第15話 暗き森
オレたちは屋敷に着くとすぐ裏手の土のなかから薬箱を掘り出し、馬車に乗せ走りだした。
「フェルス!
お前が逃がしたことを知られるとお前の妹も巻き込まれるんじゃないか!」
「その心配ない!
妹はオレのことを知らん!
まだ小さな時に別れて教会に預けられたからな!」
オレの問いにそう答えた。
「じゃあ渡しても使ってもらえないんじゃないの!」
リビィがいう。
「それは大丈夫だ!
教会のシスターはオレの事情を知っている!
毎月金をいれているから信頼してくれてるしな!
よし! ここで馬車を捨てるぞ!」
そういうとフェルスはいくつもの道がわかれている岐路で降りると、馬を別の道に走らせた。
「教会まで追われてはまずい。
ここからは歩いて森の中をいこう」
オレたちはその暗い森の中にはいった。
「近いのか」
「ああ、ここを抜けられればな......」
「抜けられれば......
おいおいなんかでるんじゃないだろうな」
フェルスは腰に差した細身の双剣を抜いた。
それをみたザインがキョロキョロと大木が生える暗い森を見回す。
「残念だが当たりだ......
ここはラージスパイダーの巣なんだ。
だから好き好んで入る奴はいない」
そういってフェルスはザインに一本、剣を渡した。
「追手を巻くにはいいんだけど......
ラージスパイダーってでっかいクモの強力なモンスターだよね......」
リビィは怯えながらいった。
「ああ、凶暴で強い。
ひとたび獲物を見つけると仲間を呼んで襲ってくる......」
「確かにそんなのがいるところに入る奴はいないか......」
「そうだ。
仕事にやる気もない奴らがこの森に入ろうなんてしない......」
オレたちは茂みをかき分け森を進む。
「みんなとまれ......」
ザインがそういって止まった。
「どうした......」
オレが聞くと、ザインは闇の方をみている。
「俺は熱を感知し、見えないものをみることができる......
何かが後ろから近づいてくる......
かなりの数だ」
(蛇が持つピット器官みたいなものか......)
「向こうからきている......
早く行こう!」
ザインにいわれ、オレは木や地面に触り魔法を設置しながらジグザグに移動する。
リビィは魔法で作った弓を構えた。
「ダメだ! こっちにまっすぐ近づいきてやがる!」
「何で!? この暗闇でついてくるなんて!」
「多分! 聴覚だ!
クモは脚から音を感じるときいたことがある!
仕方ない!」
オレはそういって遠くに設置した魔法を発動した。
爆発音がした。
「そっちに向かった!」
「まだかフェルス!」
「たぶんもうすこしで抜けるはず!」
「またこっちにきているぞ!」
「リビィ! オレたちと逆の方向の木に強い矢を放ってくれ!」
「わかったユーヤ!」
魔力で作った大きな矢をリビィは放った遠くで木に当たった音がした。
「早く行こう!」
オレたちが走って前に向かう。
「止まれ!」
そうザインがとめた。
「どうした!? 早くしないと」
「まずいことになった......
前ににでかい奴がいやがる」
「数は!? 」
「数匹......
いや三匹。
一体だけ異様にデカイ!」
「くそ女王か!」
フェルスが舌打ちした。
「ユーヤ! クモの弱点しらないの!?」
「わからんが......
寒さ......
虫ではないけど、クモも寒さには弱いはずだ。
それに脚に呼吸器があったはず、だから脚を凍らせれば呼吸できないし、感知も鈍るはずだが......」
「氷の魔法なんて使えねえぞ......
俺自身寒さには弱いからな」
「ボクもザインも魔法は得意な方じゃないからね......」
「オレが使える......
といってもそれほど強力でもないがな」
「なら別れて逃げながら戦うしかないな」
ザインがいう。
オレは投げられるぐらいの石を何個か拾った。
「前から来るぞ!」
ガサガサと茂みの奥から大きな音が聞こえる。
現れたのは大木のような二匹のクモと家並みの大きさのクモだった。
クモの六つの目が赤く光っている。
「いくぞ! 倒さなくていい!
かわして逃げられればそれでいいんだ!
前にいけ!」
フェルスがいうと、オレたちは別々の方向に別れた。
クモの一匹がオレの方を追ってくる。
追ってくるクモに全ての石を投げ爆発させる。
それでもクモは怯まず向かってくる。
「くそ! 威力が弱い!
何かないか爆発以外!
最初イザールを吹き飛ばしたときもう少し威力が......」
オレは思いだした。
(オレの魔法はなんで触れて爆発なんだ......
最初からそうだと思いこんでいたが......
魔法はイメージで事象を起こすか......
もしかして......)
オレはイメージしながら力をためる。
後ろからすごい勢いでクモが近づく。
「いけーー!!」
オレはその場で魔力を設置すると、すぐ解放した。
バキバキバキ!!
かみつこうとしてきたクモのアゴが凍りついた。
ギイ!!
そう鳴くとクモは茂みに逃げていった。
「よし!!
やはり思ったイメージどおりに凍らせられた。
それに空中に設置できた!
これなら!」
「うわああ!」
リビィの叫び声がする。
オレは急いで向かった。
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