まる特性がある。
「
ランディが叫ぶと、手からポポポポン、と無数の炎球が空へと放たれる。
わぁ、めっちゃ地味!
だがこれ、
ワイバーンもドドドっと当たって悶絶してる。
「…………効果のほどがいまいちわかりにくいですね」
「まあ、
ダメージは悪くないが、やはり二十体近いワイバーンの群れをランディ一人に任せるのは無理そうだな。
でもまあ、地上からでは絶対に届かない魔法も、
ワイバーンの群れがいるのは、結界の外。
でも、倒して落ちてくれば結界の中だ。
結界をツンつくと攻撃して、穴を開けようとしている。
『討伐するか?』
と、俺に聞いてきたのはサルヴェイション。
うーん、と考えてから「いや」と首を横に振った。
理由は聖殿騎士と聖殿の聖女が、本日同行しているから。
「サルヴェイションの戦闘能力も見てみたかったけど、千年前は奪い合いになるほどだったんだろう? そんなら別にこの目で確認するまでもないかな。聖殿のやつらにわざわざ情報をくれてやる必要もないだろうし……」
『了解した。ヒューバートは利口だな』
「あ、ありがとう」
「そうです! ヒューバート様は賢くていらっしゃいますよね!」
「レ、レナさん?」
レナ、たまにランディみたいになるな!?
「サルヴェイションの戦い方は気になるぞ? 背中と腕に持ってる盾で戦うの?」
サルヴェイションの装備らしい装備はなんか黒い盾しかない。
背中と、両手にそれぞれ八メートルぐらいの大きく平らな盾を持っている。
背中に背負ってる盾はもう少しでかいけど。
ギギの話では攻守ともに優れたバランスのギア・フィーネ、ということだったが、ぱっと見防衛の方に優れてるように見える。
『オールドミラーという名称で、群集兵器だ。普段は盾として一つにまとまっているが、個別で操作が可能となっている』
「!」
そう言って兵器の詳細を見せてくれた。
群集兵器ってなによ、と思ったら、盾が十基のドローンのようになるらしい。
それが今は集まって盾の形になっているのだ。
ファンネル!? ファンネルじゃないか!?
ヤ、ヤベー! いきなり最強レアの武器じゃないか!
っていうか! これめちゃくちゃ操作難しいやつじゃありませんっけ!?
空間認識能力と反応速度と動体視力とあとなんかもう色々ないと、使えないやつ!
チートな主人公とか、強化人間じゃないと無理なやつ!
ふぁぁぁあ!?
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