第8話 10歳と12歳(レイモンド)
僕はレイモンド・オルガ・ゼルランドール伯爵家の三男坊としてこの世に産まれた…。正確に言えば…僕は本当は父が他所の女の人との間に作った子で仕方なく引き取り育てられた。父は僕を愛して無かった。冷たい視線で僕を見ている。継母は父との間に兄を2人育てていたから僕は兄達と血が繋がっていない。
本当の母親の事を聞いて見たら別の男の人と逃げてしまったって。僕を孤児院に入れない事をありがたく思えって言われた。
兄達や継母から虐められ嫌われる日々でそれが当たり前だった。僕は皆のストレスなどの吐口に過ぎなかった。
使用人達も僕を疎んでいた。口を聞く者はいない。
ご飯は皆の後の残り物で屋根裏部屋でボソボソ食べた。服もお下がりのボロボロとほつれたものだだた。
暗くて埃ぽくて寒いそこが僕の場所だった。
身体も傷が痛く眠れずにいた。
屋根裏部屋でしくしく泣いた。
そんなある日に親が捕まった…。とても悪い事をしたらしい。領民の収めた税金を勝手に使っていたらしい。伯爵位を奪われゼルランドール家は取り潰しになるらしく僕の屋根裏部屋に居られない。兄達とこれから暮らすのか?成人手前の兄達は僕を面倒見る気は無いと思う。
そうしたらある日…ハリスさんと言うおじさんが僕を訪ねてきた。
僕は路地裏で蹲って物乞いをしていたんだ。
「やぁ、うちの子にならないか?レイモンドくん。色々調べさせてもらったよ。酷い扱いを受けてきたんだね」
とふわりと抱きしめられた。瞬間…この生活に終わりが来るんだと思ったら勝手に目から熱い水が次から次へと出てきた。嗚咽を上げ泣きじゃくりみっともない姿だかハリスおじさんは頭を撫でてくれた。
気付いたら馬車の中だった。眠っていたらしい。
「どこへ行くの?」
僕は一瞬どこかへ売られるのかと思った。
「さっきも行ったろ?うちはね?長男がいないんだ。だから君はうちの子になり私の後を継いでもらいたい。私はハリス・ド・カークフィールド侯爵だ」
と言うのでビクリとした。侯爵様だったなんて!
僕!大変な失礼を!?
と思っていたけど
「怖がらないでいいよ、レイモンド…。うちの子になってくれるかな?そうしたら妹ができるよ」
「いもうと…」
僕は義妹ができる…。そしてまたそこで虐められて屋根裏部屋に押し込まれ食事も粗末な残り物でボロボロな服で皆から嫌われて鞭で打たれて…
そんな日々がまた来るのだろう…。
僕は怖かった。ただ怖い。
そして馬車に揺られ眠りに落ちた。
*
気付いたら僕は綺麗な部屋のベッドに寝ていた。服も清潔で綺麗なもので身体もいつの間に拭かれたのか綺麗になっていた。魔法か何かと思ったけどこんな綺麗なベッドにいたら怒られると急いで降りて床に座った。
そうしたら使用人が来て
「まぁ!何をしているのですか?そんな床に…」
「ひっ!ごめんなさい!!床に座ってすみません!」
と謝ったら
「ええ?」
とキョトンとされた。
どうしよう打たれるのかな?
「どうしたんだアメリ。おや?目が覚めたかいレイモンド…。なら丁度いい、君の妹になる子を紹介しようと思う…おいで」
と手を出してきた。掴んでいいかわからない。
だから服の端を持った。
廊下も広く調度品はたくさんある。
ある部屋の前で止まり
「ここだよ。大丈夫だからね」
と優しく言われた。
そして僕は部屋の中にいたとても綺麗なお人形のような女の子に目を奪われた。
僕と同じような黒髪に蒼の瞳だけど所作が綺麗で綺麗な声にただ驚いた。
可愛い…。
こんな綺麗な子が僕の妹になるの?
どうしよう、胸が熱い。震える。僕はお人形に心を奪われた。妹に対する気持ちなど持てなかった。
だって僕は初めてこの子に嫌われたく無いと思ったんだもの。嫌われるのは当たり前だと言うのに。
ハリスおじさんは
「レイモンド…怖がらなくていいよ?ここには君を虐めるものはもう何もないのだからね?」
と言ってくれた。アリスと言う女の子も優しい目つきをしていた。
夕食の席ではとても美味しそうな大きなお肉がお皿に用意された。え、これ…僕のぶん?
僕が一人で食べていいの?思わず喉がゴクリとした。
そして
「さぁ、食べていいんだよ?」
と言われたが僕は主人より先に食べたらいけないものだと思っていた。するとアリスが
「…いただきますわ」
と食べ始めた。僕はそれを見た後で恐る恐る震える手でカタカタフォークを使い口に運んだ。とても美味しい味がした。今まで食べてた残り物と全然違う…。
一口食べて二人が食べるのを待っていると
「レイモンド…自由に好きな時に食べていいんだよ?私達を待たなくても…」
と言われた。僕はとんでもないと首を振った。
しかし…アリスは
「レイモンドお義兄さま…。明日一緒に遊びましょう!?この家に来たばかりだからいろいろ侯爵家を案内してあげるますわ!」
と言うので僕は信じられないと思い頭を下げた。
ハリスおじさんは苦い顔をして笑っていた。
僕はこの家の子になったのか?
綺麗な部屋で考えた。美味しい料理、とても綺麗なお人形みたいな女の子…優しいお義父様…。
嘘だ、僕は今夢を見ているの?
すると使用人がノックしてから
「坊っちゃま…お風呂が用意できましたよ?綺麗に洗って着替えましょう」
と言ってきたので青ざめた。
身体中の痣や傷跡を見られる!!?
無理だと泣き逃げ出そうとした。
「やだ!やだぁ!来ないで!来ないで!一人でやります!一人でやりますから!!お願いやだぁ!」
と喚いているといつのまにかそこにアリスがいた。
僕はアリスにお風呂に入るよう言われ一人で出来るからと身体の痣を隠すようにお風呂場へ続く脱衣所に逃げた。
バスタブにはお湯が張っていたけど入らなかった。汚したら怒られる!ささっとお湯を身体にかけて直ぐに着替えて戻るとアリスに早過ぎると驚かれた。
ベッドで寝ていいと言われたけどあんな豪華なベッドに寝ていいのかな?と惑い断るとアリスは持っていたクマのぬいぐるみを僕になんとプレゼントしてくれたのだ。
信じられない!僕がプレゼントを貰うなんて!!初めてだ…。
そしてアリスは僕の頰にお休みのキスをくれた。僕は驚いてビクッとした。顔が熱い。
胸もドキドキしてしまう。
僕はアリスが行って一人になると身悶えた。
初めてキスをされた。頰に。
クマのぬいぐるみからアリスの匂いがした。
「アリス……」
僕はこの感情をまだ知らなかった。
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