僕の初恋はフィリピンで
カンツェラー
第1話 引越し先はフィリピン!?
高校2年生の春、いつもと変わらぬ夕飯の席で、
父から突然、フィリピン転勤が決まったと言われた。
その1ヶ月後、僕たち黒瀬一家は、GW期間中にフィリピン、
マニラへと家族で引っ越すことになった。
父からは、1年か2年程と言われた。
学校の友達とお別れするのは、寂しくもなかったが、
正直、内心不安を感じながらの転校だった。
そして今僕は、成田国際空港の出発前の待ちエリアのカフェで
母と時間を潰している。
父さんは、空港に到着するやいなやずっと携帯で仕事の話をしている。
「幸来(さき)は、学校の友達とのお別れ寂しかった?」
「んー、そんなでもなかった笑」
「あらそおなの笑」
「やっぱりスタバのキャラメルフラペチーノは、最高だわ」
「ほんと、あんたそればっかりね、スタバに来ると」
「まあ、うまいからね」
父さんが早足で、しかし堂々とこちらの席に向かって来た。
「そろそろ時間だ。行くぞ。」
親父は、せっかちで、短気なところがあるから、こういう時はテキパキ動かないと、あとで面倒臭い。
「はーい。」
やっぱりこの国際空港の雰囲気は、好きだ。家族や親戚が、何かと国際派である為、これまでに何度もここを利用してきたが、このなんとも言えない高揚感。病みつきになる。特に出発前のスタバでのひと時は、人生のささやかな幸せを感じるひと時トップ10に入るだろう。
機内アナウンスが、離陸の時を知らせる。
「いよいよ出発だね。マニラまでは、何時間かかるの?」
「確か5時間くらいだったかしら。」
「それくらいなら時差ぼけとか心配いらなそうだね。」
「そうね。」
大学受験、俺どこになるんだろう。やっぱり、日本の大学だよな。
1年か2年て、受験期間に、、タイミング悪くないか。
まあ、どうにかするか。勉強して暇を潰そう。
「幸来、もうすぐで着陸よ」
「ん、、」
気付いたらぐっすり寝ていた。
そんでもって耳の具合も相変わらず最高に最悪だ。
「仕事の電話を済ませてくる。適当にランチのお店を決めて、先に食べててくれ。」
「そうしますね。」
「到着早々、お仕事の電話とは、父さんも本当に忙しい人だよね」
「そうね。マニラの事業所長を任されてるんだもの。無理もないわよ。」
「おっ、ここのバーガー屋さんなんて美味しそうじゃん」
「そうね、ここにしましょう」
店内には、ちらほら日本人の顔が見えるが、やっぱりもうここは、日本じゃない。フィリピンだ。瞳に映る顔、耳に入る会話がタガログ語や英語。
「ランチの後は、どんな予定なの?」
「まずは、新居へ向かうわ。そこで家具やら何やらを整理するわ。」
「やることいっぱいだね。僕が学校に行くまでの猶予期間は、どれくらいなの?」
「今日は、水曜日だから、4日間よ。来週の月曜日から早速学校が始まるわ。」
「4日間もあれば、十分だね。」
「自分のお部屋の整理がついたら、近くの大型ショッピングモールに遊びに行ってもいいわよ。でも、家全体のあれこれも手伝ってよね笑」
「もちろん、手伝うよ笑」
それにしてもここの、バーガー、美味しい。食は、生活の土台。
うん、フィリピン。気に入ったぞ笑。
「よし、行こうか」
「父さん、お昼ご飯は、いいの?」
「俺か、適当に済ませた。」
「えっ、早笑」
父さんは、いつもこんな感じ。
本当に食べたのか、食べてないけど、適当に言ってるのか、いつもよくわかんない。
空港の外には、お迎えの運転手がいた。
「ようこそ、お待ちしておりました。今後長らく、黒瀬様の運転手役を努めさせて頂きます。ジョセフと申します。」
「お会いできて光栄です。私は、明弘。こちらが妻の直美。こっちが息子の幸来。」
「ジョセフさん、お会いできて光栄です。これからよろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
「はい、それではこちらでお待ちください。これからすぐにお車を回して参ります。」
そう言ってジョセフさんは、車を取りに行った。
「母さん、すごく感じのいい人だね」
「そうね。さすが父さんの専属ドライバーね。私たちの方は、わからないけど笑」
「えっ、どういうこと?また別のドライバーさんがいるの?」
「そうよ、ジョセフさんは、日頃お父さんの通勤の送り迎えを担当。私たちは、家族専用の別の車とドライバーがつくわ」
「なんという、贅沢。日本じゃ、考えられない。まるで別世界にいる様だ」
「そうね、日本じゃまず無理ね」
「お待たせ致しました。」
「うお、はや」
「お家は、どこにあるの?」
「マカティーという日本人が多く住む地区があるの。そこが新しい生活拠点となる場所よ。」
「マカティー、、よろしくな笑」
車の窓から眺める景色は、日本では見たことのない世界だった。プレハブ小屋などがよく見える。まだまだ発展途上国なんだなと、そう思わせられる、そんな景色。でも、いやじゃない。味があって、この国の文化を見れてる様で、とっても刺激的だ。そして、徐々にマカティーと呼ばれる街に近づいてきた様だ。景色が、街並みが綺麗になっていき、整ってくる。
「さあ、いよいよフィリピン生活の始まりだ。」
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