第8話 判明

 次の日教室でルイエに昨日の話をした。


「......私の血を......いいわ。

 やってちょうだい」


「まあ、マニュアルと道具が届いてから練習しないと......

 オレも注射なんてしたことないんだ

 今日届くらしいから寮の方にきてくれ」

 

「わかったわ」


 そして授業終わりルイエはオレたちと寮まで一緒に来ることになった。


「で、ルイエ......

 病気ってどんな症状なんだ。

 わかる範囲でいいから教えてくれないか」


「ええ、でも私もあまりわからないの......

 元々姉とは離れて暮らしてたから、でも聞いた話だと最初は風邪で、最後には血を吐いたりして亡くなるらしいわ......」


滅国病めっこくびょうじゃないのか?」


 ザインがいう。


「滅国病?」


 オレが聞くと。


「恐ろしい病気だよ。 

 かかると半分は死んじゃうんだって」


 リビィが怯えていった。 


「じゃあよ。

 今エルフの里は......」


「......ええ、少し病人がでてて、隔離されてるみたい......」


 ザインの問いにルイエはそう答えた。


「何で他の国に助けを求めないんだ」


 オレがきくとルイエは首をふる。


「エルフは他種族を信じてないわ......

 伝えれば唯一の外との貿易を閉じられると......

 だから異世界人のあなたを驚異がないか調べるって騙してやってきたの」


「なるほどな」


「まあ実際、助けを求めても対処のしようがないからな。

 それを言ったところでルイエのいうとおり、他の国は感染を防ぐために貿易ルートを塞ぐと思うぜ」


「向こうも信じてないけど、こっちも信じてないしね」


 ザインとリビィはそういった。


 

 その日の夕方、連絡と注射器等が届いた。


「これが注射器とその他の道具......

 そしてマニュアルか......まず練習」


「できるだけ早くして欲しいの! 

 失敗しても回復魔法があるから大丈夫」


「ても...... いや、わかった......

 マニュアルをみながらやってみよう」  


 オレはルイエの必死な訴えを聞き、マニュアル通りやってみることにした。 

 まずオレは手を消毒する。


「まっすぐに走る血管を探し、駆血帯(くけつたい)で腕に縛る......

 これか、アルコールで刺す場所を消毒、乾いたら15度の角度で3ミリ刺す......」


 ルイエは目をしっかりつぶり耐えている。

 なぜかザインとリビィも同じように目をつぶっている。

 

「そしてゆっくり血液を引く......」


 注射器に血液型たまる。

 

「そして駆血帯を外し消毒綿で刺した部分を押さえながら針を抜く......

 よし! ルイエあとは少しの間この消毒綿を押さえていてくれ」


 なんとか血液を取ると、マニュアル通り容器に保管して送る。


「これで......

 あとは連絡まちだな」


 

 それから三日たって、親父から連絡がきた。

 ルイエを呼んで結果を伝える。


「で、どうたったの! なにかわかったの!」


「まあ、ルイエ落ち着いて......

 ルイエの血液と症状とそして滅国病って言うのをオレの世界が調べた結果から、おそらく結核(けっかく)という感染症だ」


結核けっかく......

 ......それは私も感染しているってこと」


 ルイエは青ざめた顔で言う。


「ああ、でも結核に感染しても発病するものは10人に一人ぐらいらしく、薬を飲んでれば大丈夫なんだと......」


「じゃあおねえさま......

 いえ姉も大丈夫なのね!」


「それが......

 薬を四錠程度、半年は飲まないといけないらしい......

 でも回復魔法があるからもっと早くなおる可能性がある」


「なら簡単じゃないか」


「うん! これで滅国病もなくなるね! すごいや!」


 ザインとリビィが嬉しそうに言う。


「いや、ことはそう単純じゃない......」


「どう言うこと?」


 オレの表情から察してルイエは不安そうに効いた。


「この事をこっちの世界の国に知らせ薬も送ると伝えたんだが......

 どうも薬を受け取らないらしいんだ」


 三人に伝えると厳しい表情をした。


「確かにユーヤの世界が調べたことをそのまま信じる国はないかもな......」


「うん......

 薬なんて、ポーションとか毒消し薬とか魔法絡みのものしか知らないもんね......

 ユーヤの世界がこっちに何かしないとも限らないし......」


「そう、オレたちの国も戦争や紛争があることはこっちの世界にも伝わってるし、信頼感がまだないから仕方ないんだが......

 比較的友好的なこの国ですらそんな感じなんだから、排他的なエルフならもっとだろう、しかも速攻で治るもんでもないしな」


「でも......これで治せるんでしょう。

 なら、どうしても姉に......

 いえ、国に伝えなくては......」


 ルイエは考えこんでいった。


「薬は送ってもらえるが持っていけない......

 オレたちは入れないから、ルイエが持っていって信じてもらえるかな......」


「......隔離されている姉にはどうしても会えないから」


「オレたちは入れないのかな......」


「無理......

 エルフでも国境を越えるには許可が必要なの......

 他種族は絶対に国には入れないわ」


「やはり無理か......

 見えないように入れれば......

 ん? 見えないように......」


 オレたちは一斉にザインを見た。


「えっ? なに?」


 

 そうとぼけた声でザインが答えた。

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