第47話
ゴブリンの洞窟第二階層。
そこでは七人の探索者が戦闘を繰り広げていた。
ここで同時に現れるゴブリンの最大数は五匹だ。
しかし、現在このパーティーが戦っているゴブリンの数は十匹。
つまり、わざわざ別のゴブリンの一団を引っ張ってきて同時に相手取っているというわけだ。
「ヨーク! 後衛のゴブリンの注意を引いてくれ」
「了解だ。ファイアアロー!」
ベネットが盾を叩いてゴブリンの注意を引き(盾を叩かなくてもゴブリンは寄ってくるだろうが)後衛のゴブリンアーチャーに向かってヨークが炎の矢の魔法で注意を引く。
「ふっ」
「狐火」
魔法の準備に入ったゴブリンメイジにフィルの放つ矢とシズカの妖術が的確にその命を絶つ。
ベネットが鳴らす盾の音よりもエリスの容姿により一層欲望を刺激されて向かおうとする二匹のゴブリンファイターをレオとマロンがそれぞれ一匹ずつ首を狩って倒す。
二匹のゴブリンファイターを受け持ったベネットは、相手の攻撃の合間に繰り出した綺麗な剣筋の一撃で一匹を倒すと、先に一匹のゴブリンファイターを葬っていたマロンが背後からの一撃でもう一匹を倒す。
ヨークがゴブリンアーチャーの弓から放たれた矢を盾で上手く捌ききると、次の矢を番える前に放たれたフィルとシズカの二撃目により二匹のゴブリンアーチャーは命を散らす。
最後に残った二匹のゴブリンアーチャーは、駆け寄ってきていたレオによって一瞬のうちに切り伏せられた。
「なんとか形になってきたか?」
レオが一度刀を振って鞘に納めながら呟く。
フィル達がゴブリンに洞窟に七人で来るのは今日で四回目。
初級探索者への昇級を翌日に控え、パーティーでの連携の最終確認に来ていた。
連携の確認は順調だ。
今だって十匹のゴブリンの集団を苦もなく倒せている。
とはいえ相手は所詮はゴブリンに過ぎない。
この中の誰の攻撃であっても一撃で倒せるような相手ではすぐにでも中級に上がろうとしている自分たちの訓練相手としては不足しているとレオは考えていた。
しかし、ビギナーではここ以上の場所がないのも事実だった。
「もう一団増やすか」
レオは、ゴブリンに抽出を使って素材を取り出しているフィルとそれを興味深そうに見ているヨーク、気持ち悪いのを見たくないと顔を背けている女性陣を見やりながら次なるパーティー強化の算段を練る。
数は力だ。弱いゴブリンでももっと数を集めて戦えば少しはいい訓練になるだろう。
レオが思案していると、精力剤の素材を抽出し終わったフィルを先頭にパーティーメンバーが近寄ってくる。
「レオ、次はどうしよっか」
「そうだな、また数を増やすか」
「ふむ、妾もそれでいいと思うぞ。これではちと張り合いがないのじゃ」
レオとシズカの純アタッカー陣はゴブリンの数を増やしたいようだとフィルは理解を示すように頷く。
「だそうだけど、他のみんなはどう?」
「わたしも問題ない。この小刀もっと降りたい」
マロンは青鋼の小刀で素早く素振りをしながら答える。
先日のクァール戦以来、フィルの持つ小刀をいたく気に入った様子だったので正式にマロンに譲渡したのだ。
「まあいいんじゃないか」
「ここも今日までだし仕上げってことかな」
「あたしも今のところ暇だしいいんじゃない」
全員の同意を得たので更にゴブリンの数を増やして戦うことにした一行は、釣り役のマロンが先行してゴブリン探しに向かうことにした。
「むっ、きたな」
通路の奥からマロンが駆けてくるのが見えたベネットは素早く身構え、迎撃の準備を整える。
やがて現れたのは総勢十五匹に上るゴブリン。
ゴブリンを引き連れたままベネットとヨークの横を走り抜けたマロンは振り返って構える。
そしてフィル達一行は、ゴブリンとの戦闘に突入した。
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