第15話 17歳と19歳②

それから私の長期休暇が訪れる度に私はタウンハウスに泊まり込んだり一緒に旅行に出かける。

何処へ行ってもレイモンドと一緒なら楽しかった。

しかしある休暇の旅先でレイモンドはかつての兄達と再会した。


食事処に寄った時


「あれ?もしかして…お前…レイモンドか?」


「本当だ!」


「!…ジャック義兄様…!オリバー義兄様!」

レイモンドは真っ青になり震え出した。


「どうしたんだ?そんなに青ざめて?ふぅん?綺麗な服を着て…綺麗な子と旅行か?」


「俺たちは庶民に落とされてやっと生活してるって言うのにさ…。お前は侯爵家に引き取られたんだっけ?」

と料理を掴みレイモンドの頭にかけた。


「ちょっと!!何をするの!!」

と私が怒ると手首をジャックと言うのに掴まれ迫られる。


「綺麗な顔のお嬢様だな?お前の義妹か?くく…俺たちと遊ばないか?」

と言い笑う。レイモンドが思い切りジャックを突き飛ばし私を連れ逃げた。

後ろからジャックとオリバーが追いかけてきた!


しかしそこへ旅行に同行していた護衛達が飛び出して二人を取り押さえた。



レイモンドは逃げ続けようやく物陰に隠れてガタガタ震えている。


「やだ…怖い…ううう…はぁ!はぁ!…くっ!」

私は発作に背中をさすりながら


「大丈夫よ。レイモンド様大丈夫。あの二人は捕まったわ」


「うう!アリス!!」

とレイモンドは私を抱きしめた。胸に顔を埋め


「怖いよ…あいつらがいた!うう!!痛い!」

と言う。


「何処が痛いの?」


「全身の傷が痛み出したんだ。思い出したみたいに…。痛いよ痛い…」

私は背中をさする。


「大丈夫よ。私が付いてるわ」

落ち着くまで私はレイモンドを優しくさするとようやくレイモンドは呼吸を繰り返すと片目から涙を流し


「アリス…ありがとう…もう平気だよ…」

と言い頰にキスする。


「…今日は早めに宿へ戻って休んだ方がいいわ。顔色が悪いもの」

と言うとレイモンドは


「そうしよう、心配かけてごめんね…」

と言い立ち上がり大通りに出ると護衛達が戻ってきた。


「…アリス様…レイモンド様は…」


「大丈夫です。あの人達は?」


「店の主人が協力してくれて客に暴行を働いたと証言してくれました。見ていた客も多かったので不利になり彼らは今、街の治安部隊に連れて行かれたようです」

と言い


「わかったわ。ありがとう。これから宿に戻り休みます。明日この街を出るわ。貴方も休んでね」


「はい、アリス様」

と宿に着くと例をして護衛の人は自分の部屋に戻る。


「大丈夫?レイモンド様」

食事を運んでもらい一緒に食べるが食欲はあまりないらしい。嫌な記憶が蘇ったのだから当然だ。


「…アリス…今日は一緒に寝てくれない?」

と言うからギョッとする!ええ?婚約者だから別にいいけどま、まだ心の準備が!

と思っていると


「大丈夫何もしないよ…。僕手首を縛って横になるからさ」

そこまでしなくともと思うけど了承した。

私は着替えるとレイモンドとベッドに入る。私の蒼いリボンで手首を結んであげる。


「…ごめん。怖い夢を見そうだなんて子供みたいだよね」

と暗い顔をするレイモンドに私は額にキスをして落ち着かせた。


「大丈夫よ。レイモンド様。眠るまで歌を歌ってあげるわ…」

と言うと片目がキラキラした。レイモンドは片目の義眼を外して今は眼帯を付けていた。

眼帯の上からもキスを落としゆっくり横たわり私はレイモンドの結んだ手の隙間にズボっと全身を入れ抱きしめるとレイモンドは赤くなり


「え?…アリスこんなくっ付かなくていいんだよ?苦しくない?」

と慌てる。


「大丈夫よ。ふふ」

と笑うと子供の頃病気で亡くなったお母様の子守唄を歌ってみた。


歌い終わると何故か涙を流していた。


「綺麗な歌だ…ありがとうアリス…落ち着いたよ。よく眠れそうだ…」

と額をくっ付ける。


「良かったレイモンド様…」

レイモンドは目を閉じてジッとしている。

寝たのかしら。私も眠気が来てそのままレイモンドの腕の中で眠りに落ちる。


そのうちチチチと小鳥の鳴く声で目が覚める。

レイモンドは私を抱きしめたまま眠っていた。

ソッと頰にキスを落としモゾリと抜け出そうとしたら目を覚ましたレイモンドが


「う…何処へ行くの?」


「あ…おはようレイモンド様…」

と言うと寝ぼけたレイモンドは


「…アリス…アリス…僕の可愛いお人形さん…」


「はい…ご主人様朝ですよ」

と言ってあげると顔がにっこりとした。

しかしだんだんと覚醒してくるに連れ真っ赤になって状況に気付いたレイモンドは腕を上にやり私を解放した。


「ごめん苦しかった?」


「いいえ。大丈夫。悪い夢は見た?」


「ううん、悪夢は見ない…でも良い夢は見た…アリスのおかげだよ」

と言うとおはようのキスを頰に落とすと起き上がり身支度の為に洗面所へ行く。私もその間に着替えておく。

何もなかったけどなんだか恥ずかしい。

昨日の様な事が起こらない様朝食を取ると直ぐに街を出ることにした。


「ごめんね、折角の旅行が台無しになって」


「いいえ、嫌な気持ちになったのはレイモンドだもの。辛かったでしょう?」

と言うとレイモンドは


「アリスがいるから平気…。義兄達と会ったのは災難だったけどもう忘れるよ。いつまでも気にしちゃダメだよね…」


「そうね。思い出しそうになったらまた歌を歌うわ」

と言うと顔を赤らめ


「うん…とても綺麗な歌だった。また僕の前で歌ってね」

と言い手を繋ぎ約束する。


「うふふ…もちろん…」

と言い二人でハウスに戻る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る