第40話 国境の出会い(2)
『GIEEEEEEEEEE!』
——デカい……!
しかも飛んでる。
「殿下! お下がりください!」
「っ!」
「ここは騎士団にお任せを! 君たちも早く下がるんだ!」
「きゃあああ!」
「わあああぁぁ!」
現場は大混乱だ。
レナも騎士に寄り添われてこちらへ戻ってくる。
魔法騎士が魔法で防御壁を張り、ワイバーンの火炎ブレスを防ぐ。
しかし、頭上を奪われたアドバンテージはデカい。
剣を持つ騎士たちが、なにもできないのだ。
「ジェラルド!」
「はぁい」
こんな大物と出会す予定はなかったし、討伐は三年生——15歳以降の予定だったがそんなこと言ってる場合じゃない。
戦えないレナや平民もいるのに、戦う術のある俺とジェラルドがびびって後ろに下がったてどうするよ?
めちゃくちゃ怖いけど、めちゃくちゃ怖いけど!
でも、この間の……レナの涙より怖いとは思わない。
レナが悲しくて泣く方が、俺はよっぽど怖かった。
だから!
「闇よ、盾となり我が民を守れ! [ブラックドーム]!」
闇魔法は攻守に優れたサポート魔法。
杖をかざし、魔法陣を描く。
騎士たちの頭上を飛び回っていたワイバーンを、ジェラルドが拳銃の杖で足止めした瞬間を狙い、巨大な薄暗い球体の中へと閉じ込める。
ククク、ただの黒っぽい球体と思うことなかれ!
「今だ! こちらの魔法攻撃は貫通する! 翼を狙い、地面に叩き落としてたたみかけるぞ!」
「おお! ありがたい!」
「これが闇魔法! すごい!」
魔法騎士たちが風魔法と火魔法でワイバーンの翼を攻撃する。
狭い球体の中では避けられず、ワイバーンの翼には穴が空いた。
しかし、改めて見ても晶魔獣は不気味で気持ち悪ぃな。
耳がどこにあるかわからない魔物だから、口だけでギャアギャアと叫んでいる。
翼も一見すれば硬そうな結晶。
魔法を受けても、かすり傷がいくつかつくのみ。
まずい、そろそろ[ブラックドーム]の効果が切れそうなのに、思ったほどダメージが通ったない……!
「大きな素材……ぼくらのものにしてもいいよね」
「ん?」
「[ライジングビーム]」
ビー、とそれなりに高めの効果音と光の線が俺の頭上を光速で通り過ぎる。
[ブラックドーム]に閉じ込められていたワイバーンの頭を直撃したその攻撃は、ジェラルドの雷魔法。
恐る恐る振り返ると、拳銃型の杖の周りには見たことのない魔法陣が複数連結して展開していた。
ジェラルドのオリジナル魔法か。
見ればいつも魔力量制御のために着けている腕輪も、片手を取り外している。
リミッター解除ってやつだ。
いや、マジ、チート。
『GIYEEEEEEEEE!?』
ワイバーン、吹っ飛んだ。
が、しかし、なんということだろう。
落下してさらに吹っ飛び続け、ワイバーンが
「うわあーーーー! もったいねぇえええ!」
「うんぁー! 威力出しすぎたぁー!」
ジェラルドはチートだけど、攻撃魔法は使い慣れていない。
自分でもこんなに威力があると思ったなかったんだろう。
こ〜〜〜のドジっ子さんめ〜〜〜〜!
「ヒューバート様、ジェラルドさん、大丈夫ですか!」
「レナ〜、素材が! デカめの
「えぇ、気にされてるのそこですか……? ご、ご無事でなによりです……?」
膝から崩れ落ちたよね。
「……。わたし、取ってきましょうか?」
「へ?」
「あのワイバーン。ジェラルドさんに[浮遊]の魔法をかけてもらえば、結晶化耐性があるので大丈夫だと思うんです」
「え!」
そ、そういえば……!
聖女には結晶化耐性が備わっていて、
『救国聖女は〜』でも、国外追放されたレナはこの耐性のおかげで生き延びるのだ。
「い、いや、でも、でも、レナ、
「はい。でも先輩聖女の皆さんも平気だとおっしゃっていましたし……魔法で軽くしてもらえれば、わたしでも引っ張って来れると思うので……」
「でも、レナになにかあったら……!」
「大丈夫です! ……わたしは、王家の——いえ、ヒューバート様の、聖女なので!」
「っ!」
ギュン、ってきた。
え? 死?
心臓が、狙い打たれた?
は、破裂?
「レナ……」
「見ていてください、ヒューバート様。わたし、ヒューバート様のお役に立ちますから」
「レナ……!」
天使?
この世に舞い降りた、天使なの?
いや、正しくレナは救国の聖女……俺の、女神!
「聖女です!」
「あれ」
また全部口に出ていた、だと。
レナに訂正されてしまった。
……でも、俺の、レナは、俺の聖女、かぁ。
うっわ、すっごい威力の言葉だなぁ!?
い、いいのかな、そんな!
この国で一番素晴らしい聖女が、俺の、なんてー!
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