第9話 歴史に学ぶ
ドイツの鉄血宰相 オットー・フォン・ビスマルクが
「諸君らは 世界各国が礼節を持って
付き合っているのを見ただろう。
けれども、それは表面上のことに過ぎず、
現実を弱肉強食だ。
されているが、実際には
大国は有利となれば、それによって、
不利となれば、武力によって
物事を進めるだろう。」
というものがある。対象は いささか違うし、ニュアンスも多分に異なるだろうが、天皇制においても 表面上見えているものと現実は大きく異なり、それは微妙な
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と
9世紀後半、摂政(・関白)が置かれ始めた時節、第57代 陽成天皇が幼くして素行不良で退位させられた。代わりに 天皇として立てられたのが その大叔父にあたる光孝天皇(第58代)であるが、光孝天皇は自らが中継ぎだと思っていたことから 即位と同時に自身の子らを臣籍降下させた。
しかし、時の権力者である関白 藤原基経とその妹である高子(陽成天皇の母)との仲が悪かったこともあって、陽成廃帝の同母弟(貞保親王)の即位は実現せず、光孝天皇が急死する直前、子である源定省を親王に復し、立太子の後 即位させた。それが 第59代 宇多天皇である。
臣籍からの復帰は かの天皇の前例があり、その子である醍醐天皇(第60代)は はじめ臣籍として誕生、現在のところ 臣籍身分として生まれた唯一の天皇だった。
ちなみに、前者が"学問の神様"菅原道真を重用した天皇であり、後者が 弟との兼ね合いなどから かの人物を失脚させている。
「朱雀 「冷泉—花山
|【61】|【63】65
光孝—宇多——醍醐——村上——円融—一条
【58】【59】|【60】【62】【64】【66】
∟斉世
‖
菅原道真—寧子
なお、この国の正史,いわゆる「六国史」は光孝天皇までで編纂が一旦途絶え、以降は『大鏡』等が後の時代の記憶を留めている。『大鏡』の次は『今鏡』で、さらに追加の『増鏡』で歴史をリレー。『水鏡』は、成立年代自体は 『今鏡』の後だが、『大鏡』より前の時代をカバーしている。
六国史
『日本書紀』:720年成立
神代〜持統(第41代)
『
文武(第42代)〜桓武(第50代)
『日本後紀』:840年成立
桓武(第50代)〜淳和(第53代)
『続日本後紀』:869年成立
仁明(第54代)
『日本文徳天皇実録』:879年成立
文徳(第55代)
『日本三代実録』:901年成立
清和(第56代)〜光孝(第58代)
四鏡
『大鏡』:白河院政期に成立
文徳(第55代)〜後一条(第68代)
『今鏡』:高倉天皇期に成立
後一条(第68代)〜高倉(第80代)
『水鏡』:鎌倉時代初期に成立
神武(初代)〜仁明(第54代)
『増鏡』:南北朝時代に成立
後鳥羽(第82代)〜後醍醐(第96代)
その他
『栄華物語』:正編は後一条天皇の頃成立
宇多(第59代)〜堀河(第73代)
『日本紀略』:平安時代に編纂
神代〜後一条(第68代)
『扶桑略記』:1094年以降成立 皇円
神武(初代)〜堀河(第75代)
『愚管抄』:鎌倉時代初期 慈円
神武(初代)〜順徳(第84代)
『神皇正統記』:南北朝時代 北畠親房
神代〜後村上(第97代)
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