第79話 実動実験(1)
聖殿の聖女と、その護衛である聖殿騎士が城下町を囲う外壁門の前に見えた時、城の横にある学院裏——研究塔の横の地面から格納庫が迫り上がってくる。
地面から生えるように現れたその格納庫入り口に、生徒たちはさぞ騒ついたことだろう。
レオナルドは俺が「ここからなら見えるよ」と教えたポイントにいるだろうか?
レオナルドの反応が見られないのが残念。
出てきたのは赤とオレンジを基調とした人型
一号機、
サルヴェイションとリクシマ、サイウンのデータを参考にジェラルドが組み直しを繰り返し、最初に
機体の大きさも、いつの間にか十五メートルと立派な巨大ロボットに落ち着いた。
そして二号機、
こちらはジェラルドとリーンズ先輩、そして俺の遊び心が暴走……ではなく繰り返された試作の結果、新たな形として
狼のような四足獣型である。
こちらはギギみたいな、
その姿形を裏切ることなく、かなりのスピードが出る……と、思われる。
今日初めて外に出したので、地尖は最大速度測定も行う予定。
なお、操縦に関してはどちらもまだまだ「誰でも簡単!」とは言い難い。
千年前の技術でも、AIの補助を得ても、パイロットの知識と技量が必要不可欠だった。
俺たちがほしいのは「誰でも簡単」な魔道具なので、操縦性の落とし込みも課題だ。
特に必要魔力量はかなり省エネ化に成功したが、実際に動かしてみての消費量は未知数。
特に機動性の高い地尖は、ジェラルド以外にはちょっと任せられない。
逆に汎用性を求められる光炎には、ランディが乗っている。
俺もあとで乗せてもらうけど、今のところはサルヴェイションに乗ってレナを安全に送り届けるのが目標。
「お、おいおい、なんだよあれ!」
「あれがヒューバート殿下が長年開発していたという“計画”か! とんでもないもん造ってたんだな!?」
「晶魔獣じゃないのか?」
「いや、ちゃんと目や耳があるぞ。あっちのでかい人形も、遺物みたいに歩いてる……!」
騎士団と後ろからついてくる三年と四年の学生諸君もビビり散らしているな、ククク。
さて、でも俺が反応を見たかったのはラウトなんだよ。
千年前の人類であるラウトは、サルヴェイションを見てなにか思い出したりしてないかな?
あとで聞いてみよう。
それと——。
「ジェラルド、ギギはラウトのことを見てなにか知ってたりしない?」
『今検索してるって〜』
『はいー! 検索完了です! 生体データは一致しませんでしたが、容姿と名前には該当データがありましたはいー』
「は? 容姿と名前には?」
「どういうことでしょうか?」
俺とレナは、ギギが送ってくれたデータのウインドウを覗き込む。
そこに映っていたのは確かにラウトだ。
でも、俺らが知っているラウトより、少し、大人?
十代後半、二十歳前半に見える。
フルネームは——ラウト・セレンテージ。
年齢20歳。
アスメジスア基国、第二軍事主要都市メイゼア所属の、軍人。
「メイゼア……って……」
サルヴェイションが初めて世界に姿を現したのが、アスメジスア基国第二軍事主要都市メイゼア。
そこで町を壊滅させ、多くの軍人、民間人を無差別に大量虐殺した『凄惨の一時間』と呼ばれる悲劇。
ギギとサルヴェイション本人に教わった過去。
その現場じゃないか……?
『はいー、そうです。ラウト・セレンテージはアスメジスア基国の第二軍事主要都市所属の軍人です。多分世界一有名な軍人の一人ですねー、はい。第二軍事主要都市は一号機が破壊し尽くしたあと、再建されているんですけどー、そのメイゼア所属の軍人が、のちにギア・フィーネ五号機の登録者になったんで超有名人なんですよー』
「は? は!? ラウトって登録者なのか!?」
『生体データ以外は一致していますねー、はいー』
ギギ曰く、当時世界で一般人も名前を知っている軍人は五人いた。
中でも登録者の軍人はそのうち二人。
前にギギが言っていた、
もう一人がアスメジスア基国第二軍事軍事主要都市メイゼア所属の軍人——ギア・フィーネ五号機の登録者ラウト・セレンテージ。
ちなみに
世界中が登録者とギア・フィーネを奪い合っていた時代、敵国の登録者とギア・フィーネは鹵獲対象だったという。
末端の研究施設にも名前やデータは共有され、些細な情報も必ず上に提出するように義務づけられていた。
……げろ…………。
なんか久しぶりに吐き気を催す。
鹵獲して、どうする気だったの?
ミシアって、アレでしょ?
登録者を薬漬けにして依存症みたいにして、ギギのところで治療薬研究してたんでしょ?
そんなところが捕まえて、利用しようとしてたって、あんたそりゃもうフラグじゃん……。
戦争気持ち悪すぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます