北辺の習俗と去神譚
北辺に
その地、三方を海とし、森多けれど実り薄く、夏、短く、冬、海は氷に、森は雪にて閉ざされり。
人、
夏とは獣なり。*2
その血肉は滋養となり、毛皮は寒さを
南方より来たりし
兵、北辺の独り神を
北辺の人びと、これに怒り剣を取る。
「
独り神、覡を抱き
覡、その血を悦び
獣の哭声、天を
独り神、空を閉ざしたり。*3
覡、
みなひと、夏となりぬ。
すなわち覡、獣を率いて冬営の地を襲い、血路を
独り神、北辺を遙かに去る。
行方は詳らかならず。
ただ、おのが血を分けた獣とともに去れりとのみ。
神去りし地、夜の明けることなし。
唯一神の民、おのが神に祈りて夜明けを
春待てど春来たらず、
民、声に
人里の
今般*5、彼の地に
独り神と狼の伝承にまつわる風習か。
この飾り物をして「曙*7の
*1覡:男の巫
*2夏とは獣なり:狼が夏に児をなすがゆえか
*3独り神、空を閉ざしたり:極夜のことか。あるいは天変地異、大隕石の落下にも似たり
*4遠き獣の声:神託の類か
*5今般:原著は十二世紀の著物なり
*6習わしあり:十二世紀以前の風習なり。近世以後伝わらず
*7曙:ピンク色なり。染色法不詳。伝承、後世の戯作ならんか
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