第53話
話し合いの結果、テオドールたちもリリアたちに協力することになった旨を伝えた。
「すぐに信用しろと言われてもね」
リリアは焚き木の灰で鍋を洗いながら言う。
「ああ、言葉でどうこう言うつもりはないよ。行動で示す」
これも全ては親友であるアシュレイのためである。リリアは鍋から灰を落とし、
「私たちの目的は森の中にある
リリアの発言にリーズレットが小首を傾げる。
「もう見つかった後なら、同じ場所にあるとは限らないんじゃないの?」
その発言にリリアは呆れたように口元だけで笑った。リーズレットがムッと口を結んだところで、テオドールが代わりに口を開いた。
「ダンジョンの中では魔物もアーティファクトも自然発生するんだ。特に
テオドールの説明にリリアは「そういうこと」とだけ付け加えた。シローがからかうように笑いながら「お嬢ちゃん、
「知ってるわよ。見たことあるし。強力なアーティファクトのことでしょ?」
「見たことあるってどこで?」
「グスタフ侯爵様がお持ちなのよ。たしか、ブリューナクって名前だっけ?」
「グスタフって魔王指定されてる堕ちた勇者のことか?」
「そうよ。魔王って言うけど、優しい方よ。私もいろいろお世話になったことあるし」
優しいという表現が引っかかったが、あえて口出しはしなかった。
グスタフが持っていた
グスタフの意識が及ぶ範囲内で動かすことができ、慣性の法則など度外視した軌道も可能だ。対人、対軍、対城塞、あらゆる状況下で圧倒的な破壊力と汎用性を持つ武器である。
テオドールの魔槍技
年齢なども踏まえて、単純な身体スペックでグスタフに負けるとは思わないが、
「あんたも見たことあるんじゃないのかい?」
とリリアに話を振られたので「ありますよ」と肩をすくめた。
「まあ、グスタフ様の
「じゃあ、
リーズレットの問いかけにテオドールは苦笑で応える。
「
リリアは革袋の中の水を飲み干す。
「しばらく休んだら出発するよ。リーズとアシュレイ、アンタらはお荷物だってことを理解しな」
リリアの言葉に二人は悄然とうなずいた。
「テオドール、あんたはなにが得意だい?」
「魔術と槍。剣や素手も少し使える。
「さすがに斥候はまだ任せられないね。後衛につきながら、私の指示どおりに動いてもらう。ついでに、嬢ちゃんたちもあんたが守りな」
「ああ、わかった。リリアたちは、どういう配置になる?」
「斥候はシャンカラ、前衛は私とシローだね。後ろから撃つんじゃないよ」
「そんな得にもならないことはしないよ」
「
「ああ。約束は守るさ」
「その言葉、忘れんじゃないよ」
そう言ってリリアはニヤリと笑った。
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