第3話 13歳と15歳
それから3年経った。
お義兄様はだいぶ勉強やらマナーを頑張っていた。大人にも慣れてきたみたい。
でも私にはべったりだ。私のあげたクマは初めて貰ったプレゼントとして綺麗に飾られているし!
私の事をとても気に入ってくれたのか膝に乗せ可愛がられた。心なしか抱きしめる力が強くない?
レイモンドお義兄様は次の年に都市部の学園に3年間入寮する事になっている。
今日も温室で私はお義兄様とお茶をしているが膝に乗せられ後ろから抱きしめられているのだ。
何故かうっとりした顔のお義兄様。
「お義兄様?もう15ですわよ?成人も近いのに妹離れしないといけませんわ」
と言うとお義兄様は
「妹?………ああそうだね。僕の可愛いお人形さん…」
と言うので
「私はお人形ではありませんのよ?」
と言うと虚な目になり
「…お人形さんも僕のこと捨てるの?僕のこと嫌いなの?」
と言うから私は慌てる。ダメだ。お義兄様の心の傷が開いちゃう!
仕方ないので私は
「うう、そ、そんなことはありませんわ!私お義兄様を捨てたり嫌ったりしませんわよ?」
と言うとお義兄様は長い前髪の下の口元を緩め
「ふふふ…ありがとうアリス…。僕の可愛いお人形さん。大好き。大好きだよ!一生離れないでね!」
なんて言われ頰にキスをされるのだ。
少々やり過ぎだわと思いつつも心に傷を負ったり身体にも傷が残っているお義兄様をこれ以上傷付けたくなく私は大人しくお人形さんになった。
まぁ、来年学園に行けばお義兄様にもきっと良い人が見つかるかもしれないわ。
お義兄様は最近お父様が持ってきた婚約者候補の姿絵をいくつか渡されていた。私への溺愛を少し心配しているのだろう。
しかしお義兄様は頑なに断っていた。
「嫌だ…僕は一人でいい…!!」
「そうは言ってももう15歳で成人も手前だろう?婚約相手は見つけなきゃダメだよ?レイモンドはうちの跡取りだろう?」
と言うとお義兄様は
「お義父様には感謝しております…。でも婚約者は僕が心に決めた人がいいのです!」
と言うのでお父様は
「誰かそんな人がいるのかい?パーティーで知り合った?」
と聞くと首を振り照れながら
「……僕のお人形さんです!!アリスです!」
と言うのでお父様は頭を抱えて
「レイモンド…ダメだよ…。アリスはお前の妹なんだ…アリスにも別の婚約者を…」
と言うとお義兄様は睨んだ。
「……やだ…僕からまた取り上げるの!!?僕には何も無いのに!!また!!何もかも取り上げて…鞭で打つんだ!!腫れて血が出て虫が来て!!笑われる!!怖い!!暗い!!やめてーーー!!!」
やばい!お義兄様のいつもの発作だ!!
こうなるとお父様も
「レイモンド…しっかりなさい!!レイモンド!!大丈夫かい!?安心しなさい!お前を苦しめるものなんかない!!」
「はあっ!!はあっっ!ううう…げえ…!…はぁはぁ!!ふううあう!!」
とお義兄様は息を整え始めた。身体からは滝みたいに汗が出ている。お義兄様に呪いのように染み付いた過去は消えてなかった。
お義兄様は毎週カウンセリングのようなものを受けているけどそれでも私が離れたりすると不安になるようになってしまったのだ。
「こんなので入寮できるのかしら?」
と不安だ。
私はいつまでお人形さんで居ればいいのかしら?
それでもお義兄様は勉強中は物凄い集中を見せた。
終わったら私と遊べると言うのも有るけど、お義兄様は侯爵家に来た頃は最低限の教養しかなく、伯爵家では本さえ自由に読ませて貰えなかったらしい。侯爵家に来てからは綺麗な表紙の本を片っ端から読んでいる事が多いし近頃はちゃんと跡取りの勉強もしているみたい。
家庭教師にもちゃんとマナーも教わった。吸収が良くお義兄様は直ぐに覚えた。
終わると私の所へきてまたべったりだ。
私は婚約の話が出るとお義兄様が泣くので断り続けたり夜会などでもお義兄様は常に隣にいてダンスを申し込まれても人が変わったみたいに
「妹は気分が悪いので」
と平気で嘘をつき肩を痛いくらいに掴まれ周りを牽制するのだ。ドレスもお義兄様が必ず蒼いドレスを贈った。
お父様が注意すると発作でおかしくなるしどうにもならなかった。
お父様は
「まぁ、レイモンドか入寮したらその間にアリスの婚約者を決めてしまえばいいか。アリス済まないね。もう暫く辛抱しておくれ」
とお父様は笑ったが…お義兄様が16歳になり入寮手前で食卓の席で血を吐いて倒れてしまった。
婚約者探しどころでは無くなりお父様は病棟へ移り治療することになった。かなり致死性の高い毒が盛られており犯人はわからない。
お父様は身体に麻痺が残り自由に喋れなくなり動けなくなっているが、ある日私がお見舞いに行くと紙になんとか書いたヨレヨレの文字で
(アリス…レイモンド…に…気を付けなさい…あの子が…毒…)
そう書かれていた。
そしてお父様はそれから暫くして息を引き取ってしまった。
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