第48話

 前線に立つ二人、ベネットとヨークが盾を打ち鳴らして、ゴブリンを引き連れてきたマロンへのヘイトを奪う。

 ゴブリン達が辿り着く前にフィルの矢とシズカの妖術がゴブリンファイターを襲い、数を減らす。

 先頭のゴブリンがベネットとヨークに棍棒を振りかぶる頃には、更に二匹のゴブリンが地に伏せた。

 

 「連携訓練だってのに戦う前にあんまり減らされても困るんだがな」


 レオが眉をしかめながら苦言を呈す。


 「あ、ごめん。いつもの癖で」


 フィルは謝るが、それでもまだ十一匹いるのだと気を抜かずに戦況を眺める。

 残った四匹のゴブリンファイターはベネットに殺到している。

 ヨークは後衛のゴブリンに魔法を放ってけん制していた。

 流石に四匹の攻撃を捌くのは大変なようでベネットが押され気味なのを見たマロンが援護に向かった。

 その時、フィルの背後から風切り音が聞こえると同時にフィルの頬に痛みが走る。


 「な、なんだ?」


 フィルが振り返るとそこにいたのはゴブリンの一団。

 先程の風切り音はゴブリンアーチャーの放った矢だったようだ。

 フィルの頬から血が流れる。


 「挟み撃ちだ!」


 「面白くなってきたな」


 フィルが叫んだときにはレオや後衛の残り二人も気付いていたようだ。

 レオはニヤリと笑みを浮かべている。

 

 「どうするのじゃ?」


 「僕ら三人で後ろのはやろう。レオ、前のゴブリンは任せたよ」


 「あいよ」


 フィルは単独でゴブリン五匹を討伐した経験がある。

 今回は相手に不意打ちをされた形だが、シズカがいれば大丈夫だろうと踏んだのだ。

 フィルはエリスを庇うように前に出るが、逆にエリスに肩を掴まれて後ろに引き戻されてしまう。


 「あたしもやるわ」


 エリスはメイスを取り出しながら前に出る。

 模擬戦でエリスの実力は知っているし、それとほぼ同等だったフィルが危険だからなどとは言えない。あんたに出来てあたしが出来ないとでも思っているのかと言われて終わりだろう。


 「わかったよ」


 フィルはそう言って弓を構える。

 狙うのはゴブリンファイターだ。

 一匹にしてしまえばエリスも一体一で余裕を持って戦えるだろう。

 フィルが矢を放つ。矢は狙い通りにゴブリンファイターの胸に突き刺さる。

 それと同時にシズカも妖術を放って後方のゴブリンメイジを倒した。


 「誰も怪我しなくて暇だったのよね」


 エリスがメイス片手にゴブリンファイターへと駆ける。

 ゴブリンファイターが涎を垂らしながらエリスに掴みかかろうと両手を前に突き出した。

 剣を振っていたら結果も変わったのだろう。

 エリスは前屈みになったゴブリンファイターの頭部へとメイスを振り落とす。

 グシャっという鈍い音を上げた後、頭部が陥没したゴブリンファイターは倒せ伏す。

 エリスがゴブリンファイターを倒した時には、フィルとシズカが残りのゴブリンアーチャーを倒していた。

 

 「あとは前のだね」


 フィルはそう言いながら感動していた。

 ゴブリン五匹をあっという間に倒したからだ。

 ゴブリン五匹を一人で倒したことあるフィルだからこそこんなに早くに倒せたことにパーティーの力というものを感じたのだろう。

 フィルは、振り返って前方を見ると、ゴブリンファイター四匹は既にベネットとマロンに倒されていて、後衛のゴブリンも今まさにレオに最後のゴブリンメイジが首を斬られているところだった。

 ヨークも後衛のいた辺りに立っていることから後衛のゴブリンを相手取っていたのだろう。

 レオとヨークが拳同士をコツンと突き合わせながら戻ってくる。

 

 「お疲れ様」


 このパーティーならどこまででもいける。

 フィルは、頬の怪我をエリスに癒してもらいながら確かな手応えを感じていた。




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2章完結です。

明日は2章までの登場人物を掲載予定です。

3章執筆中のため少しの間休載致します。

 

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