でたとこまかせのモンスターエッグ~魔力0でバカにされてた俺でしたが、怪しいバックを手に入れてから、大金が入りモテモテのウハウハ人生になりました。あー金貨風呂には入りません~

夢野楽人

第1話 クビになりました

「お前クビな」


「そうか……」


 俺は酒場で解雇を告げられた。いまさら驚きはしない。

 もう29歳の俺がギルドに残れるわけがなかった。

 なにせ俺は雑用係で、荷物運びと食料などを買うのが仕事。

 花形の剣士や魔法使いのような戦闘職ではなく、モンスターとまともに戦ったこともない。

 せいぜい援護に煙玉を投げるくらいである。それも終わりだな……。



 ……俺は店の天井を見ながら、昔を思い出す。


 へんぴな村から、仲間達と一緒に王都にやって来たのは十年前。

 孤児みなしごや次男・三男に居場所はなく、出世を夢見て村から飛び出したのだ。

 あの頃はみんな希望に燃えていた。

「英雄になってやるぜ!」

「俺は騎士団長を目指す!」


 何も知らない田舎モンが、現実を思い知らされるのは直ぐのことである。

 右も左も分からないまま王都をうろつき、騎士団に入ろうと思い衛兵に声をかけると、

「才能と実績がなきゃ騎士にはなれんぞ。まずは神殿へ行け」

 と言われた。

 教えられた場所に行ってみれば、俺達と似たような境遇の奴らがたくさん集まっていた。

 王国は広いので村や町は多く、ライバルも多かった。


 やがて神官が現れて、俺達に説明を始める。


「迷える子羊たちに、神の祝福があらんことを。王都にきた皆さんは夢を求めてきたのでしょう。ですが、大きい魔力を持たない者は何者にもなれません。まずは魔力測定をしますので、低かった者は故郷へ帰るか、職人の弟子になりなさい。王都に仕事はいくらでもあります」

 よく話を聞くと、騎士になるにはギルドに入って冒険者として実績を積まねばならなかった。

 本来なら貴族しか騎士団に入れないが、今は戦争中なので平民にもチャンスはあった。

 俺達は一列に並び、順番に魔力測定をしていく。

 祭壇にある水晶に手をかざすと、数値が浮かび上がる仕組みだ。

 神官が読み上げる。


「魔力値100、ギリギリ合格」

「魔力値50、失格」

「ガーン!」

 どうやら100以上ないと不合格らしい。

 村では魔法を一度も使ったことがなかったので、俺は不安になってくる。


「魔力値345!? これは凄い!」

「新記録じゃないか!?」

 すごい記録を出したのは俺達の村の、アーモンド。まだ10歳の少年。

 200を超えたら別格扱いだ。超有望な新人の登場である。

 アーモンドが祭壇から下りるやいなや、各ギルドがスカウトに押し寄せてくる。


「是非、ウチにきてくれ!」

「俺のギルドは好待遇を約束する!」

「皆さん静粛に! まだ他の者が残っております。勧誘はあとにしてください!」

 大騒ぎになって神官が声を張り上げた。

 これでようやく静かになる。


 そして俺の番となる。アーモンドの大記録の後ではやりづらかった。

 年上なので負けたくない気持ちもある。

 緊張したまま祭壇に上り、水晶に手をかざす……

「なっ! 嘘だろ!?」

「バカな、ありえん!」

 また騒ぎになるが、別の意味で驚かれていた。俺はショックを受けている。

 神官は何度も水晶を見てくれたが、値が変わることはなかった。


「魔力値0……無能者バコース。百年、いや三百年ぶりじゃないのか!? 記録にも残ってないから、言い伝えにあるだけの存在」

「ざわ……ざわ……」

 俺は知らなかったが、生き物なら必ず魔力があるそうなのだ。

 虫だろうが獣だろうが、最低1はあるので無い方がおかしい――もはや珍獣。

 

 どちらにしろ、俺は魔法を使えない役立たずということになる。

 騎士になる夢は幻に終わった。

 真っ白になった俺は祭壇から下りて壁に向かい、あとはしゃがみこんでうなだれていた。

 魔力測定は続き、やがて全員終わる。

 不合格者は他にもいたが村の連中は全て合格。最年長の俺はみじめだ。

 アーモンドの周りには人が集まっていて、勧誘合戦になっていた。

 どこのギルドも欲しがっていて、見向きもされない俺とは大違いである

 いたたまれなくなって神殿を去ろうとするが、

 

「待ってよマロン兄ちゃん! どこか兄ちゃんを雇ってくれるギルドはない? そこに僕も入るよ」

「俺も、俺もそうする!」

「俺達の兄貴を見捨てたりはしねーぞ!」

「……みんな」


 引き止められた俺は、目頭が熱くなった。

 俺達は村のあぶれ者。血のつながりは一切なかったが、お互いに助け合って生きてきたのだ。

「……うーん」

「だがなー……」

 ただギルドのスカウト達はためらう。欲しい人材はアーモンドだけなのだ。

 一人・二人ならともかく、十三人を一気に受け入れる余裕はない。

 新人冒険者を育成するには時間と金がかかるからだ。まして俺はお荷物。


 そこに、厳つい顔をした一人の中年が手を上げる。


「ならば、儂のとこにみんな来い。できたばかりの弱小ギルドでよければな」

 これが初代ギルドマスターとの出会いである。


 こうして俺達はギルド、『ビック・サン』の一員となる。


 アーモンドらは冒険者となり、魔力なしの俺は雑用係だ。

 待遇も悪くはなく裏方として活躍したので、ギルマスからは褒められるし、村の仲間達も俺を頼ってくれた。

 みんなの役に立てるのなら頑張っていける……と思っていた。


 ……それから十年。ギルドマスターは代替わりし、仲間達もすっかり変わってしまった。


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近況ノートに、AIイメージイラストを載せてます。

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