この世界でいきていこう

三文茶筆

第1話

「計算が間違ってますよ」

「お、そうだったかね?」


悪びれもしない行商人の曖昧な返事。文句も言わずにしまおうとしていた金の入った革袋を持つ手が止まったのは分かっていてわざと少なく渡したのだろう。


嘆息をつきそうな内心を抑えてにこやかなまま手を突き出し催促する。


行商人の男はのろのろと差し出した手のひらに小さな銅貨を乗せていく。


俺自身にそれほどの力が無かったとしても、道中にて危険に遭遇しなかったとしても男が金を払う約束で同行を頼んだのだからきちんと貰う物は貰う。


不足分をきちんと受け取ったあと、男に軽くあいさつをして街の中心へと体ごと視線を向ける。


ここはダンジョンを有する街、イエン。


今日から生活をする街。そのまま一歩を踏み出す。街の中心にあると教えられた冒険者組合に向かって。

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