第9話 潜入

 ルイエの姉に薬を届けるためオレたちはエルフの国ミルフレインに向かっていた。 

 

「で、ザインその《見えざるもの》どのくらいの時間姿を消せるんだ?」


 ルイエの操る馬車に揺られながらオレはザインに聞いた。


「まあ2時間ってとこだな......

 インターバルに30分。

 たが、バレたら外交問題だぞ。

 本当にユーヤいいのか。

 親父さんが窮地にたたされるんだろ」


「仕方ないだろ...... ここまできたら。

 それにあの親父ことだ、どこかにつてをつくってるはず。

 やめさせられても問題ない。 

 最悪なくてもどうとでもなる。

 ルイエですら会えないから姿を消せるお前の力が必要だ」


「んー......リスクたけーな」


「お前とリビィにオレとルイエの分のバジリスクの金をやっただろ」


「そうだね。

 お金ももらっちゃったし」


「まあな、しゃーないやるしかないな」


「ごめんなさい......」


 ルイエが申し訳なさそうに謝る。


「しかたない。 

 薬が効けば両世界間の信頼も増すからな。

 それに聞いた以上ほっとけないし......

 それよりホントにルイエの手紙で信じてもらえるのか」


 ザインがルイエに聞いた。


「ええ、私の字は姉なら分かるわ。

 頻繁に手紙のやり取りをしていたから......」


「渡せればいいんだね」


 リビィがそういってうなづいた。

 オレたちはエルフの国との国境まで急いだ。


「もうすぐ国境につくわ」


「わかった。

 ザインたのむ」


「ああ」


 ザインはオレたちに触れると魔力を流した。

 目の前のザインとリビィが見えなくなる。


「すごいな! ホントに見えない!

 身に付けてるものまで見えないんだな!」


「だけど気を付けろよ。

 身に付けたものを体から離すと透明化は解除されるからな。

 特に薬箱は離すなよ」


「分かった」


 オレたちは薬を運ぶために薬がはいった箱を背負っていた。

 

「国境よ! 黙って!」


 石でできた壁を互いの兵士と見られる武装した人物が十人程立っている。

 兵士が馬車を止めるとルイエに話しかける。


「ルイエさま。

 お戻りになられるのですか......

 そんな連絡は国の方から聞いていませんが......」


 そうエルフ側の兵士がルイエに問う。


(ルイエさま......

 ルイエは何か地位がある身分なのか......)


「ええ......

 異世界から来た者のことで少し分かったことがあったので、国に伝えたいとおもったの。

 手紙だと不安なので直にラハラール様にお伝えしようと一時帰国したのだけれど」


「そうでしたか......

 分かりました。

 どうぞ」


 兵士は敬礼すると道を通してくれた。

 それからしばらく馬車が走る。


「ふう! 緊張した」


「危うくおならがでるとこだったぜ」


 ザインがそういうと匂いがしてきた。


「してんじゃねーか!」


「オレじゃねーよ!」


「ごめん......」


 リビィがあやまった。


「お前かよ!!」 


 オレとザインが同時にいった。



 国境を越え進むと見たこともない巨大な木々が生えている森の中を馬車が走る。

 

「なんだこのばかでかい木!?」


 オレはつい声がでた。


「エルフの国は大きな森の中にあるって話だったが......」


「うん......

 聞いたことはあったけど見たのは初めてだよ」


 ザインもリビィも圧倒されてる。


「ええ、エルフのミルフレインは大きな森の中にあるの。

 とてもいいところよ......

 閉鎖的でなければね......」


 そうこちらを見ずにルイエはいった。

 

 しばらく走るとオレたちの姿が見えはじめた。


「透明化が解けた!」


「ああ、二時間たっちまったな。

 次に魔法が使えるまで30分なんとかするしかないぞ」


「その布の下に隠れていて、この先の町を抜けたらまた首都まで町はないわ」


 オレたちはホロの中の布の下に隠れてやり過ごす。

 また匂ってくる。


「くさっ! リビィ!」


「ボクじゃないよユーヤ!」


「すまんオレだ......」 


「お前かよ!」



 オレとリビィが同時にいった。

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