追い出されてしまった王女を拾った私は国を崩壊させました。

ゆめうめいろ

追い出されてしまった王女を拾った私は国を崩壊させました。

 「あの……大丈夫?」

 「…………?」


 んー?

 明らかに顔色悪いのに何でこんなに何が言われてるのかわからないって顔してんだこの子。


 「顔色悪いと思うんだけど……水いる?」

 「…………」


 何も喋ってくれない。

 ……迷子かな?


 見た感じ10歳くらいの女の子で……めっちゃ……かわいい。

 服もなんか豪華だし。

 マジ天使。


 ……すいません。

 通報しないでください。


 あと……なんか見たことある気が…………気のせい?

 ……気のせいか。


 「とりあえず家がどこにあるかわかるかな?」


 女の子は指を指してくれた。

 この国の王城の方向へ。


 「……えーっと、あそこがあなたの……家?」


 女の子はうなずいた。


 えーっと……嘘かな?

 いや、この子って…………王女様……あ……。


 この子誰かと思ったら王女様か!

 ……あれ?

 この状況って相当やばいのでは?

 今って一般人が一国の王女に話しかけいてるってことでしょ?


 それって……捕まる!


 いやさすがにそれはないか。

 ちょっとテンパってるわ。


 で……この場合どうすればいいの?

 この子めっちゃ気分悪そうだし……このまま置いてったら……それはそれでやばい。 


 でもこの子どこ連れてけばいいの?

 騎士団は……なんか他のことと勘違いされそうだし……他に連れて行く場所もないし……。


 女の子の……王女様の方見ても何考えてるのかわからないし。


 触らぬ神に祟りなしか。


 よし、もう帰ろ。

 なんかあったら怖いし。


 この後なんかあっても別に私の責任じゃないし。

 掌返し半端ないけど……知らないね!


 「とりあえず水だけ置いておくね。それじゃ―――」


 別れの言葉を言おうとしたとき、王女様が私の袖を掴んだ。


 か、かわえぇ。

 まじで天使だわ。


 でも、私はもう帰るって決めたのです!

 この意志は絶対に揺らがないのです!


 王女様が掴んだ手を半ば強引に離してこの場から去ろうと思ったとき、次は私に抱きついてきた。


 は!

 ちょ……え?

 ま……やめて!

 そんな顔で下から見上げないで!

 もうそんなの……こっから立ち去れないじゃん!


 「……とりあえず私の家行く?」


 王女様はこくりとうなずいた。


 か、かわいい。

 まじで何してもかわいい。


 こうして私はこの国の王女様を家に迎え入れることになった。


 


 


 

 「…………」


 ほんとにこの子何も喋らない。

 今までパレードとかで見てきたときとかは緊張してるのかと思ってたけど日頃からこんな感じなのか。


 王女の方を見るとほんとに生気を感じない。 

 なんか置物みたいな感じがする。


 「「…………」」


 気まずい。


 「あ、えーっと、何であんなところにいたの?周りにボディーガードとかもいなかったし。」


 そうきくと少女は立ち上がり、紙とペンを引き出しから取り出してきた。


 あのー何で私の家のどこに紙とペンがあるのか知ってるんでしょうか。

 怖いんですけど……。


 そんな疑問なんかものともせず少女は紙にペンを走らせた。


 『急に押しかけてしまい申し訳ありません。私がここに来た理由は少し複雑なのですが聞いてくださってもよろしいでしょうか?』


 何この子!

 めっちゃ優秀じゃん。


 ていうか私が聞いたのにわざわざ下からの態度で聞いてくるって……まじでいい子。


 私がうなずくと少女はまたペンを動かし始めた。


 『まずはこの国の状況から話していきましょうか。今この国はとても危機的な状況にあるんです。大量の貧困世帯や食糧難。経済状況の悪化などが例に挙げられます。』


 あれ?この子ほんとに子供?

 私より賢そうなんだが?

 てか何でそんな事知ってるんだ。


 『そして何より一番の問題は先程も言った経済状況の悪化です。現在この国は他の国の支援を受けてやっとのこと成立しているような状態です。』


 ……え……え?

 まじで?


 『そこで私が追い出されたというわけです。』


 は?

 一気に話飛躍し過ぎでは?


 「ちょっとまって、何で経済状況が悪かったら王女を追い出す必要あるの?意味がわからないんだけど。」

 『王族の人間一人育てるのにどれだけのお金かかるかわかります?』


 ……わからん。

 多分……普通の子供50人分くらい?


 『500人分以上―――』

 「ご、ごひゃく!」


 やっば王族ってすごい―――


 『が一年に使われます。』


 え?

 一年?


 ってことは、だいたい20歳くらいまでだとして……10000人分!

 たしかこの国の人口が30万人だから……はぁ。

 だから追い出したと。


 「それって……たしかに合理的だけど……王女様は大丈夫なの?」

 『何がです?』

 「何って……王女様は悲しくないの?」

 『大丈夫です。これも国のためなので。』

 「それって……全然良くな―――」

 『じゃあ、あなたは私一人の自由と国。どちらが大事だと思っているんですか?』


 ……それは……国だね。

 もちろん国。


 

 「そりゃ国だけど……まさかこんなに可愛い天使を追い出すなんて!」


 王女改め元王女様は目を見開いている。

 あ、この子表情筋あったんだ。

 ずっと無表情だったからこの子に表情なんて無いものだと……。


 『初めてそんな事言われました。』


 「初めて?」


 『はい。今まで私はどこかの国に嫁ぎに行くための教育をされて育ってきたので……。』


 へーそんな事小説以外で現実であったんだ。

 それくらい世間から隔離された空間だったのか。

 なんか少し可哀想に思えてきた。


 「ちなみに何でそこに嫁がせるんじゃなくて追い出されたの?」


 少女のペンが止まった。


 あれ?

 もしかしてそこ一切疑問なかったのか?


 『もしかして……私捨てられたのでしょうか……?一応父からはさっき説明したとおりに聞かされたのですが……。』


 ……その可能性が……高いね。

 ほんとにお金に困ってるんだったら嫁がせて貿易とかを有利に進めるはずだしね。


 あ、まじでこの子涙腺崩壊しそうになってる。

 ……あれ?

 どうすりゃいいんだ?


 「ま、まあ、他になにか理由あったんだって。じゃないとそんな無意味なことしないって。」

 『そうですかね……。』

 「そうだよ!絶対そうだって。」


 これでいいのかわからないけど……私にはこれが限界です。

 子守とかしたことないし……いや、明らかにこの子私より精神年齢上だし子守って感じしないけど。


 そして王女様は泣き始めた。

 声は出さない。

 でもひっそりと涙を流し始めた。


 不謹慎かもしれないがその表情は美しいという言葉が一番似合っていた。





 


 『それじゃ、ちょっとついてきてくれませんか?』


 王女様が泣き始めてしばらくしたときそう言われた。


 ていうかついていく?

 どこ行くんだろ……まあ、とりあえずもう日が暮れそうだし外に出るのは明日だね。


 「もう今日は遅いしそれは明日にしようか。」

 『いえ、今行かせてください。』


 え?今?

 なんで……まあいっか。


 「わかった。ちょっと準備するから待ってて。」


 そう言うと私は部屋から出て一旦心を落ち着けた。


 ちょーっと待て。

 展開が早すぎる。

 まだあの子とあって2時間とかだよ?

 それなのに何であんなに心開いてんだよあの子。


 まじで……はぁ。

 でもなんかあの子……一緒にいたくなるんだよね。

 あの子人たらしの才能あるのでは?


 はぁ、そろそろ行きますか。


 






 元王女様につれて歩いていくとそこにはどでかい城が……うん。

 何となくここに来るとは思ってた。


 「それで?ここで何するの?」

 「…………」


 あ、そうだった紙がないから会話(?)できないじゃん。

 んーまあいっかついていけば。


 「まあいっか。とりあえずついてくね。」


 少女は小さく首を縦にふった。


 すると、城の警備とか関係なしに城の中にダッシュで入っていった。


 いや、ついていくとは言ったけどさすがに城の中は……ていうか警備員さんまじでびっくりしてるよ?

 警備員さん……強く行きて!


 まあ、警備員さんあの子追いかけて今ほとんどいないし私も入りますか。

 ほんとにバレたら死にそうだけど……。








 音が大きい方へ近づいていくとあの子と王様が口論してた。

 ……って王様!

 初めて見たわ。


 こっそり覗くか。

 幸い警備員の人とかに見えない位置にいるし。


 「何で私を追い出したの!」


 うぉーい!

 この子身内にはすごい話せる感じか。

 初めて声聞いたわ。


 「だから何度も言っているだろう!経済状況の悪化で―――」

 「じゃあ、なんで他の国に嫁がせなかったの!」

 「それは…………、」


 うん。

 図星だね。

 やっぱり……


 「あぁそうだ。私はお前を捨てたよ!」


 おー言い切った!

 まじでこんなの現実世界で見れると思わなかったわ。


 「なん―――。」

 「それは……嫌いだったからだ。」


 うっわサイテー。


 「死んだアリメアの子供だからといって頑張って育てたさ!育てたけど……それで育ったのは何だ!俺の存在価値はお前を産ませたこととまで言われて……なぜそんな状況になって恨まない道理がいると思っているんだ!」


 いや、別にそれあの子悪くないでしょ。

 ちなみにアリメアっていうのは王様の第一夫人のことで、その方が産んだのがこの子だったっていう。

 しかもこの王様結構クズだって有名で、支持率が過去最低。

 存在価値がさっき王様が言ったとおりこの子を産んだことだって思われてる。


 やっぱ噂通りこの王様クズだったね。


 「それは……私は悪くないでしょ!勝手に産んだのはあなたじゃない!」

 「うるさい!黙っていろ!これで話は終わりか?終わりじゃないのであれば後は騎士団本部で聞こう。」 


 うっわ正論言ったら権力乱用しだしたぞこいつ。

 あの子めっちゃ悔しそうな顔してんじゃん。

 ていうか騎士団か―――それは困る。


 「ほらほら、早く帰れよ。さあ早く!」


 うぜぇー。

 よし!


 「あのーちょっといいですか?」

 「誰だ!」 


 うっわ一気に警備員の注意こっちに向いた。

 マジ怖いわー。


 「まあ、ちょっとした知人?ですかね。まぁ、そんなことはどうでもいいんですよ。」

 「連れて行け!」


 ……やるしか……ないか。

 相手は……10人。

 援軍は…………来る気配ない。

 うん、いける。


 まず一人目。

 槍兵か……いや姿勢はいいんだけど……パワーが弱いね。

 もっと腕力鍛えなきゃ。

 思いっきり後ろに放り投げて終了。

 多分死んでないはず。

 多分。


 次に二人目。

 これも槍兵。

 次はパワー強いだけか。

 じゃあ、テキトーに受け流して……

 はい。壁に向かって走り出して自爆。


 次は―――


 




  

 よし10人全員倒した。

 やっと王様と会話できる。


 「それで話なんですけど……」

 「ば、化け物!」


 まじで人の話聞けよ!


 「あーもううっさい!私からしてみたら王様のほうが化け物だよ!何自分のエゴで実の娘追い出してんのさ。自覚ないかもしれないけどお前普通じゃないんだよ!わかる?」 


 あーあ。

 王様怯えてるよ。


 「それで、話なんだけどなんでこの子を追い出したの?」


 そういや、あの子無事かな?


 えーっと……あ、いた。

 めっちゃ目をキラキラさせてること以外は何も変わってないね。

 てか、あなたそんな表情で来たんですね。

 そんなに実の父親が怯えてる姿見てて興奮するか……?

 関わらないほうが良さそうだね。


 「そ、それは……嫌いだったから……。」

 「え?なんて!聞こえなかったもう少し大きい声で言ってもらわないと。」

 「だから……あいつが嫌いだったからだよ!」


 おぉ、聞こえた聞こえた。


 「うん。やっぱ屑だね。でも、娘の前でも私の前でも言うことを変えなかったその意志の強さだけはほめてあげるよ。」


 「……ッ!」

 「あ?なんて?」

 「……なんでも……ないです。」


 「で、今から言うことを了承してくれないかな?」


 王様はめっちゃ首を縦に振っていた。

 まじでふざけてんじゃないかと思っちゃう。


 「まず、王様は王様を辞めること。次に、この国を他の国と合併させること。最後にこの事件については、一切不問にすること。OK?」

 「はい。はい。わかりました。」


 「うん。それならOK。じゃあねー。じゃあ、行こ?えーっと……」

 「サイラ。」

 「え?」

 「私の……名前。」


 しゃ、喋った!

 私に向かって。


 「じゃあ、帰ろうか。サイラ。」


 サイラは首を縦に振った。

 あれ?

 もう言ってくれないの?

 ……あれ?


 まぁいっか。


 






 それからは本当に急展開だった。 

 まず、急な王位返還と同時に隣国との合併の決定。

 国民の不満爆発でその矛先が全部元王様に向いた。


 もう、王様は表舞台には出られないだろうね。

 ざまぁー!


 それで……何故かサイラが私の家に住むことになった。

 お金もないし父親がアレじゃね。

 いや、別に顔がいいしどこにでも住める場所はあるんだろうけど……なんかここに住んでる。


 いても悪い気はしないしいいんだけどさ?

 むしろ目の保養になるし。


 まあ、男性諸君。

 百合展開にはならないから安心してくれたまえ。


 まぁ……ちょっとやりすぎたかな?

 最初にあったときに国と私どっちが大事なの!って言われて国って言ったのに、この子のために国滅ぼしちゃったんだしさ。


 あれ?私結構やばいことしてる?

 うん。気にしないでおこう。


 

 チョンチョンッ


 

 ん?

 あぁ、サイラか。

 どした?


 『あの、警備員を倒してたのって……何かやっていらっしゃったんですか?』


 あぁ、そのことか。

 えーっとね……


 「実は私……元騎士団員だったんだよね。」


 サイラさん……めっちゃ驚いてること悪いんですけど元なんです。

 すいません。


 ちなみに騎士団っていうのは、犯罪者の取締などをやる国家直属の軍のこと。

 入る倍率は4倍くらい。

 まあ、楽勝っすよ。

 うん。

 すいません。

 ホントはめっちゃ、頑張って入ったのにしばらくして戦力外通告食らいました。 


 うん。これは言わないでおこう。


 せめてサイラの前くらいかっこよく見せたいしね。


 「だから結構対人戦には経験あったんだよね。」


 うっわ。

 めっちゃ、目を輝かせてる。

 あはは……ちょっと罪悪感。


 まぁ、もう時間だし働きに行きますか。


 「じゃあ、いってきます。」

 「いって……らっしゃい。」


 あれ?

 なんか聞こえたような?

 まあ、いっか。


 こうして、私は一人の少女のために一つの国を滅ぼしたのだった。

 この話は、後世に語り継がれたり、継がれなかったり。

 

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追い出されてしまった王女を拾った私は国を崩壊させました。 ゆめうめいろ @yumeumeiro

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