第33話 ミーグ国

 学園は長期休校にはいった。

 これは帰郷や教師たちの勉強などのためにとられる、三ヶ月ほどの長い休みだ。  

 

「宿題とかでなくてよかったよ」  


「しゅくだいってなんだ?」   


「なに?」   


 カバンに荷物を詰めながら、ザインとリビィが聞いてくる。


「課題だよ。

 オレたちの国では長期の休みがあると大量の課題を出されるんだ」 


 それを聞いた二人はとてもイヤな顔をした。


「うえー、絶対にいやだな」   


「うん、こっちのほうがいいね」   


「まあな。

 この世界の勉強は大まかな歴史と魔法やアイテムの制作、剣術や体術、あと計算ぐらいだ。

 実用性が高いし、将来に使えそうなことを学べるからいいな」


「まあ、他の専門性の高いものは別の学校があるからな。

 ここは冒険者の学校に近い」


「さあ、おしゃべりはそこまで!

 さっそくミーグ国へしゅっぱーつ!」


 リビィは元気よくいった。



 オレたちは馬車を乗り継ぎ四日ミーグ国に着いた。


「けつがいてえ!」


「ボクも!」


「オレも。

 さすがに四日間、宿に泊まりながらとはいえ、荷物用馬車の荷台はきついな。

 普通の馬車じゃだめなのか」


「だめ!」


 ザインとリビィが声を会わせいった。


「普通の馬車は高いんだよ。

 ボクの国までいくにはパンが一杯買えるんだ。

 そんなもったいないことできないよ」


「だぞ。

 節約していかないと、生活費を削ることになる」


(こいつら、オレから金を借りようともしないからな。

 友達に借りをつくりたくないとかで......

 二人とも仕送りしてるみたいだし、まあオレも生活費は自分で出してるが......)


 今オレは国からも親父からもお金をもらってない。

 それは仕事クエストで金を手に入れたことをなぜか知っていた親父は、そっちの通貨は貴重なのでなんとか仕事クエストで稼げ、あと余ったらこっちに送れなど手紙でいわれたからだ。


(一部交易をしてるようだが、互いに警戒感があるのか進んでいないようだしな......

 まあオレは寮と食費くらいしか使ってないから平気だけど

 ......余っても絶対に送らないけどな)


 荷馬車から外をみていると、リザードマンの国のように多種多様な種族が生活してるようだ。


「ホビットってどんな感じなんだザイン?」  


「まあ、人懐っこくて明るいな。

 裏表のない性格だ。

 善良の民、なんてこの世界ではいわれてる。

 まあ全員リビィみたいな感じだよ」


 ザインがあくびしながらいう。


「国としては?

 町は普通な感じだけど」


「うーん、国土はまあ普通だね。

 草原、山や森があって、海はないけどこの大陸一大きな湖、サラン湖があるよ。

 産業は農業や放牧、そして狩猟だよ。

 町は国境に近いところは他の種族と変わらないけど、田舎にいくとちょっと様式が違うかな」


 リビィがそう説明してくれた。


「学園でも種族とかその辺はあまり教わってないからな。

 この世界の種族であとみたことないの精霊エレメントだけか」


精霊エレメントはいても見えないからね」


「体がないって話だろ。

 そもそも精霊エレメントって何なんだザイン?」

 

「ああ、この世界最古の種族だ。

 かつては肉体があったが、肉体の全てを魔力マナに変えて意識だけの存在になったらしい」

 

「魔法か」


「多分な。

 肉体を持つことは退廃だとして、基本他の種族とのかかわり合いを持たなかった」


「それがなんで六英雄に加わったんだ」


「魔王が現れたからじゃない。 

 でも精霊エレメンタルたちは魔王に滅ぼされたって話」


「へー」  


 六英雄、千年前この世界が魔王の脅威にさらされたとき、それぞれの種族からでた英雄。

 人間ヒューマンの魔導王ザハーストラ、リザードマンの竜将ガザーグ、ドワーフの剣聖ラバンバルト、エルフの魔法剣士ディルタムス、ホビットの大狩人ローナン、精霊エレメントの聖女マリーシアとその六種族が魔王を倒したという。

 

(まあ、本当かどうか定かじゃないが)


 オレが腰に差した棒をみる。


「お前その棒ってソートスタッフか?」


「ああ、オーク王に託されたからな

 誰かにとられたらことだし」


「形かえたの?」


「そうだ。

 形態変化フォームの魔法で棒にしたあの杖のままだと邪魔だからな」


「それ使えそうなの?」

 

「色々試してるが、今のところ使い方はわからん。

 オレの魔法を飛ばせれはいいと思ったんだけどな」


「そういや、お前の魔法ってその場にしか使えないんだったな」


「魔力も多くて、それだけ魔法が使えるのに魔法は飛ばせないなんておかしいね」


「だな」


 リビィとザインは首をかしげる。


「まあオレが変なのか、それとも異世界人だからなのかはわからないけどな......」


 

 そうオレは移っていく景色を見ながらいった。

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