第6話 武勇伝

 オレたちが寮に戻るとオレの机に小さな箱と手紙が置いてある。


(なんだ? 手紙は親父からだけど、箱?) 

 

 とりあえず手紙を読む。


『はーい、おひさ、パパだヨーン。

 ユーヤ元気かい。

 パパは元気に国民の税金で夜面白おかしく飲み歩いてまーす』


 こいつ一国民としてマジでなぐりてーな。


『で本題、その世界についてわかったことを伝える。

 その世界は異世界と言うよりは異星らしい』


 なに!?  


『地球より遥か遠くにある星なんじゃないか、というのが最近の研究でわかったことだ。

 まあ、だからどうしたと言うわけではないがとりあえず伝えとく』


 まあな、それでどうなるわけでもないし......


『PS、魔法を使った特殊なスマホを送りました。

 メールしか遅れませんしタイムラグがありますが、それでバッチリ君の近況を伝えてね。 

 バイバイマイサン』


「スマホ......」


 箱を開けてみると、たしかにスマホが入っていた。

 メールだけは打てそうだ。


(メール機能だけじゃほとんど使いもんにならんだろうが。 

 要するにこっちの情報を送ってこいってことだろ......

 めんどくさいな)


「親父さんなんだって」  


「まだムダに生きてるってさ」


 オレはあきれながらザインに答える。  


「それにしてもあのエルフ、何者なんだろうね。

 結構強い魔法を使ってたし冒険者かな」


「さあな、まあかわいかったが......

 そんなことよりホラこれ、バジリスク売ったらこんなにもらえたぜ!」


 リビィにそう言うとザインは袋をあけ魔法銀貨を机にジャラジャラと出した。


「400はあるんじゃない......

 ボムボム亭のパン何個買えるのかな......」


 ゴクリと喉をならしてリビィいった。


 この世界の貨幣価値はまだよくわかってないが、魔法がかかった銅貨、銀貨、金貨が流通している。

 混ぜ物をしているらしいが不正を防ぐために魔法がかけられているのだという。

 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚の価値だ。

 小さなパンが銅貨1枚で買えるから、だいたい100円とすると、銀貨1枚1万円、つまり400万円ぐらい手に入れたぐらいになる。


(まあ学生で400万は大金だな)


「よし! 三等分だ!」


「やった!」


「まて、あのエルフのこの分も分けないとダメだろ」


 オレがそう言うと二人は絶望的な顔をした。


「い、いやホラあのこはいないしさ......な」


「そ、そうだよ。

 もう会わないかもしれないし......」


「ダメだ。

 あのエルフのこのおかげで死なずにすんだんだ。

 また一緒に依頼クエストにいってやるから、あのこの分は分けとけ」


 オレがいうと、哀しそうに二人はうなずいた。


「わかった......

 でも約束だからな!

 次も依頼クエストに付き合えよ!」


「そうだよ! 付き合ってよね」


 オレがわかった、わかったというと、二人は笑顔で自分のお金を懐にしまった。


 

 次の日の朝学園に行くと、周囲がざわついている。


(なんだ...... みんなこっちを見てくるな......)


「おい、あいつだバジリスク倒したってやつ」

 

「あいつって留学生の異世界人だろ」


「なんだ異世界人ってそんな強いのかよ」


(そうか、昨日のこと広まってんのか......

 ただ勘違いされてるみたいだけど......)


 そう思っていたが、女子たちがこっちを見て手を振って笑いかけてくるから、悪い気はしなかった。


 教室に入ると、リビィ、ザインがみんなに囲まれて机に立ち上がってる。


「バーン!!」  


「と、その時ユーヤの魔法が腹で爆発!

 バジリスクは倒れたのでした!」


 オオーと歓声があがった。

 

(あいつらのせいか!)


 オレが入ってきたことに気づいたみんなはオレを囲む。


「バジリスク倒したんだってな!」


「すごいね! やっぱり異世界魔法?」


「俺にも見せてくれよ!」


 みんなに言われる。


「たまたまだって、四人でギリギリ倒せただけだから......」


 みんなの質問に何とか答えて席に着く。


「おいザイン! どういうことだ」


「いいだろ、事実なんだから。

 名をあげるためさ」


「冒険者はね。

 名があがると、指名が入ることがあるんだ」


 リビィが答える。


「指名?」

 

「ああ、より報酬のいい仕事クエストが名指しで入るんだ。

 お前は元々有名人だから名があがれば依頼も増えるぜ」 

 

「勝手なことを......」 


 オレはあきれていったが、ちやほやされるのは悪くはなかった。

 その時先生ともう一人が教室に入ってくる。

 その姿に教室がざわめく。


「おいおい、嘘だろ」


「かわいい、始めてみたわ」  


「あれって......」



 オレたち三人は顔を見合わせる。

 教室に入ってきたのはあのエルフの少女だった。

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