第12話 南波了、恋愛事情
「へえー…そうか。アイツの女かもしれねーんだ。面白い。アイツにも同じ気持ちを味わってもらわなきゃな」
「………………」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「南波さん」
「どうした?お前らから来るなんて珍しいな?」
「南波さんの…恋の話を聞かせて下さい」
「恋の話?」
「南波さん…本当は相手に……ハメられた……違いますか?」
「………………」
「希美ちゃんが、あなたの事を悪い人とは思えないと言っていました。俺も少し話を聞いた時、何か訳アリかな?って……」
「………………」
「どうなんですか?」
「その前に、その肝心な希美はどうした?」
「外にいますよ」
「外!?」
「待機してます。話、気になるけど嫌な自分が出てきそうって…」
「連れて来た方が良い。いや…俺が行く。話してやるよ。お前らが聞きたがっている恋の話をな。適当に座ってろ!」
「心配性なんやな?」
「それもあるけど…そうそう。相手も動き始めるよ。まあ、その前に動いてはいるんだろうけど、この間の件で希美ちゃんの事や、俺達の事…調べられてるかもしれないからね」
「お前が言うとリアル過ぎんねん!」
「え〜っ、そう〜?」
「コロッと人格変わんのお前、怖すぎだし!」
「2人だって、人変わるでしょ〜?」
「まあ…まだ、本性だしてね〜からな?」
「相手がどう出るか分かんないけど…死ぬ覚悟で相手にかかんないと…今回の相手は多分……」
「タチの悪い人間やろな?」
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「希美」
ドキッ
「…南波…さん…」
「一人でいたら危険だ。中に来い」
「でも…」
グイッと抱き寄せる。
ドキン
「知らない間に何かあったら俺が心配すんだよ」
そう言って抱き寄せた体を離し、両頬を優しく触れるとキスをした。
「大体、お前が前に恋愛事情聞きたいって言ってたんだぞ?」
「あの時は…こんな感情なかったから…」
微笑む南波さん。
「可愛い奴」
ドキッ
さらっと言う南波さん。
南波さんは私の肩を抱き寄せると、みんなの元に移動した。
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
「案外、希美ちゃんも人変わっちゃうかもよ〜」
「ありえる!」
「やり合ったちゅー事は相当なんちゃう?」
「えー、私?可愛いもんだよー?」
「うわっ!」
「いきなり何やねん!」
「私は、そのままだよ?3人はヤバそうだよねー」
「隠す気ないから言うけど…俺達みんな人、変わるよ」
以前見た優人君が現れる。
やっぱり優人君は人格が変わるタイプだ。
そんな二人もさっきの会話から違う二人が現れた。
二人も人格が変わるようだ。
そんな私は……
自分では分からない
だけど普段から想像つかないくらい
違う自分が出るんだと思う…
そして南波さんの話を聞いた、
先生と生徒。
相手は、かなり美人だったそうだ。
男女問わずマドンナ的な存在だった先生は慕われていたそうだ。
でも、不良寄りの南波さんは、全く興味がない素振りだったそうだ。
そして、時折、私にも見せていた優しい部分を先生は知り好きになったという。
それが事件の始まりだった。
先生には既に恋人がいたらしく、恋人には内緒で南波さんと先生は会っていたらしい。
南波さん自身、先生に恋人がいる事は、知っていたらしいけど突き放しても彼女は会いたがっていたそうだ。
そして、恋人は彼女の行動を不審がり恋人はコッソリ周囲の事を調べた結果、南波さんの名前が出たそうだ。
そんな彼女は調べられてるとも知らず近付き南波さんと関係を持ち強制妊娠。
そして子供はおろしたそうだ。
それが、強姦事件となり南波さんは犯人扱いされ、今を至っているという事だ。
「彼女、恋人いて南波さんに近付いたんだから、南波さんが犯人扱いされるのっておかしい話しですよね〜」
「しかも妊娠って…」
「交換条件出されたんだよ。元々、彼女の一方的な想い。片想いだったんだ。俺は、彼女を愛していなかったからな」
「えっ…?」と、私。
「何だよ!だから言ってるだろう?男は好きでもねー女を抱く位出来るって」
「…やっぱり…強姦事件だ!」
「なっ!だから理由が…」
「心にもないこと平気で言ってたんだ!“好きだよ”とか“愛してる”とか……」
「あのな~…」
私は嫉妬心から、距離をおく。
「………………」
「それで?交換条件って?」と、優人君。
私は嫉妬心のある中、耳はしっかりとダンボにしていた。
「男は、俺に彼女の事を聞いてきた。タチの悪い奴らだとすぐに分かったよ。“彼女を妊娠させろ!”と言われた。“アイツへの想いがないなら別れろ!”とな。正直好都合だと思ったよ」
「それはそうですよね?」と、優人君。
「南波さんは、相手への想いなかったんやし」
と、勇真君。
「しかも、相手が言い寄ってきてただけなら、相手の話にのれば別れられるしな」と、蒼介。
「人生が狂うのは分かっていた。だけど…その方法が手っ取り早いと思ったよ。それに、俺が彼女に対して愛情がなかったのも事実だし、正直に話した。お前の事は好きじゃないとな。彼女は当時傷心だったろうけど、これ以上は一緒にいても無理だって思っていたしな」
「つーか…むやみに近付くからだよ!彼氏いたくせに何、生徒に手出してるわけ!?同じ同性として信じらんないっ!」
歩み寄る南波さんは、私の頭をポンとした。
ドキン
「そうカッカするな。過去の話だ」
「でも…それで南波さんは…」
「でも、それで別れられたんだ。もし、別れる事が出来てなかったら俺は、今、ここにはいなかっただろうな」
「………………」
「だけど…良く彼女は、愛情表現なくて耐えられたんだろう?私だったら…」
「お前の場合、ストレートに言ったら顔真っ赤にするだろう?」
「…それは…」
「やっぱり、俺達を助けた南波さんは、嘘、偽りないですね」
「蒼介」
「手は出したかもしれへんけど、南波さんが本当のイイ人やって思えてきました」と、勇真君。
「俺達にもう少し心開いてくれても良いと思います」
と、優人君。
「…お前らには、開いている方だと思うが?」
「もっと俺達の知らない南波さんを見せて下さい」
と、優人君。
「希美と同じくらい」と、蒼介。
「たくさんの南波さんを俺達に見せてほしいんです」
と、優人君。
「………………」
「どんな南波さんでも…希美ちゃんが一人の男として惚れるくらい、きっと何かがあるんだって俺達思うから」
「優人」
その時だ――――
「誰か来る!」
南波さんと優人君が何かを感じた。
「みんな隠れろ!」
南波さんの一声で、みんな一斉に隠れる中、私がモタモタしていると南波さんが私の手を掴み隠す。
私と南波さんは体が密着。
ドキドキと早鐘のように胸が速くなる鼓動。
カチャ
ドアが開いた。
カツカツ…
誰かが歩く音が室内に響き渡る。
私は南波さんを、ぎゅうっと抱きしめる。
それに気付いたのか南波さんも、ぎゅうっと抱きしめ返してくれた。
「………………」
そして、足音は遠ざかり部屋を出て行ったのが分かった。
「………………」
しかし、みんなはまだ出ようとしない。
「希美、大丈夫か?」
ドキン
目の前にある至近距離の南波さんの顔に赤面する。
「お前、顔に出すぎ!」
クスクス笑う南波さん。
そしてイタズラにキスをした。
更に顔が赤くなる。
「おもしれー」
クスクス笑いながら出る南波さん。
「お前、マジおもしれー!いちいち反応しすぎなんだよ!」
「だって!キスされたら驚くでしょう!?」
「キスぅぅぅーーっ!」
蒼介と勇真君が敏感に反応する。
「二人は、そういう関係?」
「いつから!?」
「え〜〜っ、俺、薄々、気付いてたよ〜」
「お前、どんだけ秘密主義なんだよ!」
「いやいや気付くよ〜。希美ちゃん日に日に綺麗になっていくの分かるし〜」
「えっ!?いやいや、俺には分からへん!」
「右に同じく!」
「もっと深いキスしときゃ良かったか?」
「南波さんっ!」
私は顔を真っ赤にして言う。
「そんな濃厚なキスしたら止まらなくなるんじゃないんですか~?南波さん」と、優人君。
「そうかもな?好きな女を目の前にしたら理性失いそうになり兼ねねーもんな」
「もうっ!」
クスクス笑う南波さん。
「つまり、そういう事だ。俺達、付き合ってるから」
「マジですかーーっ!?」
「ええーーっ!」
南波さんは、グイッと肩を抱き寄せると、頰に不意打ちのキスをした。
「……!!!」
「見せ付けないで下さいよ!」
「ホンマや!」
クスクス笑う南波さんと優人君。
「それよりさっきの…」
「ああ、そうだな」
「………………」
「果たし状だ」
「えっ!?」
「なんて書いてあるんですか?」
「…いや…お前らに…迷惑…」
「また出たよ!」
「さっき話したばかりですよ〜。南波さん」
「…………………」
【明日、夜 7時に○○に来い】
【来ないと女の命がないと思え!】
「女…?」と、優人君。
「つまりそれって…」と、勇真君。
「希美の事か?」と、蒼介。
「…そうかもな…?」
「まあ行けば問題ないんだろ?」
「…簡単なものじゃないと思うぞ」
「えっ?」
「7時まで行くまでに…何かしらの問題は生じてくると思うけどな…」
「人質…とか?」
「なくはねーだろな?そうなった時は…素直に従う方向で考えた方が良い」
「この中の誰かか…もしくは…他の仲間か……」
「…………………」
「希美も下手に抵抗すんな。いいな」
ポンと頭を押さえる。
ドキン
「…でも…ヤられそうになったら?」
「そうならない事を祈りてーな」
困ったような不安そうな表情をしながらも微笑む。
「………………」
「希美ちゃんにとっては、一番の問題がそこだもんね~?」
私は頷く。
「大丈夫。みんなで守るから〜」
そう考えていたものの
事態は
そう簡単なものではなく――――――
朝、目を覚ますと――――――
「…えっ…!?…ここ……何処……?」
――――― そう ―――――
私の視界に
飛び込んできた
光景は
全く見慣れない
部屋にいたのだから―――――
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