第44話 エピローグ ハロー・グッドバイ
あの狭い空間。もわっとした空気。じりじりと焼かれる肌。なんか今も肌ひりひりしてるし。息をするにも苦しいような感覚。一分一秒が永遠にも感じられるってああいうことを言うんだろうなあ。よく見かける修辞的表現だけど、私は今まで、退屈な道徳の授業とか、死ぬほどつまらない校長先生の挨拶とか、そういうことを指しているんだとばかり思っていたけれど。
どうやら今日から修正が必要ならしい。ん? 今日?
ていうか、時間は分かったけど、今は何日だ?
結局、どうなったんだろう、あれから。
ていうか、お母さんどこ行ったんだろう、さっきから。
「千真ちゃーん!」
「千真さん!」
「たいさー!」
「おふっ」
大佐ってまだ続いてたんかいというツッコミは置いといて、恵美寿と姫と空穂が病室に入ってくるや、飛びついてきた。
「ご、ごべんでえごべんでえあたし、あたしがもっと早く見に行ってればよがったどじいいいいいいいいいうわあああんんん」
「わ、わ、わ、私があのときおし、おし、おしっこに行ってたばっかりに、も、漏らしておけばよが、よが、よかったんです、う、う、うううう」
「お、おお……? あ、ありがと? ええっと?」
どうした? 漏らすのはよくないよ?
理由も分からず空穂を見れば、いつも通りのへらへらした顔がそこにあって、私は思わず安心してしまった。ついでに、ほっぺにご飯粒が付いてるところを見るに、こいつら今までお昼食ってたんだろうなってのが分かった。
「で?」
「でっていう」
いや、ヨッシーの真似とか今いらんからさ。
「どうなったの? あれから。えっとそうだ。報告だ、空穂特派員。君に最後の仕事を与えよう。……ていうか今何日?」
「サー、イエッサー! えっと、」
「私から報告しましょう。ついでに今は昨日の今日です」
声に入り口を見やれば、玉藻先生がお母さんと一緒に入ってきたところだった。
どうして玉藻先生がお母さんと一緒にいるんだろう?
「麗日さん――」
そこで、隣にも麗日さんがいることに気付いたのか、改めて言い直した。
「千真さん。この度は本当に申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げた。
「いいって、私は。それより――」
「ことの顛末ですよね? 千真さんが気になっているのは。いいでしょう。お話致します」
そう言って玉藻先生は語り始める。
私は未だおいおい泣いている恵美寿と姫の頭を撫でながら、横で最後の任務を取られてぶすっ面晒してる空穂を眺めながら、その話を聞くことにする。
玉藻先生の隣で、何故かお母さんが胸を張って得意げにしていた。
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