第40話 伝言ゲーム ●万田恵比寿

 ――はあ。は? Ⅳ? ああ、たしかにそうですね。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ。使ってない脚立……脚立は車から発見されました。これまでの問題の傾向からして、問題は次の場所を示していましたよね? そして、その場所には次の問題があったということを考えれば、自ずと車の中にまだ探していない場所がありますのは分かりますよね? 元ネタは今のところ音楽なんですから。ほら。あそこです。さあ? 玉藻先生にでもやってもらえばいいんじゃないですか? 知りません。はあ……。

 がっくりと来ていた姫ちゃんの言葉を思い出しながら、再びあたしたちは外庭へと移動する。

 あたし的にはそっちの閃きの方がすごいと思うんだけど、姫ちゃん自身、そっちは自分の中であんまり評価してみたい。姫ちゃん、必要以上に自分を責めるからなあ。実は千真ちゃんとその辺けっこう似てるんだけど。あたしから言ったことはない。

「せんせー!」

「はい?」

 玉藻せんせーはさっき見たときの格好のまま、壁に手を付いてあたしたちを見上げた。その表情に疲れは一切なかった。

「「エンジン掛けてー!」」

「は?」

 洞穴に向かって叫ぶあたしたち二人に、玉藻せんせーは怪訝な顔を向けた。




 ギャギギギギ、ギギ、ギャギギギギギ……ブオンッ! ウオンッ!

「げっほ、けほっ」

 なかなかエンジンが掛からず苦戦していたせんせーだけど、ようやくエンジンが掛かったみたいだった。排気口から黒煙がもっふぁとあたしたちに襲い掛かってきて、空穂ちゃんと二人して大きく咳き込む。

「あ、本当。よく気づきましたね、こんなの」

 すぐに車の中から声が聞こえてきた。盤面を傷付けないように持ってきたのは姫ちゃんご指摘のカーステレオに最初から入っていたCD。

 車で音楽と言えば、カーステレオしかないだろうということ。

 盤面には黒のマジックで数字が書かれていた。

『Ⅱ』

 よかった。これだ。

 タイトルは――……。

『Emerson, Lake & Palmer』

『Pictures at an Exhibition』

 うん。読めない。

「エキシビジョンってなんでしたっけ。まあ、いいです。先生、音楽の方はあまり詳しくないのであとは白幸さんにお任せします。ああ、それとそれと」

 そのまま立ち去ろうとしたせんせーが振り向き、あたしたちを呼び止める。

「さっきから井戸の蓋が閉じたと思ったらまた開いたりするんですよ。イタズラか何か知らないですけど、めちゃくちゃ土と葉っぱ落ちてくるんで麗日さんに言っといてください。全部終わったらでい……でも場所が場所なんで大事にならないように早めに終わらせて下さい」

「「はーい」」

 どーりでせんせー汚れてるわけだ。

 ま、あのボタン押した今なら分かるよ。

 疲れるよね、あれずっと押してるの。千真ちゃんも休んでるんじゃないかなあ?

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