第80話 実動実験(2)
『しかしー、アスメジスア基国の軍人がなーんです
『黙秘する。この時代の人類が登録者に対してどのような対応をとるか未知数なため、当機で保有する登録者情報は開示しない』
「あ、はい」
ギギの問いかけにもサルヴェイションは黙秘を宣言。
まあ、今のを聞くと無理はないというか。
アスメジスア基国、第二軍事主要都市メイゼアは……サルヴェイションとラウトにとって因縁の地って感じなのかな。
……でもアスメジスア基国、第二軍事主要都市メイゼアってアレじゃないっけ?
サルヴェイションの最初の登録者に毒を投与して殺したっていうところじゃない?
そこに所属して軍人やってたって、ラウト大丈夫なのか?
体調的なアレそれ……一年検査と経過観察の結果、記憶障害以外は健康だから大丈夫って言われたけれども……うわ、急に心配になってきた。
「俺はそれでいいと思うよ。ラウトも記憶がないみたいだし。でも、写真で見るより……幼いな?」
「そうですね。精神年齢が後退しているのは知ってますけど……20歳にしてはわたしたちとあまり歳が変わらなさそうというか……」
「だよな?」
レナもそこが気になったらしい。
え? なに?
結晶の中に閉じ込められてる間、若返ったの?
そんなことある?
……それに、ギギの保有する生体データとやらも今のラウトと一致しないらしいし……こりゃマジで若返った説あるぞ?
『えー! 気になりますね気になりますねー! 五号機はどこにあるのでしょうか! 五号機もカッコいいですよー! 一度四号機に破壊されて、再建されてるんですよね! 再建後のデザインは我々には共有されてない貴重データ! デザインだけでも見たい見たい見たい!』
「うるせー……」
『シリーズ全機のデータもまた、この時代の人類が当シリーズに対してどのような対応をとるか未知数なため、当機で保有する登録者情報は開示しない』
「あ、はい。それでいいです」
『ぎゃぁー! ヒューバート様は欲がなさすぎませんかー!?』
「サルヴェイションが協力してくれなくなるよりはマシだろ」
隣でレナが小さく「ふふふ」と笑う。
ギギはちょっとギア・フィーネに関してしつこいというか、知りたがりがすぎるというか……本当にこいつはAIか?
というか、俺は少しラウトのことをこんな形で知ってしまったのがショックというか……申し訳なかったなぁ。
ただ、記憶を取り戻すヒントになればとギギに聞いてみただけだった。
千年前の遺物であるサルヴェイションを見たら、なにか思い出すかも、とか。
でももしかして、ラウトは記憶を取り戻さない方が幸せ、なのかな?
「なあ、サルヴェイションはどう思う? ラウトは記憶を取り戻さない方が幸せなのかな?」
登録者があまり世界でいい扱いを受けてこなかった、っていうのはサルヴェイションの態度を見ればお察しだ。
それならいっそ、なにもかも忘れてラウトには今の時代で幸せになってもらえるようにすればいいのかな?
千年前のことなんて、もう綺麗さっぱり忘れたままで?
『人類の幸福の定義は個体差があるため、当機には回答不能』
「うおおおう……」
ど正論ですね。
「じゃあ本人に聞いてみるのがいいのか。思い出したいかどうかも」
「そうですね」
よし、ひとまずラウトにはあとで聞いてみるとして!
「ジェラルド、郊外に出たら速度測定を行う」
『了解〜』
通信を切り、外へと音声が出るようにサルヴェイションに頼む。
学院の三年、四年生生徒、王国騎士団、魔法騎士団、聖殿騎士団、そして聖女マルティアと無事に合流したので出発する。
「ルオートニス王国第一王子ヒューバート・ルオートニスだ。今日は俺が長年進めていた
外向き音声を遮断。
見下ろすと、聖殿騎士団はみんないい顔して驚いている。
一番真ん中にいるのが聖女マルティア。
俺の浮気相手予定ね。
確かに遠目から見ても可愛いと思うが、レナの方が可愛いなぁ。
騎士団が先頭を切って歩き出すので、聖殿騎士団もうかうかしていられない。
隣に列をなして歩き出す。
「ヒューバート様、素晴らしい出発お言葉でした」
「そ、そう? このあと
「ヒューバート様なら大丈夫です!」
人前で話すの苦手だけど、そうも言ってられないし頑張りまーす。
さて、郊外に出て、あとはだだっ広い荒野だ。
村や町がかなり広大な畑を作っているけれど、そのほとんどが野菜。
去年レナと城下町を視察した時、食糧不足だと言っていたが……この広大な畑を見ると信じられない気持ちの方が大きいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます